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リーダーの本質 ~ブライアン・マーティン 林 衛 コラボレーション・コラム~ 第9回「成功に欠かせない4つのE(前編)」

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ブライアン・マーティン

ブライアン・マーティン


ブライアン・マーティン
IAS 会長 兼 最高経営責任者

米国の多国籍企業リーバイ・ストラウス社の日本支社長を経て、アジア地域総責任者に。その後ドイツの多国籍企業、トリンプ・インターナショナルの日本支社長。ニュージーランド経営協会会員。
1998年、インターナショナルWho’s Whoのプロフェッショナル部門の名誉メンバーに選出。2001年、21世紀アチーブメント賞受賞。 ニュージーランド・オークランドのマッセイ大学で経営とリーダーシップについての講座も持つ。


ブライアンより一言

進行中のプロジェクトを成功させるには、4つのEが必要です。この4つのEを手にしていれば成功のチャンスは保証されたようなものです。
あなたの組織には4つのEがありますか?
そして現在あなたが携わっているプロジェクトにも4つのEがあるでしょうか?

4つのEとは次のようなものです

1) Energised(活性化されていますか)?:
リーダー、マネジャ、メンバーは常に刺激を受け活性化される必要があります。

2) Energing others(周囲の人たちを刺激し生き生きとさせていますか)?:
メンバーを、顧客を、サプライヤーを励まし刺激することができていますか?

3) Edge(崖っぷちに立っていますか)?:
イエスまたはノーで意思決定をすることができますか?
ご存知の通り日本では「決断ができず先延ばしにした」ことで何兆円もが失われました。あなたの組織やプロジェクトチームでも同じことが起きていませんか? 決断しないよりは間違った決断のほうがまだましです。間違いを決断した個人のせいにせず、気がついたらすぐに間違いを訂正すれば、ですけれどね。

4) Exectue(実行していますか)?:
予定通りに成果を生み出し、計画の先回りをしましょう。

今回の一言は「成功は自然発火の結果ではない。あなたが自分に火をつけなければならない」です。

林衛よりコメント

今回のブライアンの一言については、2回に分けてコメントします。欧米文化圏で育ち仕事をしてきた彼のコメントに私の考えを付け加えて、日本で生まれ育ち、多くの時間を日本で過ごしているわれわれにフィットさせる必要があると思うからです。日本でプロジェクトを成功させるには、われわれの行動に無意識に影響を与えている日本的文化を無視できません。文化的バックグラウンドに意識的であることが、成功に至るひとつのポイントです。

まず、ブライアンの言う4つのEと、その必要性について説明しましょう。
時代は絶えず動いています。しかし、自分の周辺だけにしか目が行かず守りに入ってしまうと、気がつかないうちにそのずれは非常に大きなものになります。高い視野から大きな変化の流れを見ることができず、ずっと同じふるまいを続けていると、知らないうちにそのずれは大きくなり、気がついたときには時代の変化に合わせて自分を、あるいは自分たちの組織を変える勇気が奮えなくなるくらいの大きな断層ができてしまいます。そこで変化を認め、現状を打破することを厭わず、次のステップに行ける人や組織のみが生き残ることができるのです。そのためには、ブライアンの言う4つのEが必要です。

最初のEは、あなた自身がエネルギッシュであるかどうかです。エネルギーがある状態は単に物理的に力が強いとか方向性があるということだけではなく、感情を伝えることが必要です。私は最近、五木寛之氏の「情の力」を読んでいます。最近彼はわれわれ日本人のもつ宗教性や人間性をテーマとした著作を続けていますが、この本の冒頭には「愛より愛情、熱より熱情」という一文があります。彼は世の中がどんどん乾いてきていると言います。人とコミュニケーションをする手段がメールになって、確かに友達の数は増えました。しかし心底喜びや悲しみを分かち合えているのだろうか、むしろ個人と個人が重なり合う「接点」の部分が狭くなり、その中身も薄れていると指摘しています。人間は感情の動物ですから、五木氏のいう「情の力」なくしてエネルギーにあふれる状態は存在しません。

また「情報」という言葉には「情」という文字が入っています。つまり、一緒にプロジェクトに携わる人たちには、単なるデータだけ伝えるのではなく、感情も同時に伝える必要があるのです。単なる知識だけでは人は動きません。それが二番目のE、周囲の人にエネルギーを与えることにつながります。これは情の力による「巻き込み」とも言えます。

もし、この2つのEができていないとしたら、「自分のおかれている状況が理解できていない」「どんどんうまく行かないほうへ向かっている気がする」などという、何らかの不安があるからだと考えられます。そんな不安への対処方法は、感情を込めてやりたいことをやってみることです。実際に動いてみると「ああ、そうだったのか」と気づくことが多々あり、不安は解消されるでしょう。これは四番目のEの「実行する」ことにつながります。

三番目のE、Edgeは「崖っぷちの心境」です。ブライアンのプログラムには「リーダーズ・エッジ」というのがありますが、それは崖っぷちに追い詰められた状態での決断であり、究極の変身です。欧米流に言うと「トップは常に崖っぷち(エッジ)で決断している」のです。しかしこれは農耕民族として長くやってきた日本人の心性にそぐいません。協調を重んじ、変に目立つと潰される、といった農耕民族・日本人の文化的DNAの中でエッジをどう考えるかが重要でしょう。たとえば日本人の場合、二番目のE「巻き込み」はうまくできていることが多いのですが、エッジがほとんどありません。とはいえ日本人には、地味でもいざというときに岩や山のごとく支えてくれるタイプの意思決定者がいます。欧米的に目立つのだけがよいというわけではないのです。

四番目のE、「実際にやってみる」ためには勇気が必要です。日本人は「確信が持てるまでは、やらない」人が多い。そして確信を持てるようになるまでに時間がかかるのが特徴です。「わからないから、やらない」という人が非常に多く、大企業ほどその傾向があります。しかし、正しくは「やらないからわからない」のです。いつも言っていることの繰り返しになりますが、まったく先が見えないのならともかく、6,7割見えた時点でやってみることが大事なのです。あらゆる知識は実行するための準備物です。何かを実行するとき、知識は2割を越えることはありません。あとの8割は応用動作です。応用動作は経験的なもので、意識的に経験することで獲得できます。これは実行しないと身につかないものです。確かに、6,7割がた見えた段階で実行する場合、必ず成功するとは限りません。しかし成功を保証されたものをやり遂げても、達成感も成長度もたかが知れているではありませんか。

日本でも徐々に、エネルギーにあふれ、エッジで決断し、人を巻き込み、果敢に実行する人が増えているように思います。目立たないし、欧米的感覚からはわかりにくいかもしれないけれども、確実によい仕事をし、そして周囲にも大きな影響力を与えている日本のキーパーソンを見ると、この4つのEをすべて欠けることなく持っています。ただし、それが欧米のセンスとは少し違うパターンで現われていることは往々にしてあります。この続きは次回に。

第10回につづく

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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