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スモールワールドネットワーク(small world network)

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人と人の繋がりや、電力会社の送電線網などは、総称してネットワークと呼ばれる。これらのネットワークのうち自然に出来上がった多くのネットワークに共通する性質として、ネットワークがどんなに巨大でも、情報などの伝達や共有が驚くほど迅速に行われていることが知られている。(例;生物の神経ネットワーク等)この点に関して最近の数学的解釈の成果として明らかにされつつある理論がスモールワールドネットワークの考え方である。

スモールワールドの考えは、1967年に社会学者のスタンリー・ミルグラムが発表した「スモールワールド問題」という論文で、まったく無作為に選んだ300人の人間に手紙を出して、面識の無いある特定の人間に対して、詳しい住所(街の名前は知らせる)を知らせず親しい人間を介して手紙を伝達して欲しいという社会実験をしたところ、平均5.5人を経てそれらの手紙が確実に相手に届いたという結果から注目を集めることになった。またこれは一般には人は世界の誰とでも5人を介して繋がっているという「6次の隔たり」というミステリアスなテーマの戯曲などで話題になったりもしている。(世界で最初のSNSの名称はこれに由来しているとも言われている)その後1998年にダンカン・ワッツとスティーブン・ストロガッツが、交尾期のコオロギの鳴き声の連鎖的同調現象が、送電線網や単純生物の神経網、映画俳優の共演者ネットワークと数学的に同じ特徴を持つことを発表して一気に注目されることになった。

典型的なスモールワールドネットワークには、隣り合ったノード(接合点;社会では一人ひとりの人間)と規則的にリンクしているネットワーク中で、遠く隔てたノードとランダムにショートカットしてリンクしているネットワークのケースや、特定のノードが極端に多くのリンクを持っているケース(インターネットのポータルサイトなど)などが知られている。

前者のショートカットリンクは1973年に社会学者マーク・グラノヴェターが提起した「弱い絆の強さ」問題と関連される。これは最近では、地域コミュニティや企業のある部門などで、絆が強い内部関係だけで閉じた組織より、他の地域コミュニティや他の職場と常に連携している開いたネットワークを併せ持つ組織の方が、課題解決や組織の発展性・持続性において優れているという考え方を予見させるものとなっている。

スモールワールドネットワークの考え方は、多くのネットワークを伴う社会関係の解明(政治や経済)や病気の伝染などにも適用されつつあり、またIT分野でもインターネットそのものの研究や先のSNSのようなサービス、さらにナレッジマネジメント分野でも注目を集めるところとなってきている。

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