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私の異文化体験(その5) 英国音楽編

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ロンドンのジャズは、アメリカのジャズとは違って、また別の深みがある。
ジャズは、アメリカが発祥の地でありアメリカの歴史でありアメリカの魂の叫びである。アメリカが生んだ最高の芸術だと私は考えている。あえて芸術と言う訳は、音楽だけではなく、場も人種も歴史もすべてを含んでジャズだと考えているからだ。ジャズは、世界に輸出され多くの国の文化と融合し深みを増してゆく。まさにソフトウェアではないか。
そのジャズは、大西洋を越えてロンドンへジャズが渡ると伝統やカルチャの影響を受けて変化する。ロンドンの人々は、その土地の人としてジャズを解釈し演奏を始め、そして根づく。演奏するときにカルチャが織り込まれ独特の重み・臭さ・味になる。ジャズだけではなく音楽というソフトウェアコンテンツは、使われる場所でカルチャの風味が付くことになる。
私は、本場のジャズを、かなり聴きこんだのでこんな風に音楽を楽しんでいる。アメリカのジャズ、イギリスのジャズ、フランスのジャズ、上海のジャズ、インドのジャズ、サイパンのジャズ、東京・横浜・神戸のジャズ、そして名古屋のジャズそれぞれに意味があり、深みがある。
異国の町で独りで時間を過ごすには、音楽をやっている場所を訪ねると良い。
ロンドンでの生活は、週に2、3日の割合で、夜は独りになっていたので、かなりの回数、時間があればジャズをやっている場所を訪ねた。

私の音楽とのかかわりは、中学生の時代にギターとドラムスに興味を持ち、フォークソング、ビートルズ、グループサウンズ、ロックの影響を強く受けた。高校になって流行の音(とくにロック)に多くの友人がのめり込んでいくことに疑問を持った。軽いのりで簡単に影響をされてしまうように思えた。こだわりが多少あったと思う。俗っぽく流行りに乗ることが嫌だった。自分の感覚では、もっときれいで純粋な何か(化粧をしていない音)を求めていた。
高校、大学時代には、友人とバンドを結成して、ロック、フォークを中心に活動をしていたが、こだわりを求めてロックからラテン、リズムアンドブルース、ソウル、ジャズの世界へ入っていった。ロックと純粋なジャズの橋渡しをしてくれたのは、ラテンとジャズロックである。
ジャズロックといえば、有名どころは、アメリカで70年代に全盛だったシカゴ、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ、チェイスあたりだろう。これらの音には、すぐ飽きてしまった。わかりやすくて良いのだが、続けて何回も聞く気になれない。底が浅いのだ。
その時代にイフ (IF)というイギリスのジャズロックバンドがあった。アメリカのポピュラーなジャズロックとは違い、地味ながら実力のあるサウンドを出していた。泥臭さと美しさの両面を感じた。イフの音は、聴けば聞くほど新しい発見があり聴こえるものが変わってくる。
このイフの元メンバーが出演しているジャズクラブがロンドンにあったのだ。イフの全アルバムを私は持っていて、少なくとも各アルバムを50回ずつは、聞いたであろうか。そのメンバーの一人であるディックモリシーが、たまたま入った「ピザエクスプレス」(ピザもうまいがジャズも旨い変わった名前の店)と言うジャズクラブのライブで出演しているではないか。目を凝らしてもう一度見るとやはりディックだ。イフのアルバムを一生懸命聴いている時代の私の中のイギリスは、霧と山高帽とビートルズと女王の居る伝統的な国という認識しかなかったが、アメリカとイギリスの違いをなんとなくイフを通して感じていた。高校時代といま正に入ろうとしているジャズクラブが、ロンドンに在り、何かと何かが時空を超えて突然繋がってしまったのだ。不思議なショックを受けている状態になった。しかし現実である。予期せぬことが突然起こるように計画されていたのではないかと感じる。その日は、何かプレゼントをもらった幸せな気分でジャズを楽しんだ。ディックに挨拶したわけではないが、そのジャズクラブに来ている誰よりも自分だけの繋がりを持って一時間半ほどを過ごすことができた。
ディックモリシーは、日本ではほぼ無名であるが、私の中では有名人だ。70年代にもともと純粋なジャズをやっていたと思うのだが、ジャズロックがその時期、当たっていたのでジャズ界の人がロックに参入し始めたのではないかと考えている。ジャズロックはフュージョンとは違うが、ジャズをわかりやすくし、多くの人に広めようというものだ。ジャズ自身が、このようにいろいろなものを吸収し変化する力を持っている。
その店でのディックは、元のジャズミージシャンにもどっていた。私は、高校時代、ジャズロックへの出会いをきっかけとして本格的に純粋なジャズの世界に入っていった。クリフォードブラウン、マッコイタイナー、マイルスデイビス、ジョンコルトレーン、ソニーロリンズなどモダンジャズを中心に相当な時間をかけてジャズを聴いた。私のジャズの聴き方は、単純だ。同じ曲を繰り返し聴くのだ。聴くたびに新たな発見があり、だんだん分かってくるのがジャズだ。20回同じ曲を聴いて楽しくならなかったらジャズは、止めたほうが良い。ジャズには、歴史と魂がある本物だから何度聴いても飽きない。ニューヨーク、ワシントン、サンフランシスコ、シカゴなどのアメリカの都市のみならず世界に都市に出張することがあると必ず音楽をやっている場所を訪ねることにしている。

ロンドンのジャズクラブ、ロックを聴けるところは、レスタースクウェアやトットナムコートロード付近に多く存在するし、20年後に行ってもきっと営業しているという安心感がある。ロンドンは東京のような変化が無い。ロニースコット、ピザエクスプレス、5ハンドレッドクラブ・・・などが、行きつけの店になった。また、コンサートにもよく行った。安価で気軽に一流の世界のミュージシャンのジャズが楽しめる。最近ロンドンを訪問したときも同じ店を訪問している。

音楽は、呼んで字のごとく「音」を「楽しむ」のであるから自分が楽しめなければ意味が無い。人間は、理屈よりも、好きか嫌いかで物事を判断する。教養に関係なく人間は、好きか嫌いかだ。
音楽が分かりやすいのは、誰もが嗜好は本人の問題だと思っているからだ。スポーツも同様に分かりやすい。
何についても言えることだと思うのであるが、ひとつの音楽なら音楽を通して、世界を巡れば様々なものが見えてくるような気がする。地理や文化の違う場所で同じ音楽を聞くことにより立体的に音楽も見えるし、文化も立体的に理解することができる。
このことが私は、楽しいのだ。理屈で言っているのではない。様々なものに興味を持ち実際に行ってみること(本当に実行すること)が、大切だと考えている。

実は仕事も同じだ。自分の仕事が好きかどうかが、上手くなるかどうかの分かれ目だと思う。しなければならないと考えると気が重くなるだろう。どうか自分の仕事は好きなものを選んだほうが良いと思う。もし、その仕事を好きになったのであれば、まず深く掘ることだ。そして同じ仕事が、世界でどのように行われているかを行って見てくることを薦めたい。
このように楽しんで仕事ができれば、人生はかなり豊かになるだろう。

「音楽のまとめ」(付録)

ジャンル 一般 林流
ポピュラー/フォーク ビートルズ バッファロースプリングフィールズ
ジャズロック シカゴ イフ
ジャズ マイルスデイビス クリフォードブラウン

#Capitol CP-80339,1971 IF3 (FIBONACII’S NUMBERなど)
#ORIGINAL EMARCY COLLECTION6 195J-6,1955 Clifford Brown with Strings

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Profileプロフィール

林衛
林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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