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三河 淳一さん(5) セントラル・コンピュータ・サービス株式会社

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三河淳一さん
三河 淳一さん
セントラル・コンピュータ・サービス株式会社
1991年、上智大学大学院理工学研究科物理学専攻修了。同年、日本鉱業株式会社(現新日鉱ホールディングス株式会社)に入社。 半導体製造装置や石油プラントの制御系システム開発を経て、セントラル・コンピュータ・サービス株式会社にてビジネス系システム開発に従事。 システムの受託開発プロジェクトに参画する傍ら、社内開発プロセス標準の策定に取り組んだ。
ここ3年間は常に数本のプロジェクトに上級管理者として参画しているが、「プロジェクト管理の改善には終点はない」ことを日々実感している。最近取り組んでいるテーマは、コミュニケーション、開発プロセス、見積もり技法、リスク管理など。

よいチームを作りに社外での経験が生きている

三河淳一さん

能登原
それでは、現在の状況について語ってもらいましょう。

三河
最近の私は7つか8つのプロジェクトを常に見ています。さすがにそれだけあると、かつてのようなプロジェクトリーダ的な作業はできなくて、本当に表面的な部分で接することになってしまうんですが、それでも各プロジェクトのプロジェクトリーダとコミュニケーションをよく図って、プロジェクトが進む方向がぶれてないかどうかを見るようにしています。

プロジェクトリーダは悩みをいっぱい持っていますから、プロジェクタリーダが悩んでいることを極力理解して、一緒になっていいチームがつくれて、いい方向に向かえるようにアドバイスをするというのが私の最近の作業ですね。

能登原
僕の知らない間も変化の連続だったんだね。

三河
そうですね、でも今から考えると、営業もそうですが、一人で外へ出ていた3年間の仕事もいい経験になりましたね。

能登原
それはどういうことで?

三河
何人かでなければ大きな仕事はできないんだけれど、チームを作ったときにはみんながお互い頼りあうのではなくて、ひとりひとりが強くなければいけないと思うようになりました。

能登原
そう、確かにその通りなんですよ。

三河
一人でまったく違う環境に入っていってもここまではできる、これだけのことができるんだという自信をつけさせてくれました。ぜんぜん知らないところですから、まずお客さんの文化や慣習を知らなくてはいけないし、それを早く吸収しながらコミュニケーションを取っていって「やっぱり技術的にはこうすべきだ」ということをきちんと主張するという経験ができましたから、あの期間があってよかった。

今私のグループでは、お客さんのところへチームで行くケースが殆どなんですよ。一人だけでどこかに行ってプロジェクトの立ち上げ支援とか保守作業というのはないんですけど、ほんとうはそういう経験もあったほうがいいんじゃないかなと思うんです。

能登原
よく言うけれど、野球もピッチャーとバッターとは一対一。だから野球はチームプレーなんだけど一人一人が強くなければいけない。強い一人一人がつないで行って点を取る。今の話はそれと似ています。一人一人がある程度強くないとチームが強くならない。ただ、個人が勝手にやっちゃだめなんだよね。作戦があって、バントするとかしないとか、そういうのをきちんとやらないと勝てない。プロジェクトもそれと似たところがあるんです。

三河
そうですね。自分がたどってきた変化の歴史とまったく同じである必要はないんだけれど、変化は必要ですよね。自分から変化を求めるのは難しいんだけれど、周りから与えられる変化、自らがそういう状況に放り込まれる変化のなかで、変化することの価値とか、違う環境で楽しむ、違う環境でも楽しめる強さを獲得してほしいなと思います。

能登原
そうだね。3年間の経験はきちんと三河さんの実になっている。

三河
だから「変化することは大切だ」と部下に言っています。

マネジメントに必要なのは、まず寛容さと公平さ

能登原
いつも対談の最後に聞くんですが、これからマネジメントの立場に立つ人にとって大切なことは何だと思いますか?マネジメントをいやいや始めた三河さんだけれど(笑)、そのころを振り返ってみてでもいいし、今マネジャとして考えていることでもいいですよ。

三河
自分の反省を含めてなんですけれど、寛容さですね。寛容さはとても大切だと思います。それは最初に学んだ、「人の話を聞く」ということにもつながります。今でも私は寛容さがないといわれるんです。

能登原
それはどういう時にいわれるの?

三河
部下が失敗したとき「何でそこまでできないんだ」と強く言ったりするから。私はそこをもっと強く意識してほしいと思うから言うんだけど、もちろん本人だって努力しているし、もうちょっと大目に見てもいいんじゃないかなとか、時々反省しています。

よく見ていると、そういうことはメンバ間にもありますね。だから、プロジェクトでメンバ同士が言い争ったりしていると一緒に食事に行って話をしたり、あるいは個別に喫茶店とか行って話したりもしています。そのとき寛容さが大切なことを話しあうんです。
やっぱり相互に、もうちょっと大目に見てもいいんじゃないかって。でも感情的になっている部分があるんで、なかなか…

能登原
もう、怒っちゃうからね(笑)。そういう時には、いい大人が子どもになってしまう部分があります。

三河
それから、もう一つ大切なのは公平なことですね。リーダはいろいろな面で公平でなければいけない。人の扱いについてももちろん公平でなければいけないし、技術についても偏ってはいけないんじゃないかと思うんです。私も技術的にはかなり偏っているんで(笑)、自分への戒めも含めてですが。

以前、能登原さんと一緒にプロジェクトをやっていたときに、「パワービルダー(PowerBuilder)で幾つかの案件をやっていたときに、ある案件だけはVBでいこう」と方針を出して、話を最後まで聞かずに「え、VBなんですか。もうそんなの古いんじゃないですか」と状況も知らずに言ったことがあって、「人の話を最後まで聞け!」と叱られたことがあるんです。

能登原
あったかもしれない(笑)。

三河
そのときも、私はいろいろな状況を公平に見ていなかったんじゃないかと思うんですよ。

能登原
でも、それは仕方がないかもしれないね。情報を与えていないわけだから。上長はいっぱい情報を持っているから判断がしやすいんですよ。下は情報から遮断されているから判断のしようがないから、それはいたしかたがないんです。自分がリーダになり、上にならないとわからない。

今、マネジャとして取り組んでいること

三河
もうひとつ、10年くらい前、最初にITIの林社長にお会いしたときに頂いたアドバイスを今も大切にしています。それは「いい癖をつけよう」ということでした。けっこういろいろなところで言われているようですが。

能登原
最近は僕がよく言っているかもしれないけど(笑)。

三河
私が管理職になり、自分のグループができてちょうど3年なんですが、週一回水曜の午前中にグループミーティングをやっています。私が管理職以上が受けた報告を部下へ報告して、各メンバにはプロジェクトでやってきたことの結果やこれからやろうとしていること、こんなことで困っているということの報告をしてもらいます。能登原さんと一緒だった数理制御のときにも週一回のミーティングをやっていましたから、それをどこかで継続したいと思って始めました。休みだったり、たまたまイベントでみんながいないときには中止したこともありましたが、三年間毎週一回のミーティングを継続してきました。

コミュニケーションのやり方もいろいろありますから、プロジェクトなら、たとえば朝会をやるとか、どんなやり方でもいいと思うんですけれど、その環境やそこに集まっている人々の状況に応じて何か継続的に最後までまずやり遂げることが必要だと思います。これはプロジェクト管理というより、組織運営ですね。

能登原
それはいいですね。週一回というのは組織やプロジェクトによいリズムを作るんです。だからやるのとやらないのとではぜんぜん違うってくるんですよ。

三河
さらに余談になるんですが、この週一回のミーティングで、時々余興というのをやるんです。最近仕入れた「ちょっとこれは知っていたほうがいいよ」というネタを披露します。パワーポイントで30分とか、時々昼飯時間を過ぎて1時間くらいやることもあるんですが、これは不定期でやっています。

たとえば最近私がやったのは、開発プロセスは、シーケンシャルプロセスモデルいわゆるウォータフォールからスパイラルがあって、インクリメンタルがあって…と、プロセスモデルの歴史的変遷を整理したことを披露しました。実装設計や実装に強く、いつも勉強しているメンバーなんかは、契約による設計(Design
by Contract)と最近の実装言語の対応状況なんかを判りやすく整理して話してくれたりします。見積もり技法やCMS(Content Management
System)フレームワーク紹介なんかもやりました。
今度予定しているのはRoR(Ruby on Rails)という、最近話題になっているテクノロジーを紹介するというものです。

能登原
それは面白い。思わず参加したくなりますね。

三河
もう一つは「カイゼン」に関してです。カイゼンって終着点がないじゃないですか。終わりを考えちゃいけないのかもしれませんね。プロジェクトは終わりを考えないといけないけれど。

能登原
カイゼンに終わりがあっちゃいけない。この間僕はトヨタのラインを見学に行ったけれど、そういうことを現地現物で見に行くといいですよ。延々とカイゼンし続けている姿を見ると、やはり驚きがある。

三河
カイゼンするためには、プロジェクトもそうなんですけれども、今より良くなるやり方を模索し続けなければならないですよね。それができる環境をどう作るかを考えているんです。デマルコの「ゆとりの法則」にもありますが、変化するためには変化するためのゆとりがいるでしょう。

能登原
ハンドルの遊びと同じだね。

三河
どこにもちゃんとした答えがないというか、いろいろな人がいろいろな答えを持っているのかもしれないけれど、ゆとりを作るにはどうしたらいいか、変化できる環境を作るにはどうしたらいいか、改善するための環境をどう作ればいいのかということを今一番考えています。

能登原
やはりビジネス上一番難しいのは、お客(ユーザー)とシステム部門とベンダーの三者があるけれど、その三者が同じようにゆとりや変化の必要を認識するかどうかが問題だと思います。たとえば CCSという会社が思っていてもユーザーやシステム部門が必要を感じてないとまずいし。

三河
私の場合、さらにその先というか、お客様に「ゆとりを持つとこういう良いことや価値があるんですよ。変化するためのゆとりを保つことで私たちは成功しています。だから一緒にやりませんか」という感じでやりたいんです。

能登原
それはやれるでしょう?

三河
でも、それが足元でできていないんです。そんなことを言っていながらまず自分が一番ひいひい言っている。

能登原
今組織が大きくなって、プロジェクトがたくさんあるからですよ。以前、自分の配下のチームで自由にやっているときには、三河さんも変化のゆとりをもつことはできたわけでしょ。

三河
そういう意味では、まだ上級管理者としては「ひよっ子」なんです(笑)。

能登原
もうちょっと鍛えればできるかも。リーダークラスもちゃんと鍛えて。

三河
それから、私自身ももうちょっとゆとりを持てるように工夫したいんです。

能登原
それは難しいよね。組織はいつも最適な人数でできるわけではなくて、新しく訓練の必要な人も入ってくるから。

三河
それもあるんですが、自分の性格も善し悪しなんです。積極的で新しもの好きで、頼まれたら断れないところがあって。

能登原
僕もこの対談を三河さんに頼んでいるから、それについては何ともコメントしにくい(笑)

三河
部下にもっとゆとりを持ちなさいといいながら、一番できていないのが私なんです。本当に綱渡り状態。

能登原
今のように組織が大きくなるときは仕方がないと思います。でもあまり自分でやってしまうと人が育たないから、ある程度意識して抑えたほうがいいね。…といううちにだいぶ時間も過ぎてしまいました。

三河
なんか最後は相談になってしまいましたね(笑)。

能登原
いやいや、「ゆとり」をいかに確保するかというのは難しいテーマですよ。今日は、お忙しい中をありがとうございました。これからもがんばって下さい。

(おわり)

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能登原 伸二
■株式会社アイ・ティ・イノベーション 取締役 兼 専務執行役員 ■株式会社ジャパンエナジーの情報システム部門において、長年、情報システムの企画、開発、運用までの幅広い業務に携わり、ITによる業務改革、収益向上を支援してきた。また、その実務を経験する中で、システム開発における開発方法面の必要性を認識し、C/S向け開発方法論の制定、導入を推進。常に顧客と共に考え、行動し、成果を上げることをモットーとしている。

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