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ふたたびプロジェクト活動の本質について

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久しぶりに、筆者が過去に開発し、講師をしていたプロジェクトマネジメントのセミナーで、挨拶と短い講演をすることになった。
プロジェクト計画とリスクマネジメントの方法をワークショップにより理解することができる実践演習であり、アイ・ティ・イノベーションが実施しているトレーニングの中で、ベストセラーになっているものだ。かれこれ8年ほど実施している。

プロジェクトの計画業務を、実際に筆者が経験したプロジェクトを題材にしたケーススタディに沿ってグループ演習を進めるもので、計画の難しさやリスク評価の方法を実践さながらに体験できることが、お客様に支持されている大きな理由だと考えている。また、ケーススタディを通して、グループでの意思決定の方法やコミュニケーション、リーダーシップについても学ぶことができる。
 
私はこのコースの最終日に、受講者にこのようなアドバイスをすることがよくあった。

「この演習を一生懸命頑張った勢いで、本番のプロジェクトにのぞめば、プロジェクトは、必ずうまくいきますよ。」
使う技術も、段取り、ワークシートも、そのまま使えるものだからである。

しかし、本番と演習とは根本的に違うものだ。演習は何度でもできるが、本番はそれ一回が勝負だ。このことで責任が重く失敗できないので「大変だ!」と思うか、「チャンスが到来した!よし、やってやろう!」と考えるかどうかで、結果は大きく変わってくる。

私は、今まで何十回もプロジェクトマネジメントに関わる講演を行う際に、心がけていることが一つある。このことを今回の短い講演でも受講者に伝えよう。

それは、「プロジェクトとは何か(本質)」に対して、深く理解しているかどうかが成功と関わっているということである。経営層、管理者、メンバーの立場に関わり無く、必要な理解である。プロジェクト活動の本質についての理解が不足している。

プロジェクト活動とは、どの様な活動か考えてみよう。
プロジェクトを実行することにより得られるものは、何かについて、明確にしてみよう。
(1)何故プロジェクトは、実行されるのか?
「定常業務では、得られない価値を創出ために実施される。これ自体大変価値のあることだ」
今までに無い価値を生み出すことについて、同意できますか?ほとんどの人が、このことについては、イエスだろう。いままでに実現されていない価値を企画し、計画し創出すること。すばらしいことだと思う。このビジョンが高ければ高いほど、プロジェクトに参画する人は意気に感じ、努力できるに違いない。
(2)それでは、実際にプロジェクトの責任者に任命されたり、メンバーにアサインされた際に、最初苦しいなと感じる理由は何でしょうか?多くのプロジェクト参加者が、そのように感じていますね。その理由は?
ビジョン(目標)については同意ですが、期限や予算、資源も同時に約束しなければなりませんね。つまり、達成したとしたら価値ある目標と同時に、期限や予算をさきに決めてしまうために、本当に実現できるかどうかは分からないと言うこと。だから不安を感じる人が多いと考えるのですね。言い換えればプロジェクト活動とは、不確実性をともなう活動だと言うことを、本当に理解していないといけないと言うことです。
プロジェクト活動の本質は、不確実であるが、実現すれば意義があると言うことになります。このことは、プロジェクト活動の構造的なもので避けては通れません。
だからマネジメントが重要だと言う理屈になります。本質さえ理解できていれば、無用な不安をいだくことなく目標に専念できるはずです。
もう一つのプロジェクトに関する大切な視点がありますね。人の面です。プロジェクトは、言うまでも無くかってにスイッチを入れれば自走してくれるのではなく、人が動かしています。不確実性があるので、様々な問題、課題に直面するでしょう。これらの問題、課題をチームでもって乗り越えていくことが重要であり、そのために責任、役割を持ったリーダー、メンバーが、必要になります。
私がプロジェクトのビジョンの実現だけでなく、人の成長も大きなプロジェクトの成果だと考えているのは、多くの体験から成長した人々の事実を知っているからです。
困難な状況を苦労や工夫し知恵を絞って一緒に乗り越えた仲間が、その後、素晴らしい人に成長するのをこの目で見てきました。特に人格的な成長とプロジェクトでの活動は関連しています。プロジェクトの期間は、長いものでも2,3年でしょう。この間に同じ目標にむかって努力したリーダー、メンバーは、大きく成長するし、私の場合はプロジェクト終了後も、多くの人と一生の友達になることができています。筆者が、ビジネスができるのも、一緒にプロジェクトを経験した仲間があってこそ成り立っているのです。私は、プロジェクト活動を通して多くの想像以上のものを得てきました。リスクが伴うからこそ高い価値が生み出せるし、同時に多くの友人も得られる。さらには、責任ある地位で主体的にプロジェクトを推進している人自身が、成長できる。これが、私なりのプロジェクトの本質の理解です。
是非、皆さんも自分なりの言葉で「プロジェクトの本質」を整理してみると良いと思います。
プロジェクトメンバーと本質を共有することにより、意識は変えられるし、仲間との結束力も変化します。

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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