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【第6回】良いこといっぱい、標準化

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前回、多くのプロジェクト活動は組織の枠組みの中で進められるため、両者の分担をきっちりと決め、組織がプロジェクトの状況を正確かつタイムリーに把握・チェックする方法を確立しておく必要性について説明しました。それによってプロジェクトマネジャーは後顧の憂いなく担当するプロジェクトに集中して挑むことが出来るのです。

しかし、そうは言っても簡単じゃありません・・・

「組織として各プロジェクトの活動を全体的・横断的にマネジメントする手段を確立する」と言っても、一朝一夕に出来上がるものではありません。なぜなら、プロジェクトマネジメントの方法が人によってバラバラだと、組織として「同じ目線」で各プロジェクトの状況を把握・評価することが難しいからです。
前回に続き、またまたPMホーム(株)の例で申し訳ないのですが、ある2つのマイホーム案件が同時に始まったとします。一方のプロジェクトからは「いくつか品質上の問題が起こっており、まだ全体の40%程度しか作業が完了していません」との報告、もう一方は「今のところ大きな問題ありません、全体の60%まで来ました」との報告をそれぞれのPMから受けたとします。言葉を素直に受け止めれば前者のプロジェクトの方が気になるところですね。しかし、本当にどちらのプロジェクトが順調なのか、これだけでは正確に把握することは出来ないのです。
まず、そもそも作業がどこまで進んでいるかの基準が異なる可能性があります。前者のプロジェクトでは「着工まで行くと40%」、後者のプロジェクトでは「設計が完了すると60%」と判断しているかもしれません(その場合、実は前者のプロジェクトが先に進んでいます)。さらに、後者のプロジェクトでは品質が十分に管理されておらず、「問題ありません」と言いながら実は大きな品質上の問題が隠れているだけなのかもしれません。
このような場合、ひとつひとつのプロジェクトに対して「どのような基準で報告しているのか」、「どのような管理手法によって判断しているのか」を聞き、頭の中でプロジェクト間の差異を補正しなければ正確に状況を把握することが出来ないのです。もちろん組織のマネジャーにはそんな時間ありませんし、つい「キミに任せたよ!」となって問題が隠れがちになってしまうのです。

プロジェクトマネジメント方法を標準化する

組織として「同じ目線」でプロジェクトの状況を評価するためには、前提として個々のプロジェクトの管理方法が組織の中で統一化されている必要があります。つまり、プロジェクトのマネジメントの標準的な手順やルールを定義し、プロジェクトを任せるすべてのPMがそれを理解し、遵守していなければならないのです。
何もプロジェクトマネジャー達を型に押し込まなければならないと言っている訳ではありません。手順やルールは標準化してもそれ以外の部分、例えばチームワークの確立やコミュニケーションの活性化、プロジェクト活動を通じたメンバーの育成など、プロジェクトの中でマネジメント能力を発揮すべき部分は幾らでもあり、むしろそちらの方がプロジェクトマネジャーとしては「腕の見せ所」と考えるべきです。
もちろん組織のためだけではなく、プロジェクトマネジャー側にとっても大きなメリットがあります。まず、プロジェクトを担当する度にマネジメントの手順やルールを一から考える手間が省けること、そして、プロジェクトの活動が組織から公平に評価されることです。組織の中では、とかく声の大きい人、アピール上手な人が高い評価を得がちな面がありますが、プロジェクトの活動が「同じ目線」で評価されるようになれば、自分達のがんばった成果も「同じ目線」によって組織から公正に評価されることに繋がるのです。
さらには、標準化によってプロジェクトマネジメントの方法が明文化され、目に見える形で定義されることになります。これは手順やルールを組織の中で改善・進化させ、組織におけるプロジェクトの成功確率を向上させて行くためも重要なことです。目に見えないものはなかなか改善の検討が出来ませんよね?プロジェクト活動で問題が起こった時、その対応策を標準の手順やルールに組み込み、改善して行くことによって自ずと他のプロジェクトでも再発が防止されるようになるのです。

生まれ変わったPMホーム(株)

<ある日の朝・・・>
営業部長:全員集まったな。じゃあ、今月のプロジェクト会議を始めよう。Aの案件から順次報告してくれ。
A:私が担当しているプロジェクトですが、計画に対して10%前倒しで進んでいます。これは設計段階での顧客との調整が思いのほか順調に進んだためで、現在は着工に備えて準備を進めているところです。品質やコスト面でも特に課題はありませんが、詳細は進捗報告書をご確認下さい。
B:では続いてB案件について私から報告します。こちらはまだ設計段階ですが、設計書の品質に問題が見つかったために20%の進捗遅れが出ています。対応のために住宅設計に詳しいメンバー1名を2ヶ月間追加したいと考えています。
営業部長:要員配分の調整は私の役割だったね。よし、今ちょうど空いているC君に手伝ってもらってくれ。
B:分かりました。ありがとうございます。あと、今回の問題の原因は設計書をチェックするタイミングが遅かったためで、早期に問題を発見するための品質管理ルールをプロジェクトマネジメント標準に追加すべきではないかと思います。
営業部長:なるほど、では標準化を担当しているD君に今回の問題点を伝え一緒に改善を検討するように。では、次の案件・・・。

堅い話はこれ位にしておいて、と

前回に引き続き少し複雑な話になりましたが、ここまで組織とプロジェクトの関係性、組織とプロジェクトの階層的なマネジメントを連携させるための枠組み・ポイントについて考えてきました。
次回からはテーマを変えてもうちょっとシンプルな話題となります。是非お楽しみに!

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Profileプロフィール

弘中 伸典
弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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