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長い時間をかけてソフトウェアの本質を見た

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私は、約30年余りの間、ソフトウェア開発とマネジメントの問題に関心を持ち、ソフトウェア開発の質の向上に努力してきた。最初に取り組んだことは、標準プロセスと共通のモデリングテクニックによる質の向上である。次に、自動化ツールの開発と導入についての取り組みである。プロセスとツールにより生産性や品質について一定の効果はあったが更なる変革のためには何かが欠けていると感じていた。15年ほど前から取り組んでいることは、マネジメント力強化である。マネジメントの方法を改善し効果を上げようと言うものである。プロセスとマネジメントの改善により品質と生産性は上がるが、本質的な価値の向上につなげることはなかなか難しい。価値そのものを向上させるには、どのようにしたら良いかという課題を問いているのである。ソフトウェアの本質的な課題に取り組んでこそ意味があると考えている。本質的な価値向上のためには、関わる人の人格、性格、能力、モチベーションなど人の問題を改善することが重要であることも知った。ソフトウェアの本当の価値向上のために何をするか真剣に追求し続けることに努力しよう。

物理でも化学の世界でも本物の仕事を成し遂げた人が、大切にしていることは、基本である。まずは、ソフトウェアの仕事を自分の関心事とし、正しい考え方と基本を理解することが必要だ。基本を本当に分かることと分かっているつもりになることは、まったく別物である。時に、分かっているつもりとは、悪さをする。ソフトウェアの世界では、この分かっているつもり人間に出くわす。

一昨日、NHKのノーベル賞受賞者の対談番組で物理学賞を受賞した益川さんが、大切なことを言っていた。 学校で習う勉強は、基礎の基礎で、何かに関心を持って自主的に追求したことが、物になるということ。また、研究者として大成するかどうかは、学校の成績とは相関関係はあまり無いとも言っている。いわゆる秀才が、要領よくやったことよりも少々、ドンくさくても努力して少しずつ理解してきたことが、積み重なり、時期が来て一気に本質が見えて大きな発展に繋がることがあるということだ。長い時間強い意志で目標としてきたことにより大きな仕事を大成する。ショートカットや要領よい仕事からは本質は見えてこないことも多いようだ。

私もソフトウェアの改革と質の向上を本当に長い間、目標として仕事を進めてきた。そのことだけは、良かったと思うしゆっくりでも後悔していない。なぜならば、好きだからだ。

そのような私が、最近BABOK(ビジネス分析の知識体系)を勉強して、長く取り組んできた上流の問題を振り返ってみて気が付いたことは、「自然言語でのソフトウェア要求の記述方法」である。すぐれた記述をすることに価値があると気が付いていなかったわけではないが、プロセスやモデリングなどの手法に拘りすぎて要求をとことん推敲した自然言語で表現することを重要視していなかった。いろいろまわり道したあげくあらためて大切なことに気が付いたのだ。そして、そのことは確信に変ってきている。自然言語での物事の記述が、あいまいであれば、その先は、うまくいくはずが無い。的を得た「ことば」には、力もあるし、共感も呼ぶ。BABOKでは、モデルを書いたり、仕様を設計する前に「ニーズから要求を引き出し、誰もが理解できる研ぎ澄まされたことばで、要求を文書化」する。ビジネスの視点やステイクホルダーの視点、機能、非機能の視点などで要求を分類し体系化する。体系化を検討する前に最もふさわしい“ことば”を選ぶ。ことばは、思想や思考を表し、ソフトウェアの本となる基本概念を形成する。つまり、共感や感動を生むまでことばを洗練することによりその後のモデリング、設計を力強いものにする。私は、ソフトウェアをそのように理解している。

「だから、これからは、ことばにとことん拘り、本質を追求する。」

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Profileプロフィール

林衛
林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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