ホーム > ブログ > 横尾 誠康の記事一覧 > 【第8回】 ヒューマン・スキルとコンセプチュアル・スキルの育成事例 その2。

【第8回】 ヒューマン・スキルとコンセプチュアル・スキルの育成事例 その2。

Pocket

< 前回 | 目次 | 次回 >

前回は、豊富な経験にもとづいた実践的なノウハウに触れた受講者達が、自分の過去を振り返った時に、自分に足りなかったことに気付き過去の行動を厳しく評価するようになったことを紹介しました。これは悪くない傾向です。
読者の皆さんもお気づきでしょうが、自分の問題点を率直に認識することは、自分を変えたいと思う原動力になるのです。

自信の獲得

さて、実践的なノウハウに触れた受講者が、今後の自分についてはどう考えたでしょうか。
これも、診断結果をご覧いただきましょう。

Yokoo_chart100201_1

このチャートも前回のチャートと同様テクニカル・スキルを評価していますが、今度は、自分がどの程度の水準で行動できると考えているか、自己評価結果(8人の平均点)をレーダーチャートにしたものです。
こちらのチャートは、前回と比べて高くなった項目が多く見受けられます。
プロジェクトマネージメントに関する3項目も向上が見られます。
過去の経験を厳しく評価した受講生も、今度同じことをやる時にはもっと高いレベルで(きちんと)行動できるという自信を獲得したようです。
次にやる時には、必ず改善してみせるという決意が感じられる結果です。

更に面白いのは、プロジェクト管理につられてITプロセス管理や要員スキル管理、協力会社管理、仕様変更管理などの管理系のスキル項目も向上しています。また、ビジネス企画・提案策定も大きく向上しています。どうやらプロジェクト管理に関するノウハウは、様々な局面で役に立つ知識だったようです。

ヒューマン・スキル、コンセプチュアル・スキル

長らくお待たせしました。
いよいよ、ヒューマン・スキルとコンセプチュアル・スキルがどのように変化したかご覧いただきます。

Yokoo_chart100201_2

このチャートはヒューマン・スキル、コンセプチュアル・スキルを対象に、自分が普段どの程度の水準で行動しているか、自己評価結果(8人の平均点)をレーダーチャートにしたものです。
こちらの評価では、6段階で行動水準を評価してもらっています。
青い線が実施前の自己評価で赤い線が実施後の自己評価です。
こちらは多くの項目が、実施前よりも実施後に高い得点になっています。特に目に付くのが、コミュニケーションや分析力、管理調整力、企画力、プレゼンテーション力、リーダーシップ、顧客志向、改革・改善行動です。
正直に申し上げれば、実施前に私は、ヒューマン・スキルやコンセプチュアル・スキルは、さほど向上しないだろうと予想していました。
ですが結果は予想に反してかなりの向上が見られたのです。
実施前と実施後の差は合計点で約5.8点です。
実は、スキル診断の統計では、この年齢層(30代中盤)のスキル向上のペースと照らし合わせると、5年分に相当する向上を4ヶ月間のトレーニングで成し遂げたことになります。
このトレーニング・プログラムには、直接的にコミュニケーションやリーダーシップなどに対するトレーニングは行っていなかったのにも関わらずです。

さて、これだけで安心はできません。
前々回の記事では、ヒューマン・スキルやコンセプチュアル・スキルは、自分が高いと思っているだけではダメで、周りの人達からも高い評価を得られなければならないと解説しました。
このプログラムでは360度評価も実施前後で行っています。
それでは、360度評価の結果も見てみましょう。

Yokoo_chart100201_3

このチャートはヒューマン・スキルやコンセプチュアル・スキルを対象に、普段どの程度の水準で行動しているか、他者の視点で評価(360度評価)した結果の平均点をレーダーチャートにしたものです。 こちらは、自己評価の半分の7項目だけを評価しています。
青い線が実施前の他者評価で緑の線が実施後の他者評価です。

どうでしょう、全ての項目がかなり向上しています。
元々高かったコミュニケーションや分析力は向上率がやや低めですが、問題解決、管理調整、企画、プレゼン、リーダーシップはかなり向上しています。
7項目だけの評価であるにも関わらず、合計で約4.8点も向上しています。
この結果をスキル診断の統計と照らし合わせると、この年齢層(30代中盤)の実に5年分をかなり上回る向上を成し遂げたことになります。

こちらも実施前には、それほど向上しないだろうと思っていた項目でした。
360度評価を実施してくれた方は、このプログラムに同席していない方を多く含んでいます。

その人達は、受講者がこのトレーニングの中で何を行っているのか知らないまま評価を行っているのです。
つまり、その4ヶ月間に普段の仕事の中で感じ取った受講者の行動の変化を率直に評価した結果がこの評価結果に表れているのです。
これは、どうやら本物らしいと思うようになりました。

重ねて言いますが、このトレーニング・プログラムには、直接的にコミュニケーションやリーダーシップなどに対するトレーニングは行っていませんでした。
では、何がこのような結果をもたらす原因になったのでしょうか。
このトレーニングで特徴的だったのは、座学で習ったノウハウを参考に受講者をチームに分けて演習を行うのですが、演習は以下の流れで実施してもらいました。

  1. 演習テーマについてメンバー同士で徹底的にディスカッションする。
  2. まとめた結果を整理して発表資料にまとめる。
  3. まとめた結果をチームごとにプレゼンテーションし、他のチームや講師に説明する。
  4. 他のチームや講師からの質問に最後まで答えきる。

この他に、講師やOJTに協力してくれる人達に、インタビューして必要な情報を聞き出す場面もありました。
その上で、このプログラムの最終プレゼンテーションの場面では、受講者の上司やOJTの対象とした大規模プロジェクトのお客様にも参加してもらい、コンペ形式でプレゼンテーションと審査を行いました。

つまり、かなり緊張する場面が最後に控えているばかりでなく、個々の演習でも普段あまりやりなれていない、プレゼンテーションを毎回やらなければならないのです。
私は、この連載記事の中で技術者を志向する人材は、コミュニケーションが苦手と書きました。
このトレーニングでも最初のうちは、プレゼンの態度や話し方が今ひとつだった受講者が、回を重ねるごとに堂々と自信を持って説明するようになり、質問への受け答えも冷静にやり取りできるようになります。
プレゼンの内容も次第に簡潔で分かりやすくなります。

私は、過去の自分の経験を思い出しました。
社会人になったばかりの私は、技術者を志向していたこともあり、プレゼンテーションのような場面は大の苦手で興味もありませんでした。できれば多くの人が居る前で、発表とかプレゼンなんかやらずに済ませたいと思ったものです。
ですが、次第に部下の勉強会や他部門への説明や報告の機会などが増え、やがて開発部の部長として300人近い社員の前で来期の部門戦略をプレゼンする場面を経験するに至って、人前で何かを発表することにはプレッシャーを感じなくなっていました。
それどころか、せっかく話を聞いてくれる人が居るなら、できるだけ楽しく聞いてもらいたいし、聞いて良かったと思えるようなことを話したい、などと思うようになっていました。

何が人を変えるのでしょうか?
どうやらこの時に大事なのは“慣れ”のようです。
もちろんそれだけではないでしょうが、“慣れ”が重要な要素であることは確実なようです。
前回、ヒューマン・スキルやコンセプチュアル・スキルは、気質や性格に影響(支配)されていると説明しました。
生まれ持った気質や長い生活習慣や環境に影響を受けて形成された性格を変えるかのような人材育成を行う上では、新しい生活(仕事)習慣として定着するように繰り返し実行して“慣れ”させることが効果的なようです。
診断結果の統計を見ると、まだ年齢が若いうちにヒューマン・スキルやコンセプチュアル・スキルが向上しやすいというのも、性格が定着しきる前の若い段階なら柔軟にスキルの向上(変化)をさせ易いといえるのかもしれません。
でも、読者の皆さんにとっては、30代中盤を過ぎてしまった人材の育成も課題としている方も多くいらっしゃると思います。

次回は、その点にも触れてみましょう。
それでは、また。

(つづく)

< 前回 | 目次 | 次回 >

Pocket

目次
このページのトップへ