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【第10回】 育成効果を高めるためにお勧めすること。

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さて前回は、トレーニングプログラムを利用して、テクニカル・スキルだけでなくヒューマン・スキルとコンセプチュアル・スキルも育成した事例を紹介しました。
また、日ごろの仕事の中で行われる報告会や発表会などの場を使い、もう少し簡単に「習慣化」の力を借りてヒューマン・スキルとコンセプチュアル・スキルを向上させる方法も紹介しました。
ただ、少し気をつけなければいけないのは、報告や発表の機会を、ただ増やしただけでは、今ひとつ効果が上がりづらいこともあります。
どうすれば良いでしょう。
せっかくの機会を有効に使うために何が必要か少し紹介しましょう。

振り返りと改善を行う

IT技術者のスキルを診断では、プロジェクトが終わった時にきちんと評価や振り返りを行っているか確認する質問があるのですが、実は、きちんとそれを行っている組織が非常に少ないことが分かりました。
つまり、せっかく完了報告を行っても、淡々と実施結果を報告するだけになってしまっているようなのです。これは実にもったいないことです。
そのような組織のマネージャに“プロジェクトで同じ失敗を繰り返してしまうことが多くないですか。”と質問すると、ほとんどの方が“その通りです”と答えます。
せっかく報告の機会を設けるなら、もう少し踏み込んでやり方を変えてみましょう。
プロジェクトの実施結果をきちんと評価し、どのような問題が発生したか、今後のプロジェクトに向けてどのような課題や改善提案があるのか、参加者できちんと振り返りましょう。
どんなプロジェクトも、何の問題も発生せずに終わることはめったに無いでしょう。結果的には何とか目標を達成してもどこか失敗したところがあるはずです。
失敗してしまうのは残念なことですが、失敗は貴重な改善のチャンスでもあります。
失敗を繰り返さないために、原因を振り返り改善策を考えましょう。
この時に注意しなければいけないのは、悪者探しをして雰囲気の暗い「反省会」にしないことです。
もちろん、問題の原因はきちんと洞察する必要があります。個人のスキル不足が原因のこともあるでしょう。ですが、個人のスキル不足を指摘して終わりでは、せっかくの振り返りの機会が生かせません。 本人のスキル向上だけでなく、上司や先輩(組織)としてどうすべきだったか、今後どうするのかも考える必要があります。

話し方や態度を改善する

もう一つアドバイスがあります。
プレゼンテーションなどを行うと、内容を分かりやすく表現し説明することも大事ですが、それと同時に、人のプレゼンテーションを見ると、話し方や態度が今一つ良くない人が多いことに気がつきます。
ところが、プレゼンテーションをしている人間は、意外と自分自身の話し方や態度の悪いところに気がつきにくいようです。
指導する立場の人間は、プレゼンテーションの内容だけでなく話し方や態度もきちんと指導しましょう。 自信を持って堂々と説明する。聞き手にきちんと向かい合って誠実で前向きに話し合う。率直に自分の問題点を反省する。このような態度を身につけると、プレゼンテーション以外の行動に対しても周りの人の評価が向上し、仕事の中での影響力が強くなることが、スキル診断の統計から分かりました。
態度って大事ですね。
もちろん、内容を分かりやすく表現し伝える方も根気強く指導が必要なのですが、内容と態度の両方がそろうと、伝えたいことがきちんと伝わるということですね。

さて、これまで人材育成の考え方や事例を色々と紹介してきましたが、連載が思ったよりも長くなってしまったので、一度内容を振り返って整理してみましょう。

人材育成の全体を振り返る

この連載を始めた時に、人材育成を考える上で三つのテーマをピックアップしました。(すっかり忘れていました)

  1. どうしたら誰にどのような育成を行うべきかが分かるのか
    このテーマでは、まず「会社にとって必要な人材とはどんな人材なのか。」を考えて見る必要があることを解説しました。つまり、会社が求める人材像がはっきりと示されていなければ、そもそも、何を目指して能力開発を行うのかも分からないということでした。
    その時に、ます始めに示すべきものが「スキル」ではなく「役割と責任」であることも解説しました。
  2. どうやってスキルを身に付けさせるのか
    そもそもスキルには、テクニカル・スキル、ヒューマン・スキル、コンセプチュアル・スキルの三つのスキルがあること、よくある研修だけでは思うように人を育てることができない悩みを解決するためには、自分たちの方法論が大事であること、ヒューマン・スキル、コンセプチュアル・スキルを育成するためには、座学よりも、体験的にディスカッションやプレゼンテーションを繰り返して「慣れる」ことが効果的であること、などを紹介しました。
  3. そもそも、人材を育成するためにどのようなプロセスが必要か
    おや、このテーマに関しては、まだご説明していませんでしたね。
    今後の連載で、プロセスについて解説する回も設けましょう。

その前に、三つのテーマをもう少し整理して見ましょう。
この連載の初回に、これらが人材育成を“きちんと”やり遂げるための大きな枠組みだと解説しました。 この三つは、「人材像」、「育成手段」、「育成プロセス」と表現することができます。
自分が何を目指して成長すべきか。そのためにはどのような教育手段があるのか。能力開発をきちんとやり遂げるために必要なことをどうやって実行するのか。
この三つの枠組みのどれが欠けても、能力開発(人材育成)がうまく機能しないことがお分かりいただけると思います。
図にするとこんな感じです。

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この三つをきちんと揃えるのはマネージャの役割と責任なのです。もちろん会社の責任でもありますが、少なくとも「人材モデル」と「育成手段」は、仕事の専門分野にまで踏み込んで考える必要がありますから、その部門のマネージャが考えなければなりません。

いかがでしょうか。こうやって整理してみると、本当に必要な材料がきちんとそろっている組織は非常に少ないのではないでしょうか。
形の上ではそろっていると思われる組織でも、内容がきちんと整理されて充実している組織は極めて少ないのが実体です。

更にもう少し耳の痛い?話をすると、これだけの枠組みをきちんと運用するためには、マネージャにかなり高いスキルが求められます。
断片的に人材育成や人事管理のテクニックを勉強した程度では到底足りません。ですが、マネージャにきちんとマネジメント・トレーニングを実施しているIT組織はあまり多くありません。と言うより、非常に少ないようです。
それだけではありません。
人材育成や人事管理についてマネージャ同士が話し合う機会がとても少ないのも多くの組織で見られる問題です。
私がコンサルティングする時は、マネージャ同士が人材育成や人事管理について話し合ってもらう機会を良く設けるのですが、マネージャ間の考え方や指導方法は実にバラバラで、時には、けんか腰の話し合いになることさえ良くあります。
議論が伯仲するのは良いことです。それだけ皆さんが部下の育成指導や評価などを真剣に考えていることでもあります。ですが、議論がそれだけ伯仲するということは、裏を返せば、普段はマネージャ同士で人材育成や人事に関する考え方が、大きく食い違ったまま指導が行われているということです。
部下からするとこれは大変な問題です。
同じ仕事をやってもあるマネージャからは高く評価され、別のマネージャからは厳しく評価されてしまうかもしれません。
せっかく真剣に能力開発に取り組んでスキルが認められていても、別のマネージャにはスキル不足と言われてしまうかもしれないのです。そもそもどのような人材像を目指すべきか、同じ仕事でもマネージャによって違ったりするのですから。
これでは、指導される方もたまりませんね。

組織としては、マネージャにマネジメント・トレーニングの機会を与えるだけでなく、マネージャ同士で話し合い、お互いの認識をきちんとすり合わせる場も設ける必要があるのです。
会社としてやらなければならないことを後回しにしてしまっているということです。
IT業界は、他の産業と違っていまだに属人的で労働集約的な性質の仕事が支配的です。だからこそ、人材が最も重要な財産であり、人材育成は重要なテーマであり、将来への大事な投資だと思います。

さて、全体像の整理ができたところで一旦区切りをつけて、次回から新しいテーマに進めてみます。
それでは、また。

(つづく)

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