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【第14回】段取りの三:作業リストを作る(2)

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前回、プロジェクトの作業リストを作成するためには次の2つのパターンがあることを紹介しました。

パターン1 : プロジェクトの作業を、その手順を考えながら詳細化する(作業手順で分解)
パターン2 : プロジェクトの成果物を分解することで、それを作成する作業が洗い出される(成果物で分解)

しかし、作業手順で洗い出しを行うと成果物に漏れが起こりやすく、一方成果物視点で作業の洗い出しを行うと「どうやって成果物を作るのか」が曖昧になってしまうというデメリットがあることも述べました。
今回は2つのパターンをミックスしてそれぞれの弱点をカバーする“ハイブリッド式”の作業リストの作り方を説明しましょう。

プロジェクトのすべての作業は、成果を生み出すためにある

ハイブリッド式では上記の2パターンの組み合わせになるのですが、実はどちらかのパターンを“主軸”にし、もう一方のパターンでそれを“補強”する、という組み合わせ方になっています。

さて、どちらのパターンを“主軸”に据えているのか、皆さんお分かりでしょうか?

正解発表の前に、いま一度 “プロジェクト”とは何かを振り返って見ましょう。
プロジェクトとは「ある期間の中で独自の成果を生む活動」でしたね。つまり、プロジェクトにおけるすべての作業は最終的な成果物を生み出すために行われ、逆に最終的な成果物に繋がらない作業は一切必要としないのです。

従って、プロジェクトでは「作業はなにか?→作業によって生まれる成果物はなにか?」ではなく、「最終的な成果物を構成する成果物はなにか?→それらの成果物を生み出すための作業はなにか?」の順番で考えた方が効率的になのです。理由は、前者の順序の場合、生み出される成果物とプロジェクトの最終的な成果物を見比べて過不足を検証し、その結果によっては作業を見直すことが必要になってくるからです。

図1 プロジェクトにおける作業と成果物の考え方
hironaka_chart100720_1

そうです、正解はパターン2。
ハイブリッド式では成果物で分解する方法を主軸にします。
そして、分解された成果物を“骨格”とし、それらの成果物をどのように作るのかをパターン1の作業手順の分解によって“肉付け”していくのです。
これが“ハイブリッド式”のコンセプトとなります。

図2 ハイブリッド式作業リストのイメージ
hironaka_chart100720_2

なお、ここまで話をシンプルにするため、“成果”=“成果物”として説明していますが、プロジェクトの成果が“モノ”ではない場合もあります。

例えば、新サービスを提供する体制の構築など“ヒト”が対象になるケースもありますし、意識の改革や知名度の向上といった直接目に見えない価値を求めるプロジェクトだってあります。
これらは「新しいモノを手に入れる」というより、「変化によってある状態を実現する」ことで成果を生み出すプロジェクトであると言えますが、そのような場合は「最終的に実現すべき状態」を出発点として、変化させる“領域”を細分化することで成果物と同じように分解することが可能です。
例えば、新体制を構築するプロジェクトでは、“営業”、“事務処理”、“顧客サポート”など役割の領域を分割していけば良いのです。

作業手順を分解するための“基本形”

成果物を分解した上で、各成果物を生み出すための作業手順を肉付けする、ということは分かりましたが、ここでまた困ってしまいます。
一体、作業手順をどうやって洗い出せば良いのでしょうか?

その一つの考え方として、成果物がどのような作業の流れによって作られるのか、図3の“基本形”を知っておくと便利です。

図3 成果物を作成する作業の基本形
hironaka_chart100720_3

例えば、チキンカレー(という成果物)を作ることを考えてみてください。
まず、チキンはムネ肉かモモ肉か、ルーは甘口なのか辛口なのかなど、どのようなレシピで作るのなどを考えて必要な材料や調理器具を揃えますよね。これがステップ①の「検討/準備」です。次の「実施」は、実際に調理を行う作業にあたります。カレーができたら味見をして調味料を足したり、お姑さんのOKを貰ったりしますね。これが「チェック/承認」です。最後の「公開」は、完成したカレーを盛り付けて家族に提供する作業になります。

ほとんどの場合このような流れによって成果物は作られるため、この基本形を念頭に置いて考えることで作業手順の洗い出しが容易になるのです。

2つの注意点

ここまででハイブリッド式の基本的な考え方が掴めたかと思いますが、注意すべき点が2つあります。

注意点(1) 共通化できる成果物はまとめておく

1点目は、成果物を分解する際の注意点です。
それは、「別々の成果物を構成するものであっても、共通化できる成果物はひとまとめにしておく」ということです。

そのことによって、実際に作業を行う際に同じことを何度も行わなくて済み、効率的に作業できるためです。
例えば、夕食にチキンカレーと肉ジャガを作ることになったとします(現実にそのような組み合わせが嬉しいかどうかは別として)。ジャガイモとニンジンは同じ材料が使えるので、まとめて皮を剥いて切り分けてしまった方が効率的です。このような場合には、図4のように共通的なものを抜き出し、“共通材料”などとしてひとまとめにしておきます。

図4 共通化できる成果物をまとめた結果
hironaka_chart100720_4

注意点(2) どの単位で4ステップにするかを考えなければならない

2点目は、作業手順を洗い出す際の注意点です。
それは、必ずしも分解された成果物すべてに4ステップの作業が必要となる訳ではない、ということです。

例えば、夕食を作るときに「チェック/承認」をすべての成果物に対して行うと、「お義母さん、玉ネギの切り方はこれで大丈夫でしょうか?」「お義母さん、チキンの大きさはこれで良いでしょうか?」「お義母さん、ライスの量はこんなものでしょうか?」と、ほぼ嫌がらせみたいになってしまいます。通常は出来上がった料理単位ぐらいでOKを貰えば良いですよね。
4ステップを考えるときには、どの階層の成果物でどのステップが必要かを考慮しながら作業を洗い出す必要があるのです。

ハイブリッド式で作業リスト作るとこうなります

これらを踏まえ、ハイブリッド式の作業リストの作り方をまとめると次のような手順となります。
(1)プロジェクトの成果物を細分化する
(2) 共通化できる成果物をまとめる
(3)各成果物の作成に必要な作業を4ステップに沿って洗い出して肉付けする
(※ただしすべての成果物に4ステップの作業がある訳ではない)

それでは、実際の作業リストの例を図5で見てみることにしましょう。
なお、分かりやすくするために、この表では成果物を分割している箇所を青色、作業手順で分割している箇所を黄色に色分けしています。

図5 おでん屋台制作の作業リスト洗い出し例
hironaka_chart100720_5

成果物で分割したリストを主軸として、作業手順を4ステップで考えながら肉付けを行っている様子がお分かりいただけるのではいかと思います。

これで作業リストの解説は終わりとします。しかし、これからまだまだプロジェクトの計画作りは続きます!
次回もお楽しみに!!

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Profileプロフィール

弘中 伸典
弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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