前回に引き続き、リスクをテーマにプロジェクトの計画について考えてみます。
当然のことながらリスクは洗い出しただけでは意味がありません。今回は、識別されたリスクへの対策をどのように検討していくのか見ていきましょう。
リスクへの対策は「メリハリ」をつけて考える!
リスクへの対策を考えるにあたってまず踏まえておくべきことは、「多くの場合、リスクへの対策には時間やお金がかかる」ということです。
私は多くのプロジェクトの「リスク対策検討会議」のような場に出席してきましたが、洗い出されたすべてのリスクが絶対に顕在化しないよう、徹底した予防策を立てようとしているケースを良く見かけます。マジメにリスクへの対策を検討することは重要ですが、すべてのリスクを無効化しようとするあまり、膨大な期間とコストを必要とする対策を講じようとしているプロジェクトも少なくありません。
もちろん、プロジェクトの目標達成に大きなインパクトを及ぼす可能性が高いリスクには十分な対策を立てるべきですが、そうでもないリスクについては「いっそ対策を講じず、そのまま受け入れてしまった方がリーズナブル」という場合だってあるのです。
そのためには洗い出したリスクの「影響度」と「発生確率」を明確化し、それに応じてメリハリのある対策を検討することが重要です。
例えば、各リスクの影響度や発生確率を以下のように3段階で分類しておき、
・影響度: 大/中/小
・発生確率: 高/中/低
影響度が大きく、発生確率が高いリスクに対して優先的・重点的に対策を考えることによって、合理的に検討を行うことが可能になります。
実効性ある対策を立てる
上記のように影響度・発生確率を踏まえた上で、各リスクに対しては「予防策」と「発生時対策」の2種類の対策を検討することになります。
「予防策」・・・リスクが顕在化する前に行う対策(事前の対策)。
「発生時対策」・・・リスクが顕在化した後に行う対策(事後の対策)。
ということですが、いずれにおいても「実効性のある」対策を検討することが重要です。
「リスクが顕在化しないよう、全員で気を付ける」や、「リスクが顕在化したらみんなで頑張って影響を最小化する」などの漠然とした対策を立てても、いかにも意味がありませんよね。
リスクの対策においては、「誰が、いつ、何を、どこまで実施するか」という具体的な“アクション”を出来る限り明確にするべきです。特に、予防策に実効性を持たすためには、先に検討したプロジェクトのスケジュール表や体制図/役割分担表などの計画に「予防のためのアクション」を実際に組み込んでおかなければなりません。
例えば、「採用した製品にメンバーが不慣れで、組み立て作業に時間がかかり納期に間に合わない(可能性がある)」というリスクの予防策として、「製品の扱いに慣れるための練習期間を作業前に設ける」という対策をまず検討したとします。
その場合、スケジュール表に練習期間を実際に組み込んで見て、計画が成立するかを確認しておきます。もし練習期間を設けることでスケジュール上の大きな問題が生じる場合には、別の予防策を考えることになります(製品の扱いに詳しい専門家を外部から雇ってメンバーをサポートさせる、など)。
このように、リスクの予防策を実際に計画に反映することで実効性を確保することができるのです。
洗いだしたリスクと対策は一覧表にまとめておく
プロジェクト実施中も引き続きリスクは管理すべきものですから、計画段階におけるリスクの洗い出しと対策の検討結果は一覧表にまとめておき、後で使えるようにしておく必要があります。
図2にシンプルな形式の一覧表のイメージを挙げておきますので、参考にして見てください。
いかがでしたでしょうか。
これまで複数回に渡ってプロジェクトの計画書作りを考えてきましたが、しっかりとした計画を立てておくことがプロジェクト成功のためには一番の近道です。次回、もう一度計画書作りをまとめて“おさらい”しておきたいと思います。お楽しみに!