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【第26回】メンバーの状況を確認する

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スケジュール上にイナズマ線を引いて進み具合を可視化したり、発生した問題を一覧表で管理したり・・・。
プロジェクトマネジメントは「手順や道具」の専門的な話題が中心になりがちですが、あくまでプロジェクトは“人”が行うもの、成功の原動力はやはりメンバーにあると言えるでしょう。従って、プロジェクトマネジャーはメンバーの状況にも常に気を配っておくべきですし、まさにPMの腕の見せ所と言っても過言ではないでしょう。

とは言え、この部分はPM自身の人間性、ヒューマンスキルによるところも大きですし、また、組織や人をマネジメントする方法や心構えなどを解説する書籍(例えば、「管理職入門」とか「部下のやる気を引き出す方法」など)は数多くありますから、今回は「プロジェクトにおいて、PMは何を見ておくべきか」という視点で全体を見渡していくことにしましょう。

個々のメンバーのこと

まず、PMはプロジェクトに参加している個々のメンバーの状況を確認しておかなければなりません。この時、見るべき観点は以下の3点です。

(1) パフォーマンスと負荷・健康状態
(2) スキル
(3) モチベーションなどのメンタル面

基本となるのは、各メンバーのパフォーマンス(生産性)の確認です。パフォーマンスとは、一定の時間の中でどれだけ成果(量と質)を生み出せるかということです。
パフォーマンスに問題があると、多くの場合はスケジュールの遅延(例えば、あるメンバーの作業がいつも遅れる)や品質上の問題(あるメンバーの作った成果物に不良が多い)といった事象として表面化するため、そこからPMは問題を把握して、対策を講じることになります。

ただし、「毎日夜中まで残業してなんとか成果を出している」ようなメンバーは、なかなかパフォーマンスの問題が表面化しない場合もあります。もちろん、そのメンバーはやがて疲弊し、ダウンしてしまうといった危険性がありますので、メンバーの体調管理の面から見ても、そのような過負荷な状態があれば早期に発見して是正しなければなりません。
そのためには、メンバーの時間の使い方を正確に把握しておくことが必要です。勤務時間とその中でプロジェクトの作業に使った時間を管理し定期的に確認しておくことはもちろん、「あのメンバー最近顔色が悪いな」とか「なんだか元気がないな」といった、メンバーの表情や振る舞いにも注意しておくことが重要になります。

特定のメンバーのパフォーマンスに問題がある場合、いくつかの理由が想定されます。

指示や情報が行き届いていない、仕事に必要なツールや環境が不十分など挙げられますが、もし「手順や道具」に問題がないとすれば、スキルが不足していることが考えられます。
そのような場合、計画を見なおして作業の分担や作業期間を調整するか、教育プログラムなどによってメンバーのスキル向上を図ることを検討します。ある程度の期間を通じて行うプロジェクトであれば、プロジェクトの仕事の経験によってメンバーの育成を図っていくことも考えるべきです。

また、もしかしたらパフォーマンスが悪い原因はメンバーのモチベーション(やる気)や、精神衛生的な問題にあるかも知れません。そのような状況にも常に目を配り、メンタル上の問題やその予兆があればすぐに対処する必要があります。
もちろん、プロジェクトメンバーのモチベーションを上げるということはなかなか難しいことです。しかし、少なくともPMのプロジェクトマネジメントがまずくて自らがメンバーのモチベーションを下げてしまう原因になること、例えば、プロジェクトの段取りが悪くてメンバーの作業が無駄になるとか、コミュニケーション方法に問題があって不正確な情報により誤った判断してしまうといったことが起こらないよう、まずはPM自身が十分に注意しなければなりません。

メンバー間のこと

次に、プロジェクトメンバー間の関係についてです。
メンバー同士が同じ方向性を共有できるよう、プロジェクトの目的や目標をはっきりさせること、関係構築のためのコミュニケーションの機会や場所、仕組みを設けるなど、やるべきことはたくさんあるのですが、特に留意すべきなのは「対立のマネジメント」と、「オープンな雰囲気作り」です。

プロジェクトには多様なメンバーが参加しています。そうなるとメンバー間で意見が対立することがしばしば起こります(むしろ、対立が発生しないプロジェクトは不健全であると言えます)。
PMはそのような状況に介入し、対立を解消しなければなりません。PMが強制的にどちらかの意見に決定してしまう、両方の意見の中間地点を取って妥協する、結論を棚上げするなど様々な方法がありますが、最も望ましい方法は、双方の意見を徹底的に対決させ、両者が「目的達成のためにそれがベストの方法」であると納得できる解を見つけ出すことです。
そのためには、意見の相違点やその原因・背景を明確化し、冷静・論理的かつ時に柔軟に視点を変えながら議論をリードしなければなりません。このような対立の解消は非常に労力を必要としますが、PMの重要な役割の一つと言えるでしょう。

また、そのような対立が「表面化すること」、そして正確な情報・事実に基づいてベストな解を見つけ出すためには、プロジェクトが「オープンな雰囲気」にあることが前提となります。オープンな雰囲気とは、メンバーが何らかの懸念や疑問を抱いた時、PMや周囲のメンバーに率直に相談したり意見を出したりしようとする意識を持っているということです。
例えば、前回も書いたようにプロジェクトの問題を個人に押し付けて責めたり、メンバーからの意見に真剣に耳を傾けないなどの態度は、情報が隠されたり伝わるのが遅くなったりする要因になります。
別に「甘くなれ!」ということではありません。プロジェクトは未知への挑戦ですから、様々な問題や障害が起こることはある意味必然のことと考え、それをプロジェクト全体として乗り越えていくという思考回路をPM自身が持つことが重要なのです。

他のステークホルダーのこと

最後は、プロジェクトメンバー以外のステークホルダー(利害関係者)との関係です。
PMには、すべてのステークホルダーの満足度を確保することが求められますから、例えばプロジェクトのスポンサーやプ母体となっている組織、成果の受取手など、プロジェクトにかかわるすべての関係者の満足度に敏感でなければなりません。

厄介なのは、プロジェクトメンバーは同じ目標を共有できるのですが、他のステークホルダーはそれぞれ異なる期待をプロジェクトに寄せている場合があるということです。ステークホルダー間で相反する利害関係を持っている場合も多く、複雑な交渉や調整が必要になります。そのため、PMはステークホルダーの要求や特性、プロジェクトへの影響、人間関係などをしっかりと把握しておくことが必須と言えるでしょう。

今回はかなり駆け足になってしまいましたが、PMがいかに様々な状況に気を配りながらプロジェクトをマネジメントすべきか、全体を概観していただけたのではないでしょうか。

次回もお楽しみに!

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Profileプロフィール

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弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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