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【第27回】品質の状況を確認する

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今回は品質の確認についてです。
品質の確認とは、すなわち“段取り”の時点で立てた品質目標の達成度合いを把握して、必要な対応を都度講じることであり、プロジェクトにおいて非常に重要な活動になります。
「品質・・・なんだか難しそう・・・」と感じる方もいらっしゃるかも知れません。確かにこれまで数多くの研究や経験によって知識の蓄積がなされている専門的な領域ではありますが、ここはあまり構えずに基本を考えていきましょう。

プロジェクトにおける品質の考え方

“品質”のイメージと言えば、製品の生産における検査工程を思い浮かべる方も多いでしょう。ラインを流れてくる製品の重量や形状を装置で測定し、不良品を“ピッ”と弾くという、テレビの工場見学番組などで良く見る大量生産のあの光景ですね。
同じ製品を繰り返し大量に生産する場合には、歩留まり率(ぶどまりりつ)、つまり作られた製品数のうちどの程度の比率で“良品”が生産できたのかが重視されます。そこでは、この歩留まり率を上げるための長期的な改良・改善の取り組みが重要になります。

一方、プロジェクトの中では同じ完成品を繰り返し大量に作ることはしません。世界にひとつだけのオーダーメイド品を作っているようなもので、不良品だからと言って完成した成果物を“ピッ”と弾くわけにはいきません。品質上の問題が発見された場合、基本的に修正や作り直しの作業が必要になり、これはプロジェクトが先に進んでから見つかるほど大掛かりなものとなります。
従って、プロジェクトにおいては、その初期段階から丹念に品質状況を確認し、早期に問題を発見して是正することが非常に大切となるのです。

どのように品質上の問題点を見つけるのか

品質上の問題とは、つまり品質目標を達成できない、または達成できそうにない可能性がある状況のことです。
これをプロジェクトの初期状態から確認することはなかなか難しいことで、現在の状況が最終的な品質目標に対してどの程度影響を与えるのか因果関係を予測しながら対応していかなければならず、ある意味“手探り”の部分もでてきます。
最も効果的なのは、過去の類似プロジェクトの実績・知見をもとに、組織として整備されている「品質を確認するための活動体系や基準」を活用することです。また、経験豊富なメンバーがいれば、そのような因果関係も見通すことができるでしょう。
もしそのような手段が現実的ではない場合であっても、例えば次のような工夫が考えられます。

(1) 事前に試行する
小さいプロジェクトを試しに実施し、品質上の問題がどのように起こるのか確認した上で本格的なプロジェクトを開始します。例えば50人分のカレーを作る前に、1人分のカレーを作ってみます。規模が大きいことに起因する問題(例えば、大鍋で50人分作ると熱が均一に通らないなど)までは分かりませんが、少なくとも材料の良し悪しや調理方法が最終的な品質にどのように影響するかは確認することができます。

(2) 多くの確認のポイントと修正の時間を用意しておく
因果関係が良く分からない場合は、安全策として品質を確認するためのポイントを細かく置き、また修正のための時間もあらかじめスケジュール上に用意しておきます。材料の良し悪し、切り方、カレーの味をこまめにチェックしながら都度調整を行い、徐々に最終的な品質目標に近づけていきます。

(3) データを相対的に比較して突出した箇所を掘り下げる
組織としての品質活動の体系や基準値(人参の皮は○mm~○mmの間でむくと美味しいなど)が定義されていなくても、例えばAさんがむいた皮は2mm、Bさんも2mm、しかしCさんは5mmといった状況であれば、Cさんのむきかたや人参には品質上の問題が潜んでいる可能性があります。なぜ5mmなのか理由を掘り下げることで、「実は私の担当する人参はなぜか固くて・・・」ということが分かるかも知れません。

やっぱりコミュニケーションやモチベーションも重要

プロジェクトにおける品質は、上記のような様々な工夫によって確保していくことになるのですが、やはりその根底にはメンバー間のコミュニケーションやモチベーションの高さがあります。
「うーん、もしかしたらこれは品質上マズイかも・・・」と言うメンバーのちょっとした気付きが放置されるか、それとも自発的に共有されるか、ここが大きな違いを生むことになります。特にまずいのが、メンバーが「自分はこの仕事だけやっていれば良く、余計なことはやりません」と責任を限定してしまう状態です。
「なぜこのプロジェクトを行うのか」という目的意識や意義をメンバーと共有し、また問題の原因を個人に押し付けたりせずにオープンに情報共有できる雰囲気を作ること、まずはここが品質目標を達成するためのスタート地点と言えるのではないでしょうか。

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Profileプロフィール

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弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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