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人間力強化シリーズ その2 ~情の重要性~

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人の中心は、情であり良い結果を生むためには、極めて重要である。
情緒とは、辞書によると「事に触れて起こるさまざまな微妙な感情」とあり、情操とは、「美しいもの、優れたものに接して感動する情感豊かな心。道徳的、芸術的、宗教的など社会的価値をもった複雑な感情」とある。

私は、「情のプロジェクト力学」(実業之日本社、2008年)を上梓した。この本を書いた理由の一つは、情とエンジニアリングのバランスが、重要であるからだ。いわゆる頭で考えるビジネスのやり方(理屈)が、先行し、人の面(情)が不足していると考えているからだ。

人が、何かを創造する場合、初めに「想い」が、存在する筈だ。この「想い」は、見えないので、さまざまな人が、さまざまな方法で感じている。岡潔(後述)によると智力は、感覚、知性、情緒の順で磨かれていくもので、知性を使い頭で分かるレベルと情緒でもって、つまり、心で分かるレベルには、大きな違いがある。私が、言いたいことは、人は、何かを創りあげようとする時、心から欲するということが、もっとも大切で、この情緒が、大きな力となる。

最近、私は、情緒の目で、ビジネスを見ている。例えば、失敗しそうなプロジェクトやうまくいっていないビジネスに、遭遇した場合、関係者からは、うまくいかない理屈や不満が、数多く飛び出してくる。いいかえれば、「頭」で考えているからだ。また、この頭でばかり考えていては、状況が是正されることはめったにない。「心」の目で見てみよう。本当に何を望んでいるか「情」でもって見通すのだ。「心」の目で照らし、どのようになることが望ましいのか。自分たちが何を望んでいるかを確信する。何が悪かったのか、誰が悪いかを明らかにしたところで、何も生まれまい。当初の想いを情の目で見通し、どうすれば成功できるかを前向きに「情」で考える。

 さて、どのように情は、磨いていったらよいのだろうか?

情には、感(直感)が関係している。まず、第一の直感は、自明のことを自明とみるのが、この第一の直感である。冷たいとか熱いとかを知る感覚が、この直感で、信じるという働きが、ここから生ずる。人には、この感覚があるがゆえに熱いものは熱いと確信できる。第二の直感は、真善美の元になる直感で、芸術・学問の基礎となり、いいものはいい、わるいものはわるいと判断できる。美しさや善悪を感じるのがこの直感である。第三の直感は、妙感察知で、みられる自分とみる自分の二つに分けて感じることができる感覚である。これがないと観察も批判もできない。また、この感覚があるので、直感から直ちに行動することが可能になる。

いずれにせよ、この感覚は、子供のころからゆっくりと養わなければならない。本物と触れ合い、深く考えることを繰り返し、時間をかけて人の心は成長する。心の目となる直感は、曇りや汚れがあってはならない。大人になってからでも遅くはないが、手段ややり方ばかり教え過ぎては、自分の感覚は、磨かれないだろう。大人でも子供でも最も大切にしなければならない感覚は、「自明のことを自明とみる力」である。これがないと判断の基礎となる確信が持てない。確信がないところに独自の意見や価値観などありえない。この判断がないまま、仕事を進めるなどありえないことなのであるが、現実には、やり方だけ聞いて、確信のないまま仕事を進めている。実在感とか肯定感などが、あやふやなまま行動している姿をよく見かける。

曇った感覚のまま見えるものは、手近な外界や目に映る物や人で私欲の対象になる金銭・権力が、価値基準になる。また、人心の機微やものの(真実が真実として)欠点ばかりが目についてしまう。これは、曇りのない心の目で見てはじめて自明のことは自明に見えるのだ。確信の基礎となる智力を中心において直観力を成長させることが、本当の成長であるといえる。さまざまな経験をして智力を伸ばすことは、自分の感覚を信じて直感力を第一、第二、第三へと磨いていくことである。

 そして、情緒、情操が、人間力の核になっていく。

参考文献:春宵十話(岡 潔、数学者、1963.2月毎日新聞)

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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