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日印の架け橋のためのジャパンビジネス成功セミナー(プネ大学)日本の文化 その4

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今回は、近代から現代の日本について語ろう
          
日本のグローバル化の進展
さて日本は、グローバル化をどのように進展させてきたのであろうか。第二次世界大戦後の日本について考えてみよう。

現在の日本の産業の実力の源泉は、戦後の高度成長時代にある。ソニー、キヤノン、トヨタ、ホンダなどの大企業が、グローバル市場で成功してきた。しかし、その特徴は、単に大企業が強かったわけではない。日本には、戦前から中小企業が多く、日本のインフラを支えている。日本の中小企業は、大企業ではできない高度な技術力、しぶとさを持っている。この両者が、力を合わせて、相互に努力し発展してきたのだ。この強さを特徴づける活動としてKAIZEN:改善、QC/TQC活動があげられる。

改善は、単なる技術的活動ではない。日本が古来から持っている“ものづくり”や“もったいない”などの文化的な風土が、製造の現場に根付いたものだ。結果として日本の製造技術そのものも高度であるが、基礎技術開発や継続的な改善活動の風土、基盤がしっかりしているのは、文化的な側面が大いに影響していると私は、考えている。また、強い競争力を生んだ要因の一つとして、日本の教育システムがある。

日本には、江戸時代から寺子屋と呼ばれる一般の市民向けの教育システムがあった。明治の文明開化後、西洋の学校制度を採り入れ、特に、全人教育、底上げ教育に長所がある制度を発展させ産業に貢献してきた。残念ながら現在の日本は教育システムが上手くいっていない。過去の大学での基礎研究、高度な技術開発は強みであり、基礎から実業まで幅広く学習する。このような背景から1960年代から90年代の初めまで製造業を中心に日本は、大きな経済発展を遂げた。

日本の成功企業の特徴
日本の成功企業の特徴をまとめてみよう。以下の強みが、かみ合っているとき日本の産業は、グローバルでの競争力を持つ。日本の成功企業の強みをリストアップすると以下の5点になる。

1.長期的な視野でじっくり経営を行う
2.人の育成に力を入れている
3.しぶとい、あきらめない日本的なチャレンジ精神を持つ
4.継続的な改善、品質管理、ブランド力、サービス力が利いている
5.チームで力を合わせて努力する

チーム力は、企業内のチームを越えて系列会社、協力会社まで含み、グループとして総合力を発揮する。言い換えれば、総合分業力が強みである。また、産業分野も近年、製造業だけではなく、流通サービスや日本文化を基礎としたアミューズメントやエンターテイメントなども強みを発揮し、あらゆる分野に広がりを見せている。

ともあれ、製造業は、現在でも世界的な有名企業が多く強い。近年、流通・サービス業も質が世界的に評価され強力になってきている。COOL JAPAN(日本文化を基礎としたもの)も話題性がある。さらに電力、水道、ガス、通信、鉄道など社会インフラの仕組みは、エコや安全安心の観点から高い技術と評価を得てきている。特にサービスの質、安全管理、長期の安定した運用技術などが強い。このことは、何を意味しているのだろうか? 私は、考えてみた。

日本の産業の最大の特徴は、見えている技術の高さに、日本文化に由来する見えない質が、織り込まれていると私は、確信している。技術に文化の隠し味が利いているということだ。製品やサービスが普及するにつれて、この独自の文化性に(隠し味に)世界の顧客が気付き始めたのだ。私が、社会人になった30年ほど前、先輩は、私に「日本は、ハードは強いが、ソフトは、弱い。これからは、ソフトの時代なので、ソフトに力を入れよう!」と教えてくれた。今、このことを振り返ってみると、もともと、当時、私たちが言っていたソフトの本当の元(源泉)を、日本は、ちゃんと持っていたのだ。これが、日本製品、サービスの文化的な側面である。これらの文化面は、製品ばかりでなく、日本人の行動特性に現れている。

日本の社会人
日本文化を少し理解すると、日本の社会人の行動について特徴づけている部分が見えてくる。海外から来た人に、日本の社会人は、なぜ、以下に説明するような傾向があるのかを尋ねられたときに文化的な原点を教えると納得してもらえる。人々は、事象の違いは、理解できないことがあるが、文化の違いに由来することは納得できるはずだ。違いが好きか嫌いかは別の問題として世界には、異なる文化があることだけは自明であるからだ。話を日本の社会人に戻す。
日本の社会人には以下のような傾向があると私は思う。

1.同じ企業に長く勤める
2.いろいろな部署を経験
3.専門職(エンジニアの質は高い、協力し合い実力を伸ばす)
4.愛社精神、同期入社
5.会社が支援する様々な制度(福利厚生、教育、住宅、など)
6.社外の業界団体
7.年功序列、退職後の集まりなど
8.会社は、家族(家庭にまで大きな影響力、会社の地域貢献など)

まとめれば、会社は、単に収入を得る場ではなく、社会への参加という意義があり、人生の道場であるということだろう。

日本の社会人の特徴は、1980年代までは、実によく機能していた。しかし、今は、日本文化も変化しつつある。また、社会構造も変化したためにうまく働かなくなってしまった。一定の日本文化を維持しつつ、構造変化に適用させなければならない。

日本の社会が直面している課題
日本は、大きくかじを取りなおさなければならない時期を迎えている。日本が直面している構造変化は、これまでの成長が前提のシステムでは機能しない。日本の良い面を生かしつつ、大胆な変革をはかる必要がある。今までの仕組みが上手く行きすぎたために、異なる方向に向かう勇気も知恵も浮かばない事態になっている。頭が混乱し、体も思うように動かないのだ。課題は、明らかで見えているのに、意思決定力、決断力が低下してしまった。

1.政治が機能不全のために少子高齢化、年金問題など先送りされ解消しない。
2.円高、長引く低成長、企業競争力低下
3.教育システムに課題(東大の秋入試移行など人材のグローバル化に向けた教育の変革が急務)
4.グローバル化により新たな競争力の創出(製造業、流通サービス業、社会インフラの輸出)
5.グローバルリソースの活用

などの問題に加えて、2011年3月11日に大震災が発生した。日本では3.11震災時にショックで色が変わってしまったように見えた。このショックをきっかけに新たな日本創り活動が始まることを私は、期待している。原発、エネルギー問題、防災、エコなどに本格的に取り組むことで新たな産業、文化が芽生える。技術もあるが、我慢強く、しぶといのも日本の長所である。

日本で外国人が成功するためには
これまで、様々なことを説明してきた。日本で海外の人が成功するためには、以下のことを是非、理解してほしいと私は願っている。日本は、海外の人とコミュニケーション、ビジネスなしでは将来はない。日本とのビジネスで成功する外国人が増えてこそ双方の発展があると私は思う。見える部分の日本は、ある程度海外の人に理解してもらっていると私は、考えている。見えない部分の日本も日本であり、これが、文化と関係しているということだ。

詳しくは、次回の話題とするが、次の点を理解して、体験することで成功への道が開けると私は、考えている。

一つ目は、日本の競争力の源泉を理解して欲しい。日本の強み、良いところをもっと知ること。
二つ目は、世界には、いろいろなリーダーシップの形があるが、日本的リーダーシップやマネジメントも成功例の一つである。
三点目は、日本でのコミュニケーション力を上げる方法を知り、あきらめずに実践すること。
この点を克服できれば、良い結果を得られると考えている。

次回は、いよいよ、日本で成功するための要点をまとめることにする。

つづく

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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