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PMOが黒子となり、プロジェクトを支え、人を育成する

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 システム開発プロジェクトにおいて、プロジェクト・マネジメントの重要性は、今や完全に浸透していると感じています。その重要なマネジメントを真に実行するために、人材育成のためのトレーニングを計画的に実施したり、プロジェクトやPMをサポートするPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)を設置するなど、各企業の事情にあった形で取り組んでいます。
 しかし未だに、プロジェクトが失敗する事例を良く目にします。

 そもそもプロジェクトの前提となる企画において、目的やスコープが曖昧であったり、もしくは明確であっても、納期、費用、体制に無理があることが大きな要因となっています。

 ただ今回のブログでは、プロジェクト・マネジメントのみにフォーカスを当て、特にPMOがプロジェクトに与える効果について、お伝えします。

 なぜならば、最近、プロジェクトマネジメント力の低下について、良くお客様より耳にすることが多くなってきたためです。

 その背景としては、システム全体のライフサイクルの実務経験が豊富な方は高年齢化し、現場で指揮をするよりも管理職的な活動が増えてきていること。その一方で、それよりも若年層の方々は、特に上流工程における開発経験と運用経験に乏しく、システムのライフサイクル全体を見通したプロジェクトの計画やコントロールするための経験が不足していることが一因として挙げられると感じています。

 さて、まずそもそもPMOとはどのような組織・チームなのでしょうか?

 私は、次のように捉えています。

◇常に複数のプロジェクトが実施されているような組織において、プロジェクトマネジメントの視点から各プロジェクトを横断的に支援する組織・チーム。
 もしくは特定のプロジェクト内において、PMを支援するチーム。
◇組織としてのプロジェクトマネジメント力(成熟度)を向上させるため、全体的・継続的な活動を推進するために設置される、専任の部門またはチーム。
◇そしてPMOの目的は、組織としての「プロジェクトの成功確率」を高めること。

PMOとは?

 そのPMOは、大きく2種類に分かれます。

◇組織内PMO
 組織内で実施されるプロジェクトを横断的に支援し、また組織としてのプロジェクトマネジメントの底上げを推進するPMO。
◇プロジェクト内PMO
 個々のプロジェクトにけるマネジメントを支援するために、特に大規模なプロジェクトなどにおいて、適宜設置されるPMO。主にPMの活動を支援する。

 その他、ある戦略的な目的の達成のために実施される一連のプロジェクト群(プログラム)を統括的に管理するため設置されるPMOもあります。

PMOの位置づけ

 そのようなPMOが担う機能としては、次のようなことを挙げることができます。

1.プロジェクト支援
(1)プロジェクトのレビューと支援
 a.各プロジェクトの状況把握
 b.プロジェクトのリスク・問題洗い出しと解決の支援
   (アドバイス、情報提供、プロジェクト間の調整等)
 c.部門管理者へのPJ状況報告、部門としての対応依頼・提案
 d.プロジェクトからのスポット的要請への対応
   (問合せ対応、PM駆け込み寺的役割等)
(2)PMリソース管理
 a.PM人材のプールとプロジェクトへのアサイン
 b.PM人材の発掘・供給

2.組織成熟度向上
(1)標準類整備
 a.プロジェクトマネジメントプロセス、システム開発プロセス等の標準策定
(2)PM育成
 a.PM育成プログラムの企画、実施
 b.社内認定制度の整備、職種としてのPMの確立
 c.若手PMへのメンタリング
 d.外部研修コースや教材の紹介
(3)啓蒙活動
 a.社内コミュニティの設立、運営(研究会、勉強会など)
 b.講演会の開催、人材交流
 c.社内メルマガ等による情報発信
(4)ノウハウの蓄積
 a.成功パターン、失敗パターンの共有、勉強会
 b.生産性、品質等のデータ蓄積と提供
 c.プロジェクトドキュメント共有
(5)ツール整備
 a.スケジューラや情報共有、テスト管理ツール等の導入

 これらの機能を、下図のようなイメージで取り組むのが、PMO活動であると考えております。

PMO活動イメージ

 しかし実際の活動は、「プロジェクトのレビューと支援」や「標準類整備」、「ツール整備」に傾注することが多く、企業にとって最も大切な成果の1つである財産である人材の育成、つまり「PM育成」の観点は、なかなか実行できていないと感じています。

 「PM育成」が出来ていないと、勘が良い出来る人が勝手に伸びるだけで、その方がいなくなってしまうと途端にマネジメント力は低下してしまいます。

 近年は、プロジェクトを遂行するために、必要十分なスキルと要員を確保することが出来ていないことが多いため、特にPMを担う中間管理職の方は、目先の仕事をこなすだけで精一杯、なかなか人材育成に気を配る気持ちのゆとりがありません。

 であるからこそPMOが黒子となり、プロジェクトの成功に貢献するための支援活動をするだけでなく、「PM育成」の観点で、啓蒙や育成のための支援活動を積極的に行うことが、今こそ求められてきているのではないか?

 そのように感じております。

 皆さまの職場はいかがでしょうか?

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竹内博樹
1991年 筑波大学卒業後、三和銀行のシステム子会社である三和システム開発株式会社(現、三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社)入社。同社にて銀行業務のリテール、法人、国際の各分野において、大規模プロジェクトにおける企画・設計・開発に、主にプロジェクトマネジメントを実行するマネージャとして携わる。また開発後の保守にも従事するなど、幅広い業務でマネージャとして活躍。2004年より当社にて、大規模プロジェクトにおけるPMOの運営およびプロジェクトマネジメント支援や、IT部門の組織改革等、幅広くコンサルティングを手がける。 保有資格:情報処理 プロジェクトマネージャ、PMPほか。PMI会員、PM学会会員。

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