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企業内情報生態系(その1)

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今回のブログは、企業システム全体を見渡した際に「いったいどんな種類のデータベースが存在し、それぞれがどんな役割を果たすのか」について、データベースを生き物に例えて情報生態系というテーマで語ってみたい。内容が盛りだくさんになる可能性があるので数回に分けて連載して行くことにする。本シリーズでは、これまで“基幹系システム“に着目したテーマが多かったが、企業システム全体の情報処理において、情報系システムの存在を抜きに考えるわけには行かない。企業活動のPDCAサイクルは、基幹系システムで捕捉されたオペレーショナルデータを情報系システムで再利用することで初めて成立する。そういった意味で、どちらも企業活動にとっては不可欠な存在である。私の知る限り、情報系システムはDWH、BIツールとともに1990年代後半に一度、大ブレークしたものの、2000年代では基幹系ERPの影に隠れ、近年ビッグデータとともに再び脚光を浴びてきた。やはり“情報は再利用してなんぼのもの“ということである。残念ながら、この点で米国は日本の数年先を行っている。

情報生態系

本題の企業内情報生態系であるが、これはデータベースには様々な種類があり用途に応じて使い分ける必要があるという考えに基づいている。私がこれに確信を得たのはDWHの生みの親であるビル・インモンの1998年の著書「コーポレート・インフォーメーション・ファクトリー」に出会ってからである。この考えの反対側には、「オペレーショナルデータストア(ODS)1つあれば、強力なCPUパワーと巨大なメモリーがあれば全ての情報ニーズに応えられる」というものである。この理屈が成り立たないのは、”部門内の数万個の未整理な文書ファイルをフラットな1ホルダーに格納し、検索エンジン1つで管理するととても不便である”といった例と同類である

情報生態系について、情報のフローに沿ったストックヤードとその主な利用者を図示したものが図1の「企業内情報生態系マップ」である。マップは、基幹系システムA、情報系基盤B、目的別情報系Cの大きく3つのゾーンに分かれている。画面上部にはマスタが配置されており、情報系基盤では履歴が必要となる事を示している(これを避けるにはイベント側にマスタのタイムスタンプを持つ)。そして中央から下半分が生態系の中核に位置するイベントデータの変遷であり、AゾーンのODS(Operational Data Store)からBゾーンのCentral-DWH、CゾーンのData-Martへとデータが変遷する様が見てとれる。そしてそれぞれのゾーン内のデータベースは異なる役割に応じた構造となっている。ODSはイベントデータのリアルタイム収集が役割であり、その構造は“多数のデータエントリーの排他制御とデータ整合性の維持”に力点が置かれている。次にCentral-DWHは全社的な情報分析へのデータ供給源が役割であり、その構造は“大量の時系列情報から様々な条件に合致したデータをいかに迅速に取り出せるか”に力点が置かれている。そして最下流のData-Martの役割は個別業務の目的に応じた情報分析であり、多面的な分析軸の瞬時の交換等、非定型な分析に応えられる構造が特徴である。

さらにマップの下段には、最近話題を呼んでいる”非構造化データ”を扱った情報系システムが描かれている。ハード・ソフトの進化によって従来では取り扱えなかった非構造化データを分析対象に出来ることで、意思決定業務に新たなパラダイムが出現した。各種センサーやソーシャルメディアから収集された非構造化データを、固定的スキーマを持たないNON-SQLデータベース等にBIG-DATAとして蓄積し、今までにない情報分析をしようという”新種”である。

このように、企業内には目的に応じた異なるデータベースが生息する。各種のデータベース間は、必要なタイミングでデータ同期がなされ、それぞれの役割をきちんとこなすことで、企業内情報生態系はバランス良く保たれる。ところで、「情報系システムの整備は基幹系システムの再構築が完成した後で」とお考えの企業の方、コストとマンパワーが許せば、ぜひとも基幹系の完成を待たずとも着手することをお勧めする。なぜなら企業システムの良し悪しは全体の成熟レベルで評価されるので。次回以降のブログでは、この情報生態系の特徴についてさらに詳しく掘り下げてみたい。

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Profileプロフィール

中山 嘉之
中山 嘉之
1982年より協和発酵工業(現、協和発酵キリン)にて、社内システムの構築に携わる。メインフレーム~オープンへとITが変遷する中、DBモデラー兼PMを担い、2013年にエンタープライズ・データHubを中核とする疎結合アーキテクチャの完成に至る。2013年1月より(株)アイ・ティ・イノベーションにてコンサルタントを務める。

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