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イノベーションの潮時

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過去を振り返ると企業活動におけるITの役割は少なからず変化を遂げている。その変化は新たな情報技術(IT)の登場から数年のタイムラグを経て必ず到来し、あらゆる側面でビジネス活動のケーパビリティ*を高めてきた。図1に過去30年のIT技術の変遷とそれがビジネスにもたらした影響を、大雑把にとまとめてみた。

イノベーションの潮時ご覧の通り世の中全体で見ると10数年周期で主流となるプラットフォームや技術は入れ替わっているものの、古いものはかなりの年月残り続け、その上に新しいものが被って登場してくるという事である。これについて皆さんの社内情報システムについて考えるとどうであろうか。いったいどのタイミングで新しいプラットフォームへの転換を図って行くのが良いか?と悩ましいのではないだろうか。

社内ITアーキテクト(若しくは社外アドバイザー)にとって、企業が新たなIT活用へ転換するイノベーションの“潮時”*を見極めることは重要な役目である。そこではもちろん、技術の本流と傍流の目利きをする必要はあるが、日本の場合は幸か不幸か欧米の先駆例をウオッチすることができるので見当は比較的付き易い。しかし、そのタイミングは誰も教えてはくれない。欧米で取り入れられても日本特有の問題もあるかもしれない。また、社内の経営層も説得しなければならないだろう。それでも、潮時を逃さない事は極めて重要である。

図1における“ビジネスへの影響”のところを見ていただきたい。過去の幾度かの大きなイノベーションを経て今のビジネス環境に至っていることが見てとれる。つまり、未だ黎明期にある情報技術の今後の発展が明らかである以上、今後もイノベーションの潮目を適確に捉え続けて行くことがIT組織のミッションなのである。先日あるマスコミのインタビューで、前職在籍会社のシステム部長が「社内情報システムにとって“変わらない事が最大のリスク”である」と語っていた。まさにその通りである。その為には、あらゆる抵抗勢力と戦うことは当たり前なのである。抵抗勢力にはレガシーを生業としているITベンダーや、レガシーを担当する社内情報システム部員までも含まれる。

今まさに我々は図1のDゾーン(2010年代)の真っ只中にいる。ご覧の通り、モバイル、クラウド、BIGデータ、IoTと新たなイノベーションの種が目白押しである。そして、この波は間違いなく、1980年代後半に訪れたPC,LAN,C/Sを初めとする分散コンピューティング以来のビッグウエーブだと思われる。ホストコンピュータ全盛期の1992年当時、向こう5年間の綿密なダウンサイジング計画を立案する1年間のプロジェクトを起こしたことを今振り返ると、まさにその時が潮時であったのだと思う。当時30代半ばの私はワクワクしてイノベーションの企画に取り組んだものだ。

そして次なるイノベーションの潮時はまさに“今”である。社内情報システム部門は、抵抗勢力と大いに戦って新しいプラットフォームへの転換を果たし、今こそビジネスイノベーションに貢献するチャンスである。もしもこのタイミングを逃したならば、ユーザ部門主導で無秩序な新技術導入がなされ、社内システムの統制を欠く結果となるであろう。さらにITベンダーの販売攻勢がそれを加速する事は間違いない。心ないマスコミに“情シス不要論”を言わせないように、社内情報システム部門は社内システム企画のリーダーシップを取り戻すとともに、これを契機に守り一辺倒から攻めのIT戦略にシフトして行きたいものである。

※ケーパビリティ:企業が持つ組織的な能力。例としては、スピード、効率性、高品質など。オペレーションの柱となる要素で、競争上の優位性の源泉となりうる。

※潮時:物事を始めたり終えたりするのに適当な時機の事。潮の満ち引きから来ている。(今どきのよい表現が見つからなかったので、やや古い言葉を用いた)

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中山 嘉之
1982年より協和発酵工業(現、協和発酵キリン)にて、社内システムの構築に携わる。メインフレーム~オープンへとITが変遷する中、DBモデラー兼PMを担い、2013年にエンタープライズ・データHubを中核とする疎結合アーキテクチャの完成に至る。2013年1月よりアイ・ティ・イノベーションにてコンサルタントを務める。【著書】「システム構築の大前提 ― ITアーキテクチャのセオリー」(リックテレコム)

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