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【第67回】指示が変わるPMへの対応法~コミュニケーションの構造

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さて、前回は議事録を再現芸術としてとらえてみました。会議での発言内容を、その背景にあるプロジェクト状況などから深読みして、発言の真意を議事録に記すという感覚です。

関連して、今回はプロジェクト内のコミュニケーション、特に上位者からの指示の受け取り方について考察します。

 

【 どうして昨日と違う指示を出すんですか! 】

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当ブログ「新感覚!プロジェクトマネジメント」の2015年アクセス数No1は、【第47回】どっちの契約でショー!「一括請負」vs「準委任」 でした。どうやらP子さんが登場するとアクセス数が多くなる傾向があるようなので、今回も登場してもらいます。(※1)

プロジェクトマネジメント研修を受けたばかりの新人P子さんは、新年そうそう機嫌が悪いようです。

< 新人P子さん > : 「なんで、昨日と違う指示を出すんですか!昨日は、『A4・ツーアップ・モノクロ・両面・左上ホチキス止め・20部』って言ったじゃないですか!それがなんで、『ツーアップ無し・カラー』に変わるんですか!もう印刷しちゃったし、紙の無駄だからこのままで会議やってくださいよ!」
(何よ、昨日は、あんたの指示があいまいだからちゃんと口頭で全部確認したじゃないの!)=P子さんの心の声

< ベテランPMのM男氏 > : 「うるさい!少しぐらい紙が無駄になったって、会議をよりスムーズに運営する方が大事なのはわかるじゃろ!今日は社長と取締役が参加するから、少しでも資料が見やすいようにしたいだけじゃ!」
(まったく、最近の若いやつは反抗的で困る。昨日は、ばたばたしていたから、新人などにかまっている暇などなかったわ!)=M男氏の心の声

< 新人P子さん > : 「そんなに大事な会議だったら、最初からそう伝えてくれれば良いじゃないですか!もう時間も無いし、今回はやっときますけど、次からはもっと明確に指示してくださいよ!」
(こんなPMだから、いつもプロジェクトはうまく行かないんだわ。もっとクレバーでイケメンPMさんと仕事したいなあ)=P子さんの心の声

< ベテランPMのM男氏 > : 「わかった、わかった。とりあえず、資料準備してくれ!」
(なに生意気言っとるんだ!俺だって、社長が参加するってことは、さっき聞いたばかりじゃ。こんなうるさい新人には、もうかまってられん。もっと従順で、かわいらしい派遣さんをPMOとして採用するか)=M男氏の心の声

――― 会話の内容を見ると、P子さんの言い分の方が正しいように思えますよね。ただ、M男氏の心の声を聞くと、少し同情の余地があるかもしれません。

とはいえ、チームをマネジメントする立場であるPMとして、M男氏の発言内容には、いろいろ問題があることは明確です。少なくとも「急きょ社長が会議に参加することになったから、申し訳ないけど資料の準備をやり直してくれ」の一言があれば、状況は大きく変わっていたでしょう。

しかし、現実問題として言葉足らずのPMもたくさんいます。いくら、PMがプロジェクトの要(かなめ)だからといえ、「PMこけたら、みなこけた!」では、いつまでたってもプロジェクトの成功率は上がるわけありません。

ということで、今回はどちらかというとPMOの立場として、PMの指示をどのように受け止めるべきかという視点で考えてみます。

 

【 コミュニケーションの構造(指示を出す、指示を受ける関係) 】

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冒頭でも触れたとおり、前回のブログ 【第66回】プロジェクトを動かす「攻めの議事録」 では、会議での発言内容を、その背景にあるプロジェクト状況などから深読みして、発言の真意を議事録に記す感覚が必要だと説明しました。

PMOがPMからの指示を的確に受け止めるためには、同じように上司の指示内容をそのまま聞くということではなく、その背景にあるプロジェクト状況などから深読みして、PMOとしてどういう行動をとるべきかを少し客観的な視点で考えてみる必要があると私は考えています。

そのことを構造的に表したのが、下の図になります。(※2)

図1では、指示をするPMを伝達者とし、指示を受けるPMOを受領者としています。

伝達者であるPMは、プロジェクト状況などの多種多様な情報(情報A)をインプットとして、何かを考えて(情報B)、なんらかの反応(たとえば、PMOに指示をしたり、自分で作業したり、、、)をします。

指示する内容(情報C)は、伝達者の背景、つまり、伝達者のこれまでの経験や知識、経営者など各ステークフォルダからの外的圧力、伝達者がプロジェクトを推進するうえで意識している戦略や意志、そして、指示を与えるPMOに対する評価(たとえば、よく言うことを聞くとか、反抗的とかいう印象)などによるフィルタを通すことで、いろいろなニュアンスでPMOに伝えられます。

指示された内容(情報C)を受領者が受け取る際も、受領者の背景がフィルタとして作用して、少し違ったニュアンス(情報X)で取り込まれます。さらに、その情報Xをもとに反応する際も、受領者の背景が作用することで、少し違った反応として、作業結果や報告、意見、愚痴など(情報Y)としてアウトプットされます。

そして、情報Yはそもそものプロジェクト状況などになんらかの作用(フィードバック)を及ぼすことになるはずです。

PMからPMOに対するちょっとした指示も、こんな風に構造的にとらえてみると、さまざまな要素が作用し得ることがわかると思います。さまざまな要素が作用するということは、それだけコミュニケーションがこじれるリスクがあるということをまずは押さえておく必要があります。

 

【 じゃ、どうすればいいの? 】

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では、指示する、指示を受ける関係のコミュニケーション構造を踏まえて、指示を受けるP子さんとしては具体的にどうすれば良かったのでしょうか?

今回のP子さんとM男氏のやりとりは、ちょっと複雑な事情が絡んでいます。昨日時点で、P子さんはM男氏の指示があいまいだったために、『A4・ツーアップ・モノクロ・両面・左上ホチキス止め・20部』ということを口頭ではありますが、しっかりと確認していました。

おそらく、その時点では、M男氏もそれでよいと思っていたようです。その後、今日になって社長が会議に参加するという状況の変化があったために、会議資料の再印刷をP子さんに指示したのです。

ここで、M男氏とP子さんの信頼関係が普段から構築されていれば、再印刷の理由についても情報共有することで、こんなにこじれることは無いはずですが、信頼関係が出来ていなかったために、状況の変化が共有されず、ますます関係悪化という結果を招いてしまったのです!

指示を受ける側のP子さんとしては、指示の内容を5W1Hのフレームワークでとらえると明確に受け止められるはずです。今回のやりとりの中で、M男氏の指示をP子さんがどのように5W1Hのフレームワークを埋めていったかを再現してみます。

昨日のM男氏の指示では、資料をコピーすること(WHAT)と、それを行うのはP子さんであること(WHO)ぐらいの情報しか得られていませんでした。そこで、不足している情報をP子さんは口頭で確認していますが、コピーの仕方(HOW)についてだけ確認しているだけで、その他の情報はいつもと同じという常識的判断や類推で埋めているのです。

今回のケースでは、昨日から今日になって、「通常の会議」から「社長出席の会議」向けというように、資料をコピーする目的(WHY)が変わっています。昨日時点ではM男氏も社長が出席することを知らなかったことから、昨日、P子さんが目的(WHY)まで確認していたとしても特に結果は変わらなかったかもしれません。しかし、指示を受ける側としては、どうやってコピーをするか(HOW)だけでなく、どういう目的でコピーをするのか(WHY)まで意識していると、今後のアクションをもう少し広く考えることができるはずです。

具体的には、いろいろ多忙で会議の出席者や会議資料の準備まで細かく気を配れない状態のPMをサポートするために、いや、もっと高い視点に立ち、プロジェクト運営の円滑化というPMOの役割を果たすために、たとえば会議の出席者に関する情報をM男氏以外のチャネルから入手することを心がけたり、社長が参加するときにはどういう準備をすべきかを普段から(頭の中だけでも)整理しておくなど、建設的なアクションプランを思いつく可能性も高まるはずです。

少しわかりづらい説明になってしまいましたが、別の言い方をすると、昔からよく言われている「物事をひとつ上の立場で考えてみる」という言葉が、指示を受ける人の心構えとして当てはまると思います。つまり、自分の立場(PMO=指示される人)のひとつ上の立場(PM=指示する人)に立って、そのときのプロジェクト状況などを把握し、PMの気持ちを察することで、自分が指示されたことの目的や意味をしっかりととらえてアクションを起こすことを心がけるべきなのです。

そのような心がけが出来ていれば、表面的な「言った言わない」とか、「指示したことがコロコロ変わる」とか、そんなささいなすれ違いを越えて、もっと建設的にコミュニケーションの円滑化を図れるのではないでしょうか?

「コミュニケーションの構造を意識し、ひとつ上の立場で考えたアクションを心がけよう!」

ご納得いただけたでしょうか?

それでは次回もお楽しみに!          < 前回 | 目次 | 次回 >

工藤武久

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※1 当ブログの2015年アクセス数トップ10は以下の通りです。
【1位】どっちの契約でショー!「一括請負」vs「準委任」
【2位】プロジェクト・リスクとは何か?
【3位】システム開発が楽しくなる生産性向上のポイント
【4位】カットオーバー・クライテリアとは何か?
【5位】プロジェクト計画書に隠された「ありえない前提条件」
【6位】プロジェクト工数管理の達人?コスト・マネージャー
【7位】オペラ座の怪人は、なぜクリスティーヌを奪えなかったのか?
【8位】プロジェクト全体リスクのマネジメント具体例
【9位】品質とは何か?
【10位】工程完了判定基準にオフサイドトラップを仕掛けろ!

※2 コミュニケーションの構造とかメカニズムをネットで検索すると、いろいろな情報にヒットします。さまざまなバリエーションはありますが、ものごとをできるだけ構造的にとらえることは、円滑なコミュニケーションを構築する上でも大切なことです。

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工藤 武久
■株式会社アイ・ティ・イノベーション  ■コンサルティング本部 - 東日本担当 ■学歴:早稲田大学 - 第一文学部卒業 ■メーカー系のシステム子会社にて、主に官公庁向け大規模システム開発プロジェクトに、SE、PMとして携わる。立ち上げから運用保守フェーズに至るまで、システム開発プロジェクトの幅広い実務経験を重ねた。 ■2007年より株式会社アイ・ティ・イノベーションにおいて、大規模プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメント支援や品質管理支援等のコンサルティングを手がける。 ■PMP、情報処理技術者試験(プロジェクトマネージャ、システム監査技術者他)など。 ■Twitter:https://twitter.com/iti_kudot  ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■ ブログランキングに参加しています! ◆人気ブログランキングにほんブログ村 ↑是非応援(クリック)お願い致します↑ ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■主なタグ:統合, スコープ, タイム, コスト, 品質, 人的資源, コミュニケーション, リスク, 調達, ステークフォルダ

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