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《05》 インドと英国─スマートな〈温故知新〉同盟

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[執筆:田中 静]

4月10日、英国ウィリアム王子とキャサリン妃がインドを訪問しました。ご夫妻での公式訪印は今回が初めてで、ムンバイを皮切りに、インドの主要都市や隣国ブータンを1週間の日程で訪れました。英ロイヤルファミリーの訪印に象徴されるように、ここ数年、英国とインドの関係強化が急速に進んでいます。昨年11月にはモディ首相が英国を訪問し、キャメロン英首相らと会談するなど、かつての支配・被支配の関係が、故(ふる)きを温(たず)ねて、新しきを知る〈温故知新〉の同盟関係に生まれ変わっています。

◆ロンドンが支援を決めたインドのスタートアップ20社

こうした両国の関係は、政治、外交、文化のみならず、経済・産業面でも急速に深まっています。ビジネスでいえば、この3月、ロンドン市長の産業振興公社であるロンドン&パートナーズ(London & Partners)がインドのスタートアップ企業20社を選定し、支援するという「インディア・エマージング 20(India Emerging 20 =IE20)」を発表しました。
※参考:YOUR STORY/Indian startups have the highest potential to build global brands: Lord Bilimoria, Founder of Cobra Beer

選ばれたインド企業20社の事業分野は、人工知能、ライフサイエンスから観光、e-コマースまで実に様々ですが、基本はITとネットを駆使して、グローバルな成長が見込まれるスタートアップ企業。以下がその20社の概要です。

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◆インディア・エマージング20社──その概要
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Adadyn Technologies ベンガルールのネット広告企業。IDGベンチャーズ(500万ドル)等が出資。
Curadev デリー(ノイダ)の創薬開発企業。2010年設立。スイス製薬大手のロシュから癌免疫療法薬の開発等を請け負っている。
Happiest Minds Technologies ベンガルールの総合IT企業。JPモルガンPEG、インテルキャピタル等が出資。
Indix Internet チェンナイのビッグデータ系IT企業。2010年設立。ノキア・グロースパートナーズ等が出資。
Kyazoonga (ITKTS Interactive Technologies) ムンバイのe-チケット企業。スポーツ(クリケット)から映画、旅行などの予約まで取り扱う。
LatentView Analytics チェンナイのマネジメントデータ・アナリティクス企業。マイクロソフト、シスコ、ペプシコ等多数の大手企業が顧客。IIT-M(インド工科大学マドラス校)とも提携関係にある。
MoEngage ベンガルールとサンフランシスコ拠点のモバイルアプリ支援企業。ヘリオン・ベンチャー・パートナーズ等が出資。
Nanobi Data and Analytics ベンガルールの中小企業向けのSAASアナリティクス企業。マイクロソフト・ベンチャーズから資金を調達して2012年に設立。
OSSCube Solutions デリー(ノイダ)のソフトウエア開発企業。インドに社員300人を有し、英ロンドン、米3都市に拠点を持つ。
Perpetuuiti Technosoft ムンバイ、プネ、チェンナイに拠点を持つシンガポール本社のソフトウエア企業。人工知能、ロボテックソフトオートメーション分野に注力。インテル・キャピタルから資金を調達して設立。
Pervazive ベンガルールとニューヨーク拠点のマシンインテリジェンス企業。通信大手20社超が顧客。
RateGain Travel Technologies デリー(ノイダ)の旅行総合予約企業。英国、米国、スペイン、ブラジル、コロンビア、南ア、タイ、日本(大阪)に支店を持つ。米TAアソシエーツが5000万ドル出資。
Seclore ムンバイのソフトウエア開発企業。国内ではベンガルールとグルガオン、海外では米国、シンガポール、サウジ等に拠点を持つ。ヘリオン・ベンチャー・パートナーズ(600万ドル)等が出資。
SilverPush (Silveredge Technologies) グルガオンのマッピングソリューション企業。顧客向けにテレビやスマホをプラットフォームした製品を開発。M&Sパートナーズ(シンガポール、日本)、IDGベンチャーズをはじめ多数の投資ファンドから資金を調達している。
Stelae Technologies チェンナイの人工知能企業。CEOはベンガルールの女性起業家で開発センターはコインバトール(タミルナドゥ州)。英国、フランス、スイス、イスラエル等の投資家から資金を調達し、2002年に設立。
Teabox ダージリン(西ベンガル州)拠点の紅茶ネット販売企業。150種の紅茶を世界90カ国に販売している。
Technology Frontiers (TechFront) チェンナイのスポーツ会場マネジメント企業。IPL(インドのプロ・クリケット)をはじめスポーツ、メディア、エンタイティンメント大手を顧客に会場掲示板等のソリューションを開発。海外支社はドバイ、ロンドン、ハンガリー、ヨハネスブルグ、シドニー、深セン等多数。
Telerad Tech ベンガルールのクラウドベース・ソフトウエア企業。病院など医療機関、ヘルスケア分野の顧客が多い。
Uniken Systems プネのサイバーセキュリティ企業。金融機関と国防関係が主要顧客。インドの防衛産業投資ファンド(Exfinity Venture Partners)から昨年、200万ドルの資金を調達した。
Uniphore Software チェンナイの音声技術モバイルソリューション企業。本社はIIT-M(インド工科大学マドラス校)の産学共同施設内にある。世界25言語をサポートし、マニラとドバイに支社を持つ。IDGベンチャーズからの資金調達で設立された。

◆インド企業の対ロンドン投資額は、米国に次いで2位

このように英国がインドのスタートアップ企業に支援を強化する一方で、インド企業の対英投資もここ数年、急増中です。ロンドン&パートナーズの調査によれば、ロンドンの企業に投資した外国企業の国別ランクで、インドはすでに中国、日本を抜いて、米国に次ぐ第2位の投資国になっています。

業種ではとりわけIT系企業の投資・進出が増えていることから、金融と情報の世界都市ロンドンとIT大国のインドがフィンテック(IT技術を使った新たな金融サービス事業)で強く結びつきはじめているのかもしれません。いずれにしても、かつて宗主国とその植民地という英国とインドの従属関係は、ビジネスを通じて劇的に刷新され、いまや新たなステージを迎えていることは確かです。

 

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