ホーム > ブログ > 工藤 武久の記事一覧 > 【第80回】2030年 プロジェクトマネジメントの旅

【第80回】2030年 プロジェクトマネジメントの旅

Pocket

ご訪問ありがとうございます!          < 前回 | 目次 | 次回 >

おかげさまで、当ブログ『新感覚!プロジェクトマネジメント』も、今回で第80回を迎えることができました!

今回はプロジェクトマネジメントの近未来を、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』風に描いてみたいと思います。(※1)

 

【 プロジェクトマネジメントの夜明け 】

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
遠い昔、人々は思い思いにシステム開発を行っていました。そのため、単純な事務処理のシステム化程度はうまく行くこともありましたが、少し複雑で開発規模の大きな案件は、スケジュール遅延やコスト超過が当たり前で、なんとかカットオーバーを迎えたとしても本番障害が多発するのが当たり前の状態でした。

システム開発を担う技術者(いわゆるSE=システム・エンジニア)たちは、夜も昼も無く仕事に追われるため、概ね30歳ぐらいになると身も心もボロボロになり、「SE、30歳定年説」がまことしやかにささやかれていたのです。(※2)

ある日、そんなSEの一人であったTI君は、ほんのわずかな仮眠のために宿泊した渋谷のカプセルホテルを後にして、システム開発の現場に向かう途中、今まで見たことも無い、紫色をした分厚い本のような物体を発見しました。。。

そのままシステム開発の現場に到着したTI君は、おもむろに自分の机上に散乱していた資料を全て床に放り出し、カットオーバーまでを概観したマスタースケジュールを大きな模造紙に記して、プロジェクトルームの壁に貼りだしました。そして、そのマスタースケジュールに、カットオーバーまでに想定されるリスクを記した付箋紙をいくつも貼りつけながら、何度もうなずくのでした。。。

 

【 西暦2030年1月のある日 】

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
HSH(ハッシュ)社のCIOであるTI氏は、情報システム部員全員を集めて、年頭のあいさつを行っていました。あいさつの途中、TI氏が常に着用している「アイ・グラス・モニター」(超小型のヘッドマウントディスプレイ)に、突然システム障害を知らせるメッセージが表示されました。(※3)

システム障害が検知されるとただちに担当の技術者が対応できる体制をとっているとはいえ、TI氏がCIOに就任してから5年の間、一度もシステム障害は発生していなかっただけに、TI氏は年頭のあいさつを早々に切り上げて、情報収集を行うことにしました。

既に障害箇所の特定、影響範囲の見極め、障害部位の切り離し、代替え処理の実行まで、新型の自動監視装置により自動対処済みであり、エンドユーザへの影響は無いことまで確認ができていたので一安心しました。しかし、なぜこのタイミングでシステム障害が発生したのか、原因を追究して再発防止を検討する必要があるとTI氏は考えました。

2027年に完成した新型の自動監視装置は、あらゆる障害を自動的に検知して、代替え処理まで自動的に実行することのできる画期的なものでした。2024年から導入されている要件定義支援システムを用いることで、システム開発に必要な業務要件、システム化要件は、例外処理も含めた詳細要件が全てデータベースに格納されています。新型の自動監視装置は、この要件定義データベースを活用することにより、たとえ実装されたシステムが不完全であったとしても、障害発生時の代替え処理まで自動的に実施することを可能にしたものです。

TI氏は、情報収集の結果、以下の事実を把握しました。

1.今回の障害技術的原因は、いわゆる2030年問題(1930年~2029年を下2桁で表現しているシステムに問題が起こること)でした。(※4)

2.2030年問題への対策は、30年前の2000年問題への対策実施時に、合わせて全面的に対応済みのはずでした。

3.要件定義データベースと実際に実装されているシステムの間には一部かい離があることが判明しました。実際に実装されているシステムには、過去のシステムの一部を流用しているものが残存していたのです。

4.2028年夏には、2030年問題にそなえたシミュレーションテストが実施されていますが、その時には今回の障害は検知されませんでした。

過去のシステムの一部が流用されていることは、当時は周知の事実でしたが、要件定義支援システムの導入と新型の自動監視装置の華々しい実績の影に隠れた格好で、みなその事実を忘れていたのです。2028年に実施したシミュレーションにより、2030年問題は100%起きないはずとTI氏はたかをくくっていたのでした。

しかし、その後の詳細な調査によって、西暦2000年より前に構築されたシステムの一部に、思いもよらない秘密が隠されていたことが判明したのです。何者かが2030年に意図的にシステム障害を発生させるように巧妙に仕組んでいたとしか思えない事実が浮き彫りにされたのです!

いったい誰が仕組んだのか?その目的は何か?を探ろうとした瞬間、TI氏の「アイ・グラス・モニター」越しに、再び紫色をした分厚い本のような物体が現れたのです!

 

【 そして、プロジェクトマネジメントの未来へ! 】

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
あれからかなりの歳月が過ぎたように感じられました。TI氏がふと気付くと、そこはまばゆい光に照らされた狭い部屋の中でした。目の前では、何者かがテーブルに向かい静かに食事をしているようです。TI氏の意識はうつろになり、フラッシュバックのようにさまざまな情景が「アイ・グラス・モニター」越しに繰り広げられていきます。。。

・・・

プロジェクト・リスク・データベース(PRD)には、過去のあらゆるシステム障害に関する経緯、直接原因、根本原因、再発防止策が完全にデータベース化されています。見積過少やシステム企画段階の検討不足、ステークフォルダー間の足の引っ張り合いなどのプロジェクトマネジメントに関する問題も含めて、ありとあらゆる失敗の原因が具体的な事実とともにデータベースに構築されているようです。

要件定義データベースはさらに進化を遂げ、業務要件やシステム要件だけでなく、スケジュール制約、コスト制約、リソース制約などのプロジェクトマネジメントに関する情報も全て包含されていて、プロジェクト・プロファイル・データベース(PPD)という名前で呼ばれています。

TI氏の意識下には、PRDとPPDの内容が、まるで紙芝居のようにくっきりと映し出されます。TI氏がいつも気にかけてきたプロジェクト遂行のポイントは、スケジュール、スコープ、クオリティ、コスト面だけでなく、実在のステークフォルダーへの対応も含めて、あるべき姿が全て詳細なイメージとして映し出されています。

これだけ豊富な情報をもとに、これだけ明確なデシジョンが可能な状態なら、プロジェクトの失敗など起こすことは100%無いと直感的に感じられます。ここは未来のプロジェクトマネジメントをつかさどる人工知能の内部ではないかとTI氏は感じます。

TI氏の「アイ・グラス・モニター」越しには、プロジェクトオーナである経営者やエンドユーザや開発ベンダーの要件定義アナリストなどのステークフォルダーたちの姿が映し出されます。全てのステークフォルダーたちは、TI氏と同じような「アイ・グラス・モニター」を装着しており、TI氏の意識が瞬時に共有されていることがわかります。逆に全てのステークフォルダーの意識はTI氏にも瞬時に共有されています。もしこの状態を保つことができれば、ステークフォルダー間の無用なコンフリクトは発生しないはずです。

プロジェクトマネジメント人工知能は、PRDとPPDをもとに、仮想プロジェクト計画を瞬時に組み立てます。仮想マスタースケジュールを中心に、要員計画、コスト計画、品質計画なども完全な整合性をもって組み立てられます。この仮想プロジェクト計画は、プロジェクト状況の変化に応じて、常に最適な状態に保たれているようです。

仮想プロジェクト計画は常に最適化されるため、システム開発に従事しているメンバたちは失敗に関して余計な思いをめぐらせることはありません。開発メンバたちは、何もおそれず、余裕をもって、思い思いに自分たちの好きなようにシステムの要件をぶつけ合っています。それらの要件の矛盾やリスクを瞬時に分析して、最も失敗するリスクの低くなる方向へと人工知能が誘導してくれているのです。

この世界では、人間のプロジェクトマネージャーやPMOなど存在していません。全てのプロジェクトマネジメントの機能は人工知能が肩代わりしているのです。

この人工知能はPPDに格納された要件をもとに、完全なるシステムを自動生成するために、テストという概念が存在しません。自動生成されたシステムをテストする代わりに、エンドユーザによる業務実行シミュレーションが行われます。この段階では要件定義の不具合といったレベルのものは存在せず、より前向きな要件のブラッシュアップが行われます。

もちろん、複数のプロジェクト間の連携も人工知能によってコントロールされることで、常に最適の関係性に保たれています。プロジェクト間のコンフリクトも論理的に発生しえない状態であり、長い間プロジェクトと戦い続けてきたTI氏にとって、そこは理想郷、まるで夢の世界のように感じられました。

ふと自分たち人間が主体でプロジェクトマネジメントを行っていた頃のことが、TI氏の夢の中の情景として浮かびました。なぜプロジェクトマネージャーはコミュニケーションにあれほど気を使わなければならなかったのでしょうか?ステークフォルダー間で思いが共有できたら、しかもタイムラグなく瞬時に共有することができていたとしたら、、、
もっともっとプロジェクトの成功確率は上がっていたのではないのでしょうか?

 

背景や知識の異なる人間の寄せ集めで実施していたプロジェクトは、ステークフォルダー間で思いを共有することができなかったために、失敗していたのではないでしょうか?

 

もしかすると、これはシステム開発のプロジェクトに限らず人間社会の縮図なのかもしれない。。。

 

TI氏の意識は、少しずつ遠くなっていく、、、

 

・・・

「プロジェクトマネジメントの未来を思い描くことで、現在の問題に向き合ってみよう!」

それでは次回もお楽しみに!          < 前回 | 目次 | 次回 >

工藤武久

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
応援してくださる方は、クリックよろしくお願いします!
◆ 人気ブログランキング
◆ にほんブログ村
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

※1 「2001年宇宙の旅」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2016年7月14日 (木) 13:14 UTC https://ja.wikipedia.org/wiki/2001年宇宙の旅

※2 「プログラマ」(プログラマ定年説)『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2016年6月18日 (土) 13:16 UTC https://ja.wikipedia.org/wiki/プログラマ

※3 「ヘッドマウントディスプレイ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2016年7月11日 (月) 10:05 UTC https://ja.wikipedia.org/wiki/ヘッドマウントディスプレイ

※4 「年問題」(2030年問題)『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2016年3月17日 (木) 04:01 UTC https://ja.wikipedia.org/wiki/年問題

Pocket

目次

Profileプロフィール

工藤 武久
工藤 武久
■株式会社アイ・ティ・イノベーション  ■コンサルティング本部 - 東日本担当 ■学歴:早稲田大学 - 第一文学部卒業 ■メーカー系のシステム子会社にて、主に官公庁向け大規模システム開発プロジェクトに、SE、PMとして携わる。立ち上げから運用保守フェーズに至るまで、システム開発プロジェクトの幅広い実務経験を重ねた。 ■2007年より株式会社アイ・ティ・イノベーションにおいて、大規模プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメント支援や品質管理支援等のコンサルティングを手がける。 ■PMP、情報処理技術者試験(プロジェクトマネージャ、システム監査技術者他)など。 ■Twitter:https://twitter.com/iti_kudot  ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■ ブログランキングに参加しています! ◆人気ブログランキングにほんブログ村 ↑是非応援(クリック)お願い致します↑ ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■主なタグ:統合, スコープ, タイム, コスト, 品質, 人的資源, コミュニケーション, リスク, 調達, ステークフォルダ

Recent Entries最近の記事

PMI®公認教育プロバイダー(R.E.P:Registered Education Provider) 株式会社アイ・ティ・イノベーションは、米国PMI®から公認教育プロバイダー(R.E.P)として認定されております。
PMI Registered Education ProviderロゴおよびPMBOK®Guideは、PMI®(Project Management Institute, Inc.)の登録商標です。
IIBA®認定教育プロバイダー(E.E.P:Endorsed Education Provider) 株式会社アイ・ティ・イノベーションは、IIBA®(International Institute of Business Analysis)の認定教育プロバイダー(E.E.P:Endorsed Education Provider)です。
IIBA®BABOK®およびBusiness Analysis Body of Knowledge®は、IIBA®の登録商標であり、IIBA®の許可を得た上で使用しています。