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【新アメリカベンチャー事情 その1】数年ぶりに渡米、シリコンバレー訪問

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 2010年4月に、アイスランドの火山エイヤフィヤトラヨークトルの噴火によりヨーロッパ大陸上空に火山灰が広く滞留、多数の航空便が欠航した。私は妻と休暇でヨーロッパに行く約束をしていたが、やむなく渡航慣れしているサンフランシスコとシアトルに変更した。まず4日間ナパのワイナリーの中にあるホテルに滞在し、食事やゴルフでのんびりと過ごした。その後シアトルに渡り、知人と当時の米国におけるクラウドに関する最新動向などの話もしながら楽しい時間を過ごした。それから実に6年ぶりにサンフランシスコ、シリコンバレーを訪れた。

 渡米する場合、基本的には空港でレンタカーを借り、移動はすべて自分で運転する。荷物が多くても、空港で車を確保すれば不自由なく目的地に行くことが出来る。帰りも空港で乗り捨てが可能である。これに慣れれば、自分の意思で気兼ねなく思うように移動することができる。海外といえども自由なマインドになれるのである。但し、渡航先が、右側通行なので意識の切り替えが必要である。アメリカ国内のセールスマンは、都市から都市への長距離の移動は、飛行機を使い、空港で車を借り複数の訪問先を廻る。これが当たり前の光景であり、アメリカではこのシステムに基づいて合理的に設計されている。このことを知っているのと知らないのでは大違いである。私はアメリカに渡るとアメリカの感覚に戻る。フリーウェイでの車の運転は、マインドチェンジのトリガーとなる。

 ITの仕事を始めた80年代は、私の活動の拠点は欧米であった。現在は、インド、中国、シンガポール、マレーシア、タイなどのアジアに移っており、アメリカと再び何かを始めるイメージは持っていなかったが、20数年来の現地との関係が縁となり再びビジネスの話が始まったのだ。もし上手く行けば、と胸が躍る。時代が変化しても人と人を繋いでくれている友人が居て、長いコラボレーションだけの時間を経て今回の話が始まった。本当にありがたいことである。

 ここ20年ほどのIT産業の変化は激しい。しかし、IT産業にいるリーダーは、会社や技術が変化しても一貫して活躍している人が多い。私は、できるだけ会社の変遷より人の動きに注意を払っている。人に着目すると、この20年の間に様々な会社で様々なチャレンジや経験を積み、着実に歩んでいる人が多く見つかる。

 シリコンバレーの何処かでリーダーの一人がすばらしい発想をすると、それを具現化する経験者がすぐ集まってくる。更には、資金も調達できるルートが数多くある。これが、アメリカのITビジネスである。企業が戦略に沿って新しい事業を創造するという一般的なパターンもそれはそれで間違いではないが、イノベーションを起こそうという異分子は、既存の組織がうまく対応出来なかったり、スピードが遅かったりして、満足できなくなればスピンアウトしてベンチャーを立ち上げ、アイデアがよければ人も資金も集まり、どんどん進んでいく。異分子たちは、既存組織で成長できなければ、飛び出して夢の実現を目指す。私が言いたい事は、新たな発想を持った人たち(会社ではない)が、ベンチャーを立ち上げるのだ、組織ではなく人である、ということである。

 加えてアメリカでは、ベンチャーを立ち上げる段取りや投資の評価の質が高く、スピードも速い。全くの新技術であろうとも投資判断を下す投資家サイドの技術的な知見も相当なものだ。ベンチャー精神も違うが、取り巻く環境も違うということだ。

 今回の訪問目的は、シリコンバレーにある既に高い投資価値判断が下っている有力なITベンチャー企業を訪問し、日本の事情を紹介し、このベンチャーが保有するソフトウェアの日本への展開の戦略・戦術を議論することにある。前回の訪問はリーマンショック直後で、シリコンバレーには不況感が立ち込めていた。今は、シリコンバレーの景気は良好である。特に、最近ではクラウド関連サービスや、AI、ディープラーニングなどの先端技術に注目が集まっている。これからのITサービスは、クラウドやビッグデータ、AIの基本技術から、市場に深く入り込み、高い価値変化をもたらす「応用問題に答えを出すテクノロジー、サービス」が主流になる。ベンチャーを訪問しトップを含め幹部と直接対話することで、この相手が本物かどうかの想像がつく。逆に我々も、同様の判断をされる、ということである。(訪問前の準備と反応が大切)

 トップ会談が進むにつれて、次のステップでなすべき事への具体化の話になる。トップは、知見と経験が豊かな苦労人であり、企画のコンセプトと具体的なアクションを大事にする人でもある。幹部も技術やマーケティングにまじめに取り組んでいることが、端々の対話から良く分かる。今回、このベンチャー企業を訪問しよく分かったことは、

・会社の主張がはっきりしていて、オフィスはスッキリ。
・200名弱の社員がいるのに、30名ほどしか社員は、見えない。(在宅中心か?)
・幹部はベテランで優秀な経験者中心。エンジニアは、やはり若手のインド人が多い。
・パンフレット、会社案内など印刷物は一切無い。
・意思決定は、早そう。

流石、優秀なベンチャーは何かが違うと感じた。

つづく

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Profileプロフィール

林衛
林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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