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【第88回】あなたのマネジメントスタイルは「ドS」or「ドM」?

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2013年4月にスタートした 「新感覚!プロジェクトマネジメント」 は、早いものでもうすぐ5年目を迎えようとしています。おかげさまでGoogleやYahooなどの各種検索エンジンにも認知されるようになり、「プロジェクトマネジメントについて調べ物をしていたら、必ずこのブログの記事にぶちあたるよ」と言われることが増えてきました。

しかし、実際にプロジェクトマネジメントのご支援を差し上げている中で感じることは、まだまだ失敗プロジェクトは後を絶たないという現実です。もっともっと、たくさんの方に当ブログを読んで頂き、プロジェクトマネジメントを身近なものに感じて頂くことで、プロジェクトを成功に導くためのヒントを得て頂きたいと願っています!

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さて、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本代表・侍ジャパンは、大会前の強化試合では思うような結果がでず不安視されていましたが、見事ベスト4進出を決めました。また、3月19日に開幕した春の選抜高校野球を見ていると、息をのむような接戦が繰り広げられ、ひとつひとつのプレイや投手交代など監督の采配に試合結果が大きく左右されるような印象を受けました。

これら野球の試合を客観的に眺めていると、指揮官である監督の手腕がチームの成績に大きく影響しているように感じられます。システム開発のプロジェクトにおいても、指揮官であるプロジェクトマネージャの手腕がプロジェクトの成否に大きく影響していることは明らかです。

そこで、今回は、どういったマネジメントスタイルのプロジェクトマネージャが、プロジェクトを成功に導くことができるのか考察してみたいと思います。

 

【 「ドS」マネジメント 】

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『ドS刑事』なんてテレビドラマもありましたが、話をわかりやすくするために、マネジメントスタイルを「ドS」と「ドM」というふたつに大別して考察したいと思います。といっても、あまり厳密な定義ではなく、「ドS」は超攻撃的、「ドM」は超受身的といったぐらいのニュアンスでとらえてください。(※1)

まず「ドS」のマネジメントスタイルはどんなものか、思いつくままに列挙してみます。

< 「ドS」のマネジメントスタイルは? >

・プロジェクトチームに対して明確な方向性を示す。

・プロジェクト憲章、マスタースケジュールなどは自ら取りまとめる。

・ステアリングコミッティ、進捗会議など主要会議体は自らリードする。

・プロジェクトオーナ、ユーザ代表、開発パートナーの責任者など主要ステークフォルダとも積極的にコミュニケーションを図ることで協力関係を築く。

・プロジェクトに重大な問題が発生した場合、自ら状況を確認し、担当者に解決に向けた行動を指示する。

・各チームメンバの行動や意見が間違っていると感じた場合、必ず自分が正しいと考える指示に従わせる。

・開発パートナーのパフォーマンスが悪い場合には、開発パートナーの責任者およびその上位者を呼びつけて、強く改善を要求する。

・プロジェクトの先行きを見通し、早め早めに対策を講じるよう指示を出す。

・プロジェクトが暗礁に乗り上げそうな場合、大胆なスコープ削減やプロジェクト中断を伴うプロジェクト計画の変更などを仕切る。

うーん、こうして考えてみると、どれもプロジェクトマネージャとしては当たり前の活動のように思えてきました。やはり、プロジェクトマネージャたるもの、「ドS」でないと務まらないということでしょうか?

 

【 「ドM」マネジメント 】

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一方、「ドS」の対極であるはずの「ドM」のマネジメントスタイルはどんなものか、「ドS」のマネジメントスタイルと対比する形で列挙してみます。

< 「ドM」のマネジメントスタイルは? >

・プロジェクトチームメンバの意見を尊重し、自主性を重んじる。

・プロジェクト憲章、マスタースケジュールなどはチームメンバに作らせて、それを承認する。

・ステアリングコミッティ、進捗会議など主要会議体の運営はPMOに任せ、意見を求められた場合も、会議参加者の合議で決定する。

・プロジェクトオーナ、ユーザ代表、開発パートナーの責任者など主要ステークフォルダから何か言われたら、持ち帰り各プロジェクトメンバの意見を聞いてから対応を考える。

・プロジェクトに重大な問題が発生した場合も、PMOやチームメンバが問題解決してくれるまで黙って見守る。

・各チームメンバの行動や意見が間違っていると感じた場合でも、とりあえずそのまま行動してもらい、うまく行かなかった場合にはチームメンバが自ら是正することを待つ。

・開発パートナーのパフォーマンスが悪い場合には、そのパフォーマンスを前提にしたスケジュールの見直しを検討する。

・プロジェクトの成り行きを見守り、問題が起きたら対策をチームメンバと協議する。

・プロジェクトが暗礁に乗り上げそうな場合、プロジェクトオーナや開発パートナーの責任者からプロジェクトを中止すべきと言われるまで、我慢して待つ。

うーん、やはりプロジェクトマネージャとしては、今ひとつ物足りない気がしますね。もし、こんなプロジェクトマネージャが実在したなら、プロジェクトは確実に失敗するような気がしないでもありませんが。。。

 

【 CMMIの組織成熟度レベルとマネジメントスタイル 】

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ここまでは、指揮を執るプロジェクトマネージャのマネジメントスタイルを考察してきました。次に、マネジメントされる側のプロジェクトチーム、すなわち、システム開発を行う組織の方に着目してみます。

当ブログの 【第10回】落合「オレ流野球」はCMMIレベル5か? では、プロ野球の名勝たちのマネジメントスタイルについて、CMMIの組織成熟度レベルに当てはめて考察しました。CMMIの組織成熟度レベルは、以下のようなものです。(※2)

(成熟度レベル1) 初期状態 (混沌とした、いきあたりばったりで、一部の英雄的なメンバ依存の状態)。成熟したプロセスを導入する際の、出発点のレベル

(成熟度レベル2) 管理された状態 (反復できる状態、プロジェクト管理・プロセスの規則の存在)、反復してプロセスを実行できるレベル

(成熟度レベル3) 定義された状態 (制度化された状態)、プロセスが標準ビジネスプロセスとして明示的に定義され関係者の承認を受けているレベル

(成熟度レベル4) 定量的に管理された状態 (計測できる状態)、プロセス管理が実施され、さまざまなタスク領域を定量的に計測しているレベル

(成熟度レベル5) 最適化している状態 (プロセスを改善する状態)、継続的に自らのプロセスを最適化し改善しているレベル

それぞれの組織レベルの特徴を踏まえて、どの組織レベルにはどのマネジメントスタイルがあっているかを考えてみてください。そうですねえ、レベル1は「英雄的なメンバ依存の状態」ということから、まさに「ドS」プロジェクトマネージャが大活躍しそうな組織だと考えられます。逆にレベル5は「継続的に自らのプロセスを最適化し改善している」ということなので、「ドS」プロジェクトマネージャの出る幕はないと考えられます。

つまり、CMMIの組織成熟度のレベルが高まれば、プロジェクトマネージャに必要とされる「S度」が低くなり、レベル5では「ドM」プロジェクトマネージャの方が適しているということになるのです!このことが何を意味しているかというと、システム開発を行う組織の成熟度に応じて、プロジェクトマネージャのとるべきマネジメントスタイルを使い分ける必要があるということです。

「ドM」より「ドS」のマネジメントスタイルの方がプロジェクトマネージャとしてふさわしいと感じるのは、まだまだ世の中のシステム開発組織の成熟度がレベル1か2ぐらいの方が多いということを示していると考えられるのです。そりゃそうですよね。プロジェクトを成功に導ける組織標準を保有している組織が多ければ、世の中のプロジェクト成功率は確実に上がっていないとおかしいはずです。

もしかすると、既にレベル4か5の成熟度の組織に対して、あいかわらず「ドS」マネジメントを適用することでかえって失敗しているケースも考えられなくもないですが、どちらかというと、レベル1か2の成熟度の組織に対して、「ドM」マネジメントしか適用できずにプロジェクトが失敗しているケースの方が圧倒的に多いのではないかと思います。

現実のプロジェクトで、CMMIの組織成熟度レベルを物差しにするのはちょっと難しいかもしれませんが、プロジェクトマネージャは自ら指揮を執るべきプロジェクトチームがどんな特徴をもつチームなのかをしっかりと把握した上で、どんなマネジメントスタイルが適しているかをよく考える必要があるのです!(※3)

「プロジェクトチームの特徴を把握し、どのマネジメントスタイルが適しているか意識しよう!」

まあ、プロジェクトが失敗してばかりの組織では、常に「ドS」マネジメントが適しているということにはなりますが。。。

それでは次回もお楽しみに!          < 前回 | 目次 | 次回 >

工藤武久

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※1 『ドS刑事』については、以下参照。
・「ドS刑事シリーズ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2017年2月26日 (日) 04:18 UTC https://ja.wikipedia.org/wiki/ドS刑事シリーズ

※2 CMMIの組織成熟度モデルについては、以下参照。
・当ブログの 【第9回】マルクス社会発展段階とCMMI成熟度レベル
・「能力成熟度モデル統合」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2016年10月7日 (金) 16:30 UTC https://ja.wikipedia.org/wiki/能力成熟度モデル統合

※3 組織成熟度に応じたマネジメントスタイルが必要という発想は、私が学生時代に聞きかじったことのある「交流分析」という心理学パーソナリティ理論もヒントになっています。
・「交流分析」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2016年10月24日 (月) 05:27 UTC https://ja.wikipedia.org/wiki/交流分析

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工藤 武久
■株式会社アイ・ティ・イノベーション  ■コンサルティング本部 - 東日本担当 ■学歴:早稲田大学 - 第一文学部卒業 ■メーカー系のシステム子会社にて、主に官公庁向け大規模システム開発プロジェクトに、SE、PMとして携わる。立ち上げから運用保守フェーズに至るまで、システム開発プロジェクトの幅広い実務経験を重ねた。 ■2007年より株式会社アイ・ティ・イノベーションにおいて、大規模プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメント支援や品質管理支援等のコンサルティングを手がける。 ■PMP、情報処理技術者試験(プロジェクトマネージャ、システム監査技術者他)など。 ■Twitter:https://twitter.com/iti_kudot  ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■ ブログランキングに参加しています! ◆人気ブログランキングにほんブログ村 ↑是非応援(クリック)お願い致します↑ ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■主なタグ:統合, スコープ, タイム, コスト, 品質, 人的資源, コミュニケーション, リスク, 調達, ステークフォルダ

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