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《15》 クルマとIT ─ ものづくりの深化が次世代IT革命の源泉となる

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04132017新年度となり、インドでは昨年度1年間の様々な統計情報が次々と発表されています。例えばIMFが3月末に発表したインドの2016年度GDP成長率は6.6%。これが2017年度は7.2%、18年度は7.7%に拡大すると予測しています。先進諸国のみならず新興諸国の多くで経済が停滞・鈍化する中、インドは今後も堅調に成長する数少ない国と見られています。

とりわけ目下、インドで注目されている産業は自動車です。なぜなら自動車産業のすそ野は広い。その上、今後はIoT等の次世代IT革命と繋がりながら、人々のライフスタイルを大きく変える重要なプラットフォームだからです。

◆2020年にはスズキ1社で200万台超を販売する市場へ

インドの乗用車販売台数(輸出含む)は昨年度、史上初の年間300万台を突破しました。インド自動車工業会(SIAM) によれば4月3日現在、国内16メーカー中の8社がまだ最終販売台数を発表していないものの、最大手のマルチスズキが156万台強と全体の50%超を占め、市場全体の成長率は前年度比で10.5%増となりました。

昨年度はマルチスズキにとっても過去最高の販売台数でした。しかも、ここ数年、競合他社の参入激化で5割を切っていた市場シェアを再び5割超に戻した画期の年となりました。現地紙『ビジネススタンダード』(3月17日付)  によれば、同社は売り上げ面でも親会社のスズキを上回ったと報じられています。昨年4月~12月までの9か月間の売り上げでは、日本のスズキが6,990億円。対してインドのマルチスズキは7,080億円を計上したということです。

ガリバー企業、マルチスズキは販売網の多さでも他社をますます圧倒しています。2011年度時で800都市1100拠点だった販売網は過去5年間、毎年200店舗づつ増え、この3月時点で1643都市2007拠点とほぼ倍増させています。年間販売台数でも同社は2020年までに200万台達成を目標に掲げています。研究開発部門もインドは日本に次ぐ最大の拠点です。加えて、スズキは2月6日、トヨタと包括的な業務提携を結びました。これによりインドでは今後、スズキ・トヨタ連合での事業が様々なかたちで始まります。

◆年間500万台を突破したホンダ二輪は世界最大の生産拠点

自動車はなにも四輪だけではありません。オートバイやスクーターといった二輪の世界もインドではまだまだこれから伸びゆく有力産業。そこで急成長を遂げているのがホンダの二輪事業です。乗用車でのスズキの快挙の影に隠れて目立ちませんが、ホンダの二輪事業はスズキと並ぶ日本企業のインドサクセスストーリーと言えます。

インド二輪市場のトップは現地企業のヒーロー・モトコープです。同社の昨年度の販売台数は660万台。対してホンダの二輪部門、ホンダ・モーターサイクル・アンド・スクーター・インディア(HMSI)は前年度比12%増で初の500万台超えとなり、ヒーローに次ぐ二輪メーカーの地位を築いています。

驚くべきはこのHMSIは6年前に本格始動した会社だということです。もちろんホンダのインド二輪事業の歴史は長く、80年代に遡ります。しかし、当時はヒーローグループと合弁でインドの二輪事業は行っていました。この合弁事業を解消した後、2011年に単独で事業展開を開始したのがHMSIです。その際、ホンダはヒーローの車種と競合しないスクーターを中心に事業を行うことで平和的な合弁解消合意を取り付け、短期のうちにHMSIを業界2位のメーカーに育て上げました。ちなみにヒーロー製バイクの主要技術はホンダによるものですから、技術面でいえばインド二輪のトップ2社の製品は基本「ホンダ製」ともいえるわけです。

ホンダにとってインドの二輪市場は一昨年度、インドネシアを越えて世界最大の販売市場となっています。しかも5000件以上の二輪技術の特許を有するホンダはインドでの研究開発にも力を入れており、インドでの二輪特許取得数はわずか5年で400件を超えています。

◆ITとの融合が進む次世代自動車技術はインドでこそ発展する

自動車業界でインドは今後20年間、世界で最も成長が期待できる市場だと言われています。しかもそれは〈量〉(生産・販売台数等)と〈質〉(研究開発・次世代技術等)の両面で注目されています。

〈量〉でいえば、インドの自動車(四輪)市場は現在、中国、米国、日本、ドイツに次ぐ世界5位の規模ですが、需要の高まりは凄まじく2020年には500万台を超え、日本とドイツを抜いて世界3位の市場となる見通しです。

他方、〈質〉の面では、IoT、ビッグデータ等の次世代ITビジネスとものづくりが融合する場としての潜在力が極めて高い。なぜなら、多数の若いエンジニアをかかえると同時に道路・交通システム等のインフラ整備がこれから進む場だからです。

こうした流れに沿ってインド政府も支援のシナリオをすでに多数策定しています。モディ政権がこの間、推進している「スマートシティ100都市選定」「メーク・イン・インディア(インドでのものづくり)」「デジタル・インディア(行政情報等のIT一元化)」「スタートアップ・インディア(スタートアップ企業の資金調達支援)」のどれもが、ものづくりの代表格である自動車産業とインドの誇るIT産業との連携・融合に関わる施策とも言えます。

自動車は日本企業が世界随一の競争力を有している数少ない産業分野です。その技術競争のメッカとなりうるインドで勝たずして、日本企業に未来はあるでしょうか。

[執筆:田中 静]

 

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