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CIOの振る舞い

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今回は、システム部門の役割、部員のスキルに続き、これらを束ねるCIOの振る舞いについて述べてみたい。なお、ここで言うCIOとは会社法の役員のみならず、情報システム部長など企業の情報戦略やIT投資の責任者の総称を指す。

私が1980年に入社した頃と2017年の今とでは、企業活動のIT依存度の増大により、CIOの役割は様変わりした。当時はいわゆるSoR領域が情シスのカバー範囲で、近年のSoE領域は殆ど存在しなかった。典型的なコストセンターとして、ITコストは防衛費のGDP比さながら、売上高の1%を超えない事が部門の決め事であった。(奇しくもこの数値は、内訳は異なるが今も健在だが)

そして今、企業内情報システムは企業のROI向上により貢献すべく、守りから攻めへ転じる変化点に差し掛かっている。図1にその内容をまとめてみた。IoT、ビッグデータ、クラウドといった新たなIT-Seedsは、再び企業活動を大きく変えようとしている。

このような状況下、CIOはどのような知見を持ち、どのような相手に、どのような振る舞いをしなければならないのだろうか。本ブログでは今後のCIO像について考えてみたい。まず、持つべき知見であるが、前回ブログに書いた”部員の持つべきスキル”は、同様に持っている必要がある。会計、SCM、マーケティング、人事、生産管理といった業務知識は一通り。中でも会計はバックオフィス業務の基本としてきちんと習得しておきたい。そして情報技術(IT)に関しては、全体を網羅的に知っているだけでなく、少なくとも1つの専門分野を持ちたい。ネットワーク、データベース、プログラミングなどジャンルは問わないが、最新技術である事が前提である。

余談であるが、前職でスコットランドの子会社を訪問した際、現地の情報システム責任者は、ロンドンで情報工学を学んだスペシャリストであった。日本とは違い、雇用の流動性が高い事がこのような人材登用を可能にしているが、専門性に乏しい”マネジメント上手”だけではこれからのIT責任者は務まらないのは確かだ。企業におけるITの活用は益々多様で奥深いものになって行くから。

では上記のようなスキルを持ったCIOは誰に対して何をすべきであろうか。当然のこと、部門内を統制する仕事は山ほどある。しかし、守りに相当する部分は可能な限り部下に委ね、攻めに相当する部分についてビションと施策の浸透に邁進してはどうだろうか。組織の役割が変化点に差し掛かっている時は、ボスには自らその進む方向を示すリーダーシップが求められる。

そして、内政以上に大事なのが、部門外に対する働きかけだ。前々回のブログで、次世代システム部門は組織横断のBPRを提案する役割を担うべきと書いたが、その先陣を切るのがCIOでなければならない。この役割は口で言うほどたやすいものではない。なぜなら、組織横断のBPRはCxO以外には殆どが抵抗勢力となるからだ。どんな組織でも既得権益があり、内政干渉をされたくないのが常である。そこを覆そうというのだから並大抵では行かない。とりわけ近年の大企業病を患った組織では、横串を通すのは大改革となる。ここでの唯一の頼りはCEOやCFOなのだ。彼らとの日常の情報共有は極めて重要である。

もっとも、CxOのみならず他部門の一般社員に対しても、情報システム部門が日頃どんな仕事をしているかを知ってもらうことがまず大前提である。縦割り組織の大企業では、他部門が何をしているかを知るチャンスが極めて少ない。日頃から意図して情報発信に努める姿勢が重要である。ちなみに、前職時代には“社内情報システムフェア”なるものを7~8年毎に企画し、他部門の社員の方々に近未来システムのデモや、部門固有システムを全社に紹介する等の情報発信を行ったりしていた。縁の下の力持ちが社内で唯一無二のIT専門集団である事をアピールする良いチャンスであった。

ところで、他部門との信頼関係を築いておくことは、BPRの理解を得る為だけではない。企業システムがビジネスと表裏一体であるという本質から、社内ユーザとの密接な関わりがいかに大事であるかを私は何度も経験している。システム開発時における業務のプロから見た判断や、運用トラブル時の人間系対応など、何度もエンドユーザに助けられてきた。もしも、ユーザ組織との関係が冷やかであったならば、開発時の現新比較で(ビジネスルールが変わっているのに)無理矢理数字を合わせようとして炎上したり、バグを解決しようと躍起になり二次災害を起こしたりしていたに違いないだろう。

以上が私の考えるこれからのCIOの振る舞いの主なところである。企業内における情報流通のイノベーションとガバナンスの両方の責任者として、経営トップと現場ユーザの両極を見据えて、時にはアグレッシブに、時には用意周到に振る舞う存在。そしてこれらを実行するには、マネジメントとアーキテクチャーの両輪をコントロールするバランス感覚をも持ち合わせなければならない。どうであろうか。このような振る舞いを最初から出来る人物はそうそういるわけがない。CIOとしての実力が発揮できるのは通常、就任3年目以降である。その任期が6年程度は必要となる所以である。

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中山 嘉之
1982年より協和発酵工業(現、協和発酵キリン)にて、社内システムの構築に携わる。メインフレーム~オープンへとITが変遷する中、DBモデラー兼PMを担い、2013年にエンタープライズ・データHubを中核とする疎結合アーキテクチャの完成に至る。2013年1月よりアイ・ティ・イノベーションにてコンサルタントを務める。【著書】「システム構築の大前提 ― ITアーキテクチャのセオリー」(リックテレコム)

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