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グロ-バル対応モデル

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近年、国内マーケットの飽和により殆どの経営者が”グローバル化”を口にするようになった。これにより、その業務処理を支えるIT・システムのグローバル対応が必然的に取り沙汰されるようになってきた。まず、ITベンダーが、ここぞとばかりに“ITのグローバル対応には欧米製ERPに統一しましょう!”というプロモーションを仕掛ける。なにか変では?IT以外で考えてみるとこの不自然さは歴然である。グローバル化とは世界を一色に塗りつぶす事ではなく、お互いの国や民族のカルチャーを認めながらも不要な垣根を取り払い共存共栄しようというもの。まさにダイバーシティ(多様性)に相通じるものである。そこに求められるものは、インターオベラビリテイ(相互接続性)でありユニフィケーシヨン(統一)ではないと思われるからだ。

話しをITに戻し、ではグローバル対応にはどのようなシステムのモデルが適しているのだろうか。上述した同一ERPによるビジネスプロセスの統一がカルチャーの異なる国々で果たして有効だろうか。IFRSによる会計統合すら未だ途上にある状況で、単一ERPへの統合は単なるブランドの統一に終わってしまわないだろうか。事業競争力を支援するマーケット・オリエンテッドなビジネス領域においては、少なくともその国のカルチャーに起因する業務プロセスのスタイルがあり、これに適合すべくアドオン・カスタマイズが発生するのが常である。

グローバル対応モデル

さて一方でデータに着目してみるとどうであろうか。動的な業務プロセス(仕事のやり方)に比べて、静的なデータの持つ普遍性ははるかに安定感があり国やカルチャーが異なっても相互利用できる可能性は高い。

ただその利用においては、“意味”は同じでも“形式”の変換が必要となるケースは多い。図1は前職で私が描いたグローバル対応モデルである。この例はリージョン毎の異なるアイテムコードをグローバルHUB上でローカル⇔グローバル変換し、全世界での売上をアイテム毎に串刺しにする単純な例である。問題はこの変換を煩わしいと思うか有難い自動翻訳機と思うかである。私はこのコンバータを疎結合エンタープライズ・アーキテクチャにおける重要なショックアブソーバの役割と思っている。

読者の皆さんには「なんだそんなの誰でも考える事じゃないの?」とおっしゃる方が多いと思われるが、現在、日本企業で世界中のERPの統一を考えておられる企業は少なくないのでは。。。システムのアーキテクチャはその企業の業種や経営戦略に基づいて自由に決めることができる。ガチガチの中央集権型と、柔らかなコラボレーション型のどちらをとるかは企業の勝手である。よって、ERPにより世界中のプロセス統一を図ることを否定するつもりは毛頭ない。しかし、その為に何年もの歳月と多額の費用を投入することは、“ROIに貢献すべき情報システム”の観点から言えば、いささかアジリティに欠けると言えよう。まずは身近なデータ・ニーズに基づいて“小さなグローバルシステム”をアジャイルに作ってみてはどうだろうか。それだけで他国の色んなことが見えてくるものだ。かつて私が5か国6拠点の現地を訪問してVPN接続を行い、各国のERPとのコードコンバータを設計した事を今思い出すと、とてもよい勉強になっている。

最後にこれだけは言っておきたい。ERPの世界統一を考えるのはITベンダーであり、ユーザ企業ではない。道具を統一することをグローバル対応と錯覚することだけは避けたいものである。仮にエンドユーザーが錯覚したとしても、情報システム部門はそうあってはならない。

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中山 嘉之
1982年より協和発酵工業(現、協和発酵キリン)にて、社内システムの構築に携わる。メインフレーム~オープンへとITが変遷する中、DBモデラー兼PMを担い、2013年にエンタープライズ・データHubを中核とする疎結合アーキテクチャの完成に至る。2013年1月よりアイ・ティ・イノベーションにてコンサルタントを務める。【著書】「システム構築の大前提 ― ITアーキテクチャのセオリー」(リックテレコム)

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