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《12》 2017年の本命・スマートシティ ─ インフラ×ITの新展開

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2017年、インドITビジネスの本命はなにか? 今年の流れを見ていると来年こそ、インドでいよいよ「スマートシティ」建設が本格化しそうな気配です。スマートシティはインフラ×ITの総合都市計画。IoT(モノのインターネット)やクラウド化等を通じて、公共インフラと行政サービスの両面をより効率的に管理・運営する新しい都市づくりの総称です。

インドでは昨年、モディ政権が全国100の都市をスマートシティ推進地として選定しています。とはいえ、その具体的な計画は規模が大きいだけに見えづらかったのが実情です。ところが、今年の下半期あたりから州政府とIT企業の官民連携が書面だけの合意に止まらず、具体的な事業計画として各州・各社から発表され始めています。

◆ハードとソフトの両面を有するシスコの強み

20161120中でもインドのスマートシティ計画に、いま最も力を入れ始めているグローバルIT企業のひとつが米シスコ・システムズです。同社はネットワーク機器の大手メーカーですが、1995年にインドに進出して以来、これまではハードの販売とそのサポート業務に軸足を置きながら、ベンガルールでのR&D(研究開発)業務に力を入れてきました。

それがこの10月、プネを候補地として2017年中にも機器生産拠点を設立稼働することを発表しました。これはモディ政権が推し進めている「メイクインインディア(インドで作ろう)」「デジタルインディア(インドのデジタル社会化)」の両政策に積極的に応えながら、もうひとつの官民協業プロジェクトであるスマートシティを大きなビジネスチャンスにしていこうという同社の戦略表明です。

すでにシスコは2015年、マハラシュトラ州政府とナーグプルのスマートシティ化支援計画で合意しています。また、この8月には南部の新州、テランガナ州政府とも州都ハイデラバードのスマートシティ化事業でMoU(基本合意書)を締結しました。

一方でシスコは8月に最大5,500人(グループ全体の7%)の人員削減を発表し、11月にはハードからソフト重視へのグローバルでの軸足転換を明らかにしています。その要となる市場が新興国で、シスコはIoT、クラウド、セキュリティ分野でのソフトウエアビジネスをインドのスマートシティを突破口にしていく計画です。

スマートシティには物理的なインフラ整備と最先端のソフトウェアの連携が不可欠です。それゆえ、シスコのようにハードとソフトの両面を有しているIT企業は自社の強みを最も活かせる分野ともいえます。シスコは20年前のインド進出から現地で人材とノウハウを着々と蓄積してきました。インドの6大都市に営業拠点を有し、物流センターは25拠点に及びます。ベンガルールのシスコ・グローバル・デベロップメント・センター(CGDC)は、いまや同社の海外R&D拠点としては最大規模になっています。さらにインドの多数の大学と連携し、シスコの技術・ノウハウを学生に教えるシスコ・ネットワーキング・アカデミーを176講座開講しています。そこで学ぶ学生は2万4000人を超えています。こうした長年の現地での蓄積を強みとして活かせる事業がスマートシティというわけです。

シスコはナグプルを含むインド14都市と行政デジタル化支援事業で実証実験の合意を得ています。さらに今後5年~7年間で展開される全国100都市のスマートシティ計画に全面的に参画していきたい考えです。

◆オラクル、インテルもスマートシティ・シフトへ

シスコに限らず、米系グローバルIT企業が軒並みインドのスマートシティにビジネス照準を合わせています。例えば、オラクルもシスコと同じくこの9月、マハラシュトラ州政府とスマートシティ支援事業で同意書を締結しました。オラクルは同州が州都ムンバイに設立する中核研究施設(CoE)を支援し、G2C(政府と市民)、G2B(政府と企業)間の新たな行政サービスの実証研究等に参画します。その具体事例としては、運転免許の更新手続き、固定資産税支払いなどのスマート化などを図る計画です。

この11月にはインテルもデータセンター・ビジネス等でインドでのスマートシティ支援事業強化を発表しました。インテルはチップ・メーカーでありながら、インドでは以前から電子政府関連のデータセンター・ビジネス事業を積極的に展開してきた実績を有しており、これを今後、各地のスマートシティで最大活用していく方針です。

◆スマートシティは日本企業にも絶好のチャンス

米系IT企業がインドのスマートシティに積極参入できる背景にはいくつか共通の基層的条件があります。その第1の条件は、インドで長年事業を展開してきたノウハウを有していること、第2の条件は、中央政府や州政府といった行政との官民共同事業の経験が豊富なことです。そして第3の条件はソフトのみならずハードやインフラ関連で高い実績を有していることです。

実はこの3つの条件を満たしている企業はそう多くありません。特にインド事業では比較的新興勢である韓国企業や中国企業にはまだ難しい面がある。しかし、日本企業は違います。これらの強みを有しています。例えば日立のIT部門は長年インドのATM等の開発に関わってきた実績があり、こうした金融機関との連携で各州行政にも少なからず事業実績を有しています。また、NECはインドの電子政府化の要である国民ID認証システムのプロジェクトに参画しており、すでに同システムの運用実績は世界最大規模となっています。

インドで長年、事業を展開してきた日本企業の中には他にもこうした実績を有する企業があるはずです。そうであれば、インドのスマートシティ建設の本格化は、日本企業にとっても2017年の大きなビジネスチャンスの本命だと言えます。問題は米系企業のように迅速・的確な決断ができるか否かで、それが2017年、日本企業のインドビジネスに問われてくるのかもしれません。

[執筆:田中 静]

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