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富士通株式会社

FUTURITY(開発標準) バージョンアップ支援

富士通株式会社 社会基盤ソリューションビジネスグループ ソリューション開発センター APデザインセンター長代理 奥川彰一 様

富士通株式会社
社会基盤ソリューションビジネスグループ
ソリューション開発センター
APデザインセンター長代理
奥川彰一 様

富士通株式会社様のご依頼により、大規模システム向けの開発標準であるFUTURITY(Fujitsu Transmigration Solution for Mission Critical System:フューチャリティ)のバージョンアップのお手伝いをさせていただきました。
同社の奥川彰一様に、本案件の背景や実際の取り組みについて振り返っていただき、当社コンサルティングへの評価、今後の課題や展望について、率直に語っていただきました。

この事例紹介は、2007年に取材したものです。
社名、人物の肩書などは取材当時のものです

お客様の課題 FUTURITYを普及させる上で、開発標準を第三者から見ても分かりやすい内容への改訂が必要となってきた。
当社支援内容 モデリング、PMで培った経験を元に支援をさせていただきました。
解決策 FUTURITYに実践で活用したノウハウを盛り込み、プロジェクトマネジメントも加え、わかりやすい内容に改訂をした。
社会基盤を支えるお客様のシステム要件とは

社会基盤ソリューションビジネスグループは、電話、キャリア系通信、電力、情報メディア(新聞・放送)など、社会基盤的なシステムを持つお客様を担当する部署である。

これらのお客様は、一度構築した大規模システムを、長期にわたってメンテナンスしながら使うという特徴がある。加えて、要求されるのは、複雑で難しいシステムの再構築であり、しかもシステムが長時間止まることは許されない、ミッションクリティカルな案件がほとんどを占める。さらに、再構築をする際には数十億から100億円単位の巨額の費用がかかる。それだけの費用をかけて再構築するからには、メンテナンス性の向上は必須の条件である。

再構築成功から生まれたソリューション

元々、FUTURITYは、KDDI様が約60億円の費用と3年9ヶ月の時間をかけて、システムの再構築を行ったときの手順等をまとめたものだ。この再構築は成功し、KDDI様は2004年の日経コンピュータ「情報システム大賞グランプリ」を受賞した。

ライフサイクルが長く、メンテナンス性のよいシステムを再構築するにはどうすればよいかというのは、社会基盤ソリューションビジネスグループの多くのお客様が抱える課題である。その課題に対して、富士通が提供するソリューションは、絶えずメンテナンスが発生する大規模システム構築に特化したFUTURITYである。

富士通は、FUTURITYを2005年6月に発表。APデザインセンターは、その後もFUTURITYのメンテナンスをしながら、FUTURITYを適用した実践を行い、ソリューションとしてのブラッシュアップを継続して行っている。

一問一答

今回の案件が生まれた背景と経緯について教えてください

今回お願いしたのは、FUTURITY開発標準のバージョンアップ作業です。従来のFUTURITY開発標準は、システムの作り手自らが書いたものでしたから、「このくらいは言わなくてもわかるだろう」というような、説明不足の部分があったようです。「第三者が見ると何が書いてあるのかよくわからない」いう意見が社内からも出ていました。そこで第三者が見ても分かりやすいように、一度きちんと整理をしようということになりました。

中々その整理のタイミングがつかめないでいたとき、APデザインセンター長が、アイ・ティ・イノベーションの林社長とインドのオフショア開発の視察で知り合ったことが、一つのきっかけになりました。

モデリングの経験からアイ・ティ・イノベーションを採用
アイ・ティ・イノベーションを選ばれた理由は?

当社においても開発担当者という人たちは、物を作るのは好きですが、人に伝えるために手順等を整理するのがあまり得意ではなく、進んでやりたがりません。「それなら無理に内製せずに、そのような仕事が得意な外部の会社にお願いしたほうがよいのではないか」という発想がセンター長にはあったと思います。そういうタイミングで、アイ・ティ・イノベーションの林社長に出会ったわけです。

アイ・ティ・イノベーションには、開発標準を手がけた経験が豊富にあるし、さらにプロジェクトの経験も豊富なので、「この会社に頼んではどうだろうか」という話になりました。

実際には私自身が、林社長やコンサルタントの皆さんとお話をしてみて、最終的に判断しました。実は、最初に概念データモデルで「あるべき姿」を描き、そこに持っていくための工夫をするというのが、FUTURITYの根本的なアプローチです。アイ・ティ・イノベーションでは、以前からモデリングもやられていて、このような開発標準の支援には適切かと思いましたし、林社長とお話したときも、私どもの感覚と非常に近いものがあり、容易にすりあわせができたため「これなら大丈夫だろうから、お願いしてみよう」と思いました。

実践で活用したノウハウを盛り込む
どのように実際の作業を進めていかれましたか?その中で印象に残ったことは?

2006年の8月に計画を立て、本格的に走り出したのは9月です。最初に「FUTURITYを第三者からも分かりやすくまとめる」という目標を元に、要件を出し、それらを達成してもらうことを合意して始めました。 終了したのは12月初旬でした。基本的には、週一回打ち合わせをして、進捗状況をチェックし次のマイルストーンを決めていきました。

一般的な開発標準は、インプット、アウトプット、手順のみの記述にとどまり、実際のノウハウについては触れていないことが多いのですが、今回の開発標準には、FUTURITYを実施した人たちのノウハウをできるだけ盛り込みたいと考えていました。

当社専任担当も、実際にFUTURITYでの開発を経験したわけではなかったので、週一回の打ち合わせの間に内部レビューをし、経験者に集中的にヒアリングをしました。また、開発標準を現場で使うプロジェクトマネージャが、そのやり方を十分理解していないと、開発の際に苦労することが多いので、プロジェクトマネジメントの部分にも力を入れました。

今回は、時間切れで盛り込めなかった部分もありますが、かなり体系だったものができましたから、これから中身の部分をさらに充実させていこうと思います。

印象に残ったのは、アイ・ティ・イノベーションでは、プロジェクト計画を非常にしっかり立て、プロジェクトを進められているということと、皆さん現場のことをよくわかっているので、話をしていて違和感がなかったことです。さすがにプロジェクト計画やマネジメントが得意分野だけのことはあると思いました。

トップダウンで実行
今回の案件で最も苦労されたのはどのようなことでしたか
FUTURITY開発標準

開発経験者の知恵を絞り出して、FUTURITYにノウハウとして入れ込む部分が苦労しました。皆、忙しくて中々時間が取れないし、現場の技術者は既に終わった仕事のことを語るのを面倒なようです。そこを担当者が辛抱強く聞き出してまとめ、成果物のひな形も集めました。

この作業は、トップダウンで行ったので、協力を得やすかったところもあります。私からも「今説明しておかないとプロジェクトのたびに聞かれるが、今きちんと説明しておけば、後は『FUTURITYを読んでくれ』と言えば済むから楽になるぞ」と説得しました。苦労の甲斐あって、非常に貴重なノウハウの集大成ができたと思います。

第三者から見ても分かりやすいものが出来上がる
アイ・ティ・イノベーションに期待されたことは、達成されましたか?

今回は非常によい成果物としてまとまり、当社としてもうれしく思っています。第三者から見ても、大変わかりやすくまとまっています。またアイ・ティ・イノベーションにも中身をたくさん書いてもらい、主体的に関わっていただいたと思います。 今までは、その都度開発標準をコピーして配っていましたが、今回きちんと冊子に製本しましたので、FUTURITYがどのようなソリューションであるのかを説明するのに、重宝しています。

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全国の電力会社様、ガス会社様を担当しているエネルギーソリューションビジネス事業部では、FUTURITYを開発標準に採用しましたので、すでに事業部の全員に冊子を配布し、説明会を行いました。 その他にも、社内の他の事業部から問い合わせがあったときや、お客様に事例紹介を行う際に、きちんとまとまった冊子を持参して渡すことができるので、非常に助かっています。今後、実際に開発の現場へ適用し、またその結果をフィードバックしてノウハウを整理していくことになります。今回はまず、その改善のベースになる開発標準をしっかりと作れたことに大きな意義があると思います。


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