前回(第2回)は、インドでの平日の過ごし方についてお伺いしました。今回は、現地の方とのふれあいもふくめ、休日のすごしかたについて、住友化学システムサービス株式会社の三木さん、小野さんにひきつづきお伺いしてみましょう。
ウイークデイは授業と予習でほぼ一杯だったといということでしたが、土日はどういう過ごし方をされていましたか。外に遊びに行ったりもしました?
私たちはプネに滞在していたのですが、プネの外にはほとんど出なかったです。
旅行はしなかったのですか?
アジャンタエローラという世界遺産には行きました。
石仏が有名なところですね。
そうです。壁画と石仏が有名なところです。現地の旅行代理店にコーディネートしてもらい、会社からもOKが出ましたので、私たちも行くことができました。バスで丸二日間行って来ました。旅行としてはそれぐらいですが、男性陣はムンバイにも出かけていました。
男性陣は日帰りでムンバイに行きましたし、プネから車で4時間くらいのジャンジャラポートに泊まりがけで行っていました。
そこはどんなところなのですか。
観光地ですね。海があって、砦が海の真ん中にあって船で行けるところです。すっかりリフレッシュして帰ってきていました。
お二人はプネの町中で、わりとのんびり過ごされていたのですね。
そうですね。一度、研修先のコーディネーターのインド人のお宅に二人でホームステイに行きました。それはよい経験でしたね。
インド人のお宅に泊まらせいただく機会はなかなかないので、とてもよい経験でした。
ありのままのインドの生活を体験できたのですね。そのときには、どういうところに驚いたり、面白いなと思ったりしましたか。
神様の像や絵がたくさん飾ってあったことですね。象の頭をしたガネーシャだったり、クリシュナだったり。
クリシュナ?
クリシュナはフルートを持った神様です。そのお宅には他の神様の像もありました。 インドの人は宗教を生活の中に取り込んでいて、とても信心深い人たちでした。生活の一部として宗教があって、それに基づいて家族の構成があるというのが、垣間見えました。
それはお宅に招かれないと分からないことですね。
それからインドの人は好奇心が旺盛なところがあって、私たち日本人が遊びに来たということで、アパート中の人が次から次へと…
見に来ましたね(笑)。
見に来て、ちょっとお話していくのです。子どもも大人も。家の玄関も常に開かれていて、誰でも入れるような環境ですから。
なるほど。「日本人ってどういう人たちなの?」と、見物に来るのですね。
はい、そうです。
ですから、いろいろなインド人とお話しできました。楽しかったですね。
それは英語でお話したのですか? ヒンドゥー語?
英語です。相手も英語で話されるので。
見に来たのは若い人と、子どもが多かったのですが、けっこうみなさん英語をしゃべれるみたいです。一方、おじいさん、おばあさんは英語をしゃべれなかったですから、年齢の高い方は英語を話されない方も多いようですね。
そのお宅で家庭料理もごちそうになったのですか。
はい。晩ご飯と朝ご飯をいただきました。
インドの朝ご飯というのは、どんな感じなのでしょう。
そのときに食べたのは、お米を黄色い香辛料で味付けしたもので、ちょっとぴりっと辛い、でもカレーみたいな味はしないものでした。
チャーハンに近い感じですね。それから、家族みんなでミルクを寝る前と朝に飲むのが習慣のようでした。牛乳配達の人が朝に新鮮なミルクを届けて、それをみんなで温めて飲んだりしました。
ミルクは牛のミルクだったのでしょうか。
ええ、たぶん牛です。ベジタリアンでも牛乳は飲んでも大丈夫らしいのですよ。
ベジタリアンにも種類があって、卵を食べてはいけないベジタリアンや、牛乳も飲んではいけないベジタリアンもいるみたいです。でも、私たちが知っているベジタリアンは、ほとんどが牛乳を飲んでいましたね。
曜日によって食べてよいものが違う人もいました。ベジタリアンになる日を曜日で決めている人もいるようです。基準が人によって全然違うので、ベジタリアンだから一概にこうとは決められないのです。
簡単に一括りにはできないのですね。それひとつとっても、インドの文化や国民性は面白いですね。
ええ、面白いですよね。
プネでの滞在でインド全部が分かるわけではないでしょうし、3ヶ月という期間限定でしたが、インドについてどういう印象を受けましたか? 研修のときの先生方もインド人ですよね。その先生方を、例えば会社の上司の方々と比べてみて、「やはりこれはインドならではのことだな」と思うところはありましたか。
一言で言うと、ストレートなところです。全体的に表現がストレートというのでしょうか。日本以上に、「分からないことがあったら、とにかくすぐ聞いてくれ」と、しきりに言ってくださいました。それから「僕たちは友だちだ」と、最初に言ってくださった先生がいて、フレンドリーというイメージが強いですね。「僕たちは友だちだから、そういう関係だと思って、なんでも聞いて」というスタンスで、面白かったです。
おそらくクロスカルチャーを深く理解している先生方なのだと思います。インドはカースト制度などコンサバティブな部分もあって、「先生は偉い、生徒は下」という考えもあります。それを敢えてフレンドリーにとおっしゃったのは「あなたたちの価値観も認めてニュートラルにやりましょう」ということかもしれません。
それから、クロスカルチャーの先生には、「日本人には表情がない」と、しきりに言われましたね。
言われました(笑)。
先生が授業で「分かった?」「分かった?」と問いかけても、みんな無反応なのです。心の中では頷いているのですけど、みんなそれを表に出さないので、先生からすると無反応に見えるわけです。
そのときの情景が思い浮かびますね(笑)。
ところで、インドに行く前と比べて、何かご自分が変わったと思われるところはありますか? もちろんITのスキルや英語も込みで。
今回の研修で、ITの基礎固めができたように思います。研修中、自分には全然IT知識やスキルが足りないことを痛感しましたし、弱点が見えてきました。自分の弱いところがよく見えたのは、成長するための大きな収穫でしたね。それはITだけではなくて、英語や日々の生活や、自分の性格にも言えることです。
実は国内でITを体系的かつ網羅的に学ぶという機会は、意外に少ないのです。でも網羅性がないと、自分はいったいITという知識体系の中のどこが分かっていて、どこが分かってないのか、どこが強みでどこが弱みなのかという判断ができません。それを知るためにも、一回体系的かつ網羅的に学んでいただきたいというのが、実はこのインド研修の狙いとしてあるのです。それを的確に汲み取っていただけてうれしいですね。 三木さんはいかがでした?
私も会社で4年間働いていたわけですが、それこそ自分が携わった業務の知識はあっても、それ以外はほとんど勉強もしていませんでした。今まで知らなかったことを「恥ずかしいな」と思う経験もあったので、よい機会になりました。 特に英語での授業なので、先生に質問するときも「どこが分からないのか」を伝えるのが難しかったです。それは日本語でも難しいことなのですけど、母国語ではない英語なので「どこが分からないか」を、毎回何とかして相手に伝えることを心がけました。それまでも、もちろん意識してきたつもりですけれど、英語で質問することでよりそのような意識が強まりました。 それから、帰国してから一度、上司が研修を受けた6人をご飯に連れて行ってくれたのですけど、そのときに「6人とも感情がストレートになった」と言われました。また「表現が分かりやすくなった」と言っていたので、自分では意識していなかったですが、客観的に見ても変わったのかもしれないと思います。
なるほど、それはよい変化ですね。 まさにおっしゃる通り、ただ「分からない」だけではなく、「何がどのように分からないのか」を説明しないと、先生はたくさん知識の引き出しを持っているのに、その中のどれを出していいか分からなくなってしまいます。 「何がどのように分からないか」を相手に伝えることが大事だということを体験されたのは、非常によかったと思います。そのお気持ちを忘れなければ、これから先、蓄積されるものが全然違ってくると思いますよ。
構成:萩谷美也子