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お客様に訊く、プロジェクト成功のポイントとは?「新基盤移行プロジェクトのPM支援」 豊田通商株式会社 守山嘉則様
 豊田通商様は、金属をはじめとするさまざまな原材料、生産部品等を扱うトヨタグループの総合商社です。豊田通商様金属本部の旧システムはメインフレームで構築されていましたが、メインフレームのサポート期限やエンジニアの減少といった課題に直面しており、新基盤への移行が急務となっていました。
 そこで始まったのがMAXプロジェクトです。この新基盤移行プロジェクトは全3期9年という長期にわたるものになりました。本インタビューでは、プロジェクト成功のポイントとなったステークホルダーマネジメントの秘訣をIT戦略部グループリーダーの守山氏に伺いました。

本事例紹介は、2017年8月に取材したものです。社名、人物の肩書などは取材当時のものです。


第1部 積極的なコミュニケーションで生きた情報を得る

 一般的なソフトウェア開発と同様、豊田通商様は開発作業を専門の開発会社に発注します。発注者である豊田通商様が要求を決め、開発会社がその要求通りにソフトウェアを開発します。しかしソフトウェア開発には様々な難しさがあり、開発会社だけでは解決できない問題も多々発生します。
 MAXプロジェクトでは当初、情報系子会社の豊通シスコム社をはじめ、多くの開発会社が関わるマルチベンダー体制だったため、より複雑かつ難易度の高いプロジェクトでした。また、商社のシステム固有の難しさもあります。豊田通商様の扱われる商材は多岐にわたり、さらに商流の複雑さや紐付き等の特殊さから、現場の業務も複雑化していました。そのような状況の中で要件定義を進める難しさがMAXプロジェクトにはありました。そのため、豊田通商様では、IT戦略部が積極的にプロジェクトに関与することで、困難を乗り越えていきます。

 発注側の企業は、いったんプロジェクトがスタートすると開発会社に任せっきりにしていくことがしばしば見られます。これに対して、守山氏のスタンスは徹底した現場主義です。守山氏がMAXプロジェクトに関わるようになって最初に目を付けたのが、マルチベンダーの垣根を越えた、ステークホルダーとの関係づくりです。必要な情報が円滑に行き来するような方策を打ちました。

 守山氏がMAXプロジェクトに参画したのは第2期からだったのですが、実はその段階では、プロジェクトの進捗が芳しくありませんでした。その中で、いくら現場ががんばってもプロジェクトの進捗が改善しない要因は、技術的なものよりも信頼関係にあるのではないかと考えました。
 守山氏はまず各社の担当者に話しを聞きに行くことから手を打ち始めます。発注側の企業自ら現場に足を運ぶことで、少しずつ本音の話が出てくるようになりました。当初はプロジェクトが滞りがちだったこともあり、時には厳しい言葉を返されることもあったそうですが、ここで折れては負けだと思って話を聞きに行き続けたそうです。

 話を聞きに行く相手も重要です。通常は各社のリーダーに足が向いてしまいますが、リーダーが必ずしもキーマンとは限りません。実際に手を動かしているサブリーダーや現場の担当者がポイントを押えていることもあります。各社のリーダーから会議で報告される”表面的には綺麗に見える状況”は本当なのかを疑い、「もっと他に問題・課題はないのか?」を確認していきました。各社の設計者、プログラマーなどいろいろな担当者に対して積極的に働きかけ、現場が抱えている課題を確認しながら、プロジェクトの生きた情報を吸い上げて集めることを習慣化しました。

第2部 見える化から始まるプロジェクトの一体感

 さて、ここまではプロジェクト運営が積極的なコミュニケーションにより円滑になっていったことをお伝えしました。そうした下地作りに加えて、PMOの設置、見える化などのさらなる工夫でMAXプロジェクトは成功への道を歩き始めます。

 まず目標として掲げたのは、プロジェクトオーナー(金属本部)の意識向上、IT戦略部とプライムベンダーである豊通シスコム社がユーザーのトップであるオーナーと円滑なコミュニケーションを取ることの2点です。ステアリングコミッティが経営層中心に運営されるのに対し、現場中心のPMOを設置し、現場とオーナーの距離感を近いものにしました。

 また、プロジェクト2期目で取り組んできた見える化をさらに進化させ、3期目からはQCD(Quality, Cost, Delivery)の見える化ボードを作りました。さらには、会議体の構成を変更し、週次の全体会議において、プロジェクト全体の進捗の見える化を行い、PMOではプロジェクトオーナーにサマリーして報告するスタイルにし、現場の状況や問題がタイムリーに伝わる仕組みとしました。その結果、100人以上もいるメンバーの隅々までがプロジェクト全体のQCDや自分のチームの進捗を簡単に見ることができるようになりました。
 見える化ボードの設置では、守山氏が全員を集めて説明を行ったり、カットオーバーまでの一日一日の大切さを実感してもらうため、半年以上前から稼働日までのカウントダウンを掲示したりもしました。

 PMOは豊田通商様とプライムベンダーの豊通シスコム社のみの参加であったため、定期的にほかの開発会社を巻き込んだ場を作り、プロジェクトオーナーの前で決意表明を行うことで、各パートの責任感を高めました。これが最終的に品質の良いシステムを作っていただくきっかけとなったと、守山氏は語ります。
 各工程で決意表明した目標を達成するたびに懇親会を開催しました。プロジェクトメンバー全員に声を掛け、区切り区切りでの達成感を分かち合うことで一体感が生まれます。このような交流の場は、100名にも及ぶ大人数になることもあり、違う会社、違う層の人と話せるように席次を考え、サプライズ企画を催したり、オリジナルグッズを配ったりと、工夫を凝らした場づくりを心がけました。すべてが、風通しの良い、なんでも言える雰囲気を作るための戦略なのです。
 現場に戻ると、チャレンジングな目標を立て、そのためのチェックポイントを設け、プロジェクトオーナーである金属本部と共有していきました。
 その結果、守山氏の信頼に応えるように、開発会社から色々な提案が生まれ、互いに建設的なアイディアを出し合い、活発に議論できる雰囲気になっていきました。
 いろいろな施策を守山氏が打っていったのは確かですが、「成果が出たのはユーザー部門、豊通シスコム、開発会社の協力があってのこと」と守山氏は話します。もちろん、プロジェクトの完了時も盛大に慰労会を開催し、大いに盛り上がったそうです。

第3部 プロジェクト成功の裏で進められてきた次に繋がる活動とは?

 成功裏に終わったMAXプロジェクトですが、守山氏はその裏で、金属本部に対して、さらに価値を提供していきたいと考えていました。IT戦略部として「ユーザーのために何ができるのか」を考え、具体的なアクションプランに落としていきます。それがMAXプロジェクトと並行して行っていた、金属本部の将来のIT戦略(IT活用)、保守サービスのCS向上施策という2つの活動です。これらをIT戦略部からの「積極的な提案」に繋げ、提供できる価値を高めたいとの思いがありました。

 まず、「攻めのIT戦略」について、ユーザーである金属本部には「長い間、MAXプロジェクトに時間とコストを費やしてきたが、本来であればもっと早い段階から攻めのIT投資を実施できただろう」という思いがあり、IT費用の見える化、IoTやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのアイディアを提案していきました。MAXプロジェクトの経験を生かして、ITでビジネスの現場に貢献していく仕組みを作りました。
 次に、「守りのIT戦略」としては、保守サービスにおけるCS向上の取組みを具体的な目標・計画に落とし込み、主に開発会社である豊通シスコム社の保守部隊が中心となり、金属本部のCS向上に繋がる活動を実践しました。この中では、サービス品質を維持・改善させるための行動基準をキャッチフレーズとしてまとめるなどの意識改革も実行しています。また、人材育成では、ユーザー(金属本部)のニーズに対して、要員のスキルを客観的な指標で評価し、保守サービスのあるべき姿を実現するために必要なスキルを把握、それを人材育成計画に落とし込む活動に繋げました。

第4部 ITIとの出会いを振り返って 豊田通商株式会社 名古屋本社(本店)

 MAXプロジェクトの推進と、その裏側での新たな価値創造の取り組み、その両方において、ITIのコンサルタントが守山氏を支援させて頂きましたが、守山氏とITIコンサルタントの関係は、MAXプロジェクト以前に遡ります。
 当時のプロジェクトもMAXプロジェクトの初期同様に難易度が高く、課題の多いプロジェクトでした。ここで、守山氏はITIと出会います。ITIから提案された信頼度曲線をはじめとする見える化の手法が、プロジェクトを立て直す上での重要な手立てになると感じ、積極的に取り入れました。コンサルタントが整理した情報を、トップ層への説得の材料に加え、守山氏が重要視するステークホルダーマネジメントに活用し、当時のプロジェクト再建に寄与しました。

 そんな守山氏にITIのコンサルティングの感想を伺いました。
 「ITIは、自分をはじめ、発注側であるIT戦略部の思いをくみ取って、開発会社ともバランスを取りながら、商売度外視で一緒に戦ってくれる仲間である」と守山氏は語ります。
 プロジェクト管理のプロとしてノウハウを駆使し、言われた事だけではなく、色々と提案してくれました。とくに見える化の部分ではITIの支援が効果的だったとのことです。プロジェクトを進めていく中では、一見正しく思えることでも根拠がないと相手を説得できません。その根拠を示し相手に響く資料を、ITIのコンサルタントは一緒に作り上げてくれました。非常に心強く感じたそうです。  ITIを別会社とは思ってはおらず、今後もパートナーとして支援を続けてほしいとのことでした。


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