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【第8回】マックス・ヴェーバーの問題分析テクニック


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前回、前々回はクラシック音楽の巨匠を題材にしましたが、今回はもっと堅苦しい社会学がテーマです! 何を隠そう(右側のプロフィールで少し触れていますが→→→)、
私の大学時代は文学部・西洋史学専攻で、卒業論文は「ワイマール共和国の崩壊」(※1)というガチガチの文系出身です。しかし、実はこの大学時代に学んだことが、私のシステム開発プロジェクトマネジメントに対する考え方の重要な下地になっているのです!

 

【 社会学とプロジェクトマネジメントの関係性 】

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歴史学や社会学では、例えば、ローマ帝国、ワイマール共和国など、人類の歴史上「実在した(する)国家や社会といった具体的なもの」が研究対象となります。それぞれの研究対象である国家や社会は、その時代背景やロケーション、周辺国家や近隣社会と密接な関係性を持ち、それぞれが「独自性」を持っています。それらユニークな国家や社会で起きている「歴史事象や社会事象間の因果関係や構造を抽出して、歴史の動きや社会の動きを論理的に説明」していくのが歴史学や社会学です。

例えば、「あれだけの栄華を誇ったローマ帝国が何故崩壊したのか?」や「第一次世界大戦の反省から徹底的に民主化を図ったはずのドイツ・ワイマール共和国から、何故ヒトラー政権が生まれたのか?」といったことを論理的に説明することで、現代社会や未来で同じことを起こさないようにする。。。

ここまでの説明を読めば、既にプロジェクトマネジメントとの類似性は明快ですよね。プロジェクトマネジメントの対象も「実在するシステム再構築などの具体的なプロジェクト」であり、そのプロジェクトはそれぞれが「独自性」を持っています。そして、現在プロジクトで起きている問題の根本原因を追究して、対策することでプロジェクトが失敗しないように舵取りする。また、過去のプロジェクトの成功や失敗事例を研究・考察することで新たな知見を得て、継続的改善や組織の成熟度向上につなげていく。

うーん、やっぱり歴史学や社会学とプロジェクトマネジメントは全く同じアプローチだと思いませんか!

「歴史学や社会学のアプローチは、
プロジェクトマネジメントにも通じている!」

 

【 理念型とプロジェクトの見える化 】

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さて、社会学の創始者とも言われるマックス・ヴェーバーは、ローマ帝国などの具体的で複雑な社会を分析する上で、「理念型」という重要な概念を提唱しています。ここは社会学を学ぶ場ではないので、私流にごくごく簡単に説明してみます。(※2)

「理念型」とは研究対象の社会の動きを説明する上で、特徴的な社会の性質に焦点を当てて、その部分のみを浮き上がらせて一つの架空の社会モデルを作り上げたものです。例えば、ローマ帝国の特徴をとりあげてローマ帝国型の社会というモデルを作り、研究対象としてその崩壊の原因を論理的に説明する、といった感じです。なぜ現実の歴史や社会そのものではなく、特徴的な部分をクローズアップする必要があるかというと、歴史や社会構造はそのままだと複雑すぎて、いろいろな要素が絡み合って本質がつかみづらく、論理的な説明がつけられないためです。

このアプローチは、プロジェクトにおける問題解決のアプローチと全く同じです。問題解決のためには、起きた事象を一つひとつ対策していくだけでは不十分です。なぜその問題が起きたのか根本原因を追究し、「プロジェクトにおける問題の構造」を分析した上で、効果的な再発防止を図ることが重要なことは言うまでもありません。その根本原因を追究する際に、プロジェクトの特徴的な性質に焦点を当てて、その部分のみを浮き上がらせてそのプロジェクトの「理念型」を作り上げると、問題の構造も把握しやすくなります。

また、これから着手しようとしているプロジェクトのシステム化要求事項や前提・制約事項などから、そのプロジェクトの特性を抽出し、いわばプロジェクトの「理念型」を作りあげた上で、そのプロジェクトに内在する不確実性をあぶりだし、不確実性への対応をプロジェクト計画書に盛り込むといったプロジェクト・リスクマネジメントにも活用できるはずです。

なお、本章のタイトルに「プロジェクトの見える化」と書きましたが、先手を打ったプロジェクトマネジメントを行うためには、単に「プロジェクトの状況」(品質、コスト、納期等)を見えるようにするということではなく、「理念型」の概念を使って「プロジェクトの構造」を見えるようにすることが効果的です。

なお、この作業は「プロジェクトの全体状況を俯瞰的にとらえる」ための一つのアプローチ方法であると考えられます。

 

【 プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 】

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マックス・ヴェーバーの重要な論文として、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」というものがあります。これも私流に簡単に解説してみますと次の通りになります。

「中世までのキリスト教は教会が支配していて『神→教会→信徒』という関係にあった。そのため、一生懸命働いて稼いだお金は、全て教会に差し出すことが神への信仰を示す行為であり、蓄財はバチ当たりな行為とみなされていた。しかし、教会の腐敗が進んだことに対して宗教改革が勃発し、『教会からの解放』が実現したことで『神→信徒』の直接の信仰関係が確立された。その結果、一生懸命働いて稼いだお金は教会には差し出さず、また浪費せずに蓄財することの宗教的正当性を得ることによって、資本の蓄積が加速されて資本主義の発展につながった。」

マックス・ヴェーバーは「宗教改革と資本主義」「宗教と経済」という、全く関係なさそうなものを結び付けて歴史のダイナミズムを説明しています。このような素晴らしい気づきは、上記の「理念型」などのテクニックを使うことで得られたのでしょう。実に素晴らしい成果だと思いませんか!

そうです。私も本ブログ「新感覚!プロジェクトマネジメント」を通して、プロジェクトマネジメントについての新しい視点を提供することで、このような素晴らしい気づきを皆様と共有してみたいと考えているのです!

それでは次回もお楽しみに★          < 前回 | 目次 | 次回 >

工藤武久

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※1 「ワイマール共和国」とは1919年~1933年まで存続したドイツの共和国。第一次世界大戦後に民主的な政権を目指して発足したものの、小党乱立や大恐慌などの混乱の中、民主的な共和国は崩壊し、ヒトラーによる独裁政権の誕生を許すこととなる。
・林 健太郎(1963)『ワイマル共和国―ヒトラーを出現させたもの』中央公論新社(中公新書)
・「ヴァイマル共和政」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2013年4月6日 (土) 00:10 UTC
http://ja.wikipedia.org/wiki/ヴァイマル共和政

※2 マックス・ヴェーバーおよび「理念型」に関しては、以下を参照。
・山之内 靖(1997)『マックス・ヴェーバー入門』岩波書店(岩波新書)
・マックス・ヴェーバー 大塚久雄訳(1989)『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(改訳版)』岩波書店(岩波文庫)
・「理念型」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2013年3月28日 (木) 13:05 UTC
http://ja.wikipedia.org/wiki/理念型
・「マックス・ヴェーバー」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
2013年4月11日 (木) 11:13 UTC
http://ja.wikipedia.org/wiki/マックス・ヴェーバー

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工藤 武久
■株式会社アイ・ティ・イノベーション  ■コンサルティング本部 - 東日本担当 ■学歴:早稲田大学 - 第一文学部卒業 ■メーカー系のシステム子会社にて、主に官公庁向け大規模システム開発プロジェクトに、SE、PMとして携わる。立ち上げから運用保守フェーズに至るまで、システム開発プロジェクトの幅広い実務経験を重ねた。 ■2007年より株式会社アイ・ティ・イノベーションにおいて、大規模プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメント支援や品質管理支援等のコンサルティングを手がける。 ■PMP、情報処理技術者試験(プロジェクトマネージャ、システム監査技術者他)など。 ■Twitter:https://twitter.com/iti_kudot  ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■ ブログランキングに参加しています! ◆人気ブログランキングにほんブログ村 ↑是非応援(クリック)お願い致します↑ ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■主なタグ:統合, スコープ, タイム, コスト, 品質, 人的資源, コミュニケーション, リスク, 調達, ステークフォルダ

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