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【第30回】マスタースケジュール・フェチ

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突然ですが、あなたはプロジェクト計画書のどの部分に最も興味を惹かれるでしょうか?プロジェクトのスコープ記述ですか?それともプロジェクト予算でしょうか?

告白します・・・私は、マスタースケジュールが大好きです!

プロジェクトが開始してから、いや、プロジェクトの準備段階からプロジェクトが終了するまで、いつもいつもマスタースケジュールを眺めては、あれこれと妄想にふけっています。。。

 

【 目 覚 め 】

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自分が「マスタースケジュール・フェチ」であることに気付いたのは、確か、システム開発関係の仕事に携わるようになって4年目ぐらいの時だったと思います。当時、私は大規模プロジェクトのサブPM的な役割を担うことになりました。このプロジェクトは、一次開発だけで3年程度、二次開発含めると5年以上かかるような大規模なものでした。

このプロジェクトに携わるようになり、3年におよぶ一次開発のマスタースケジュールを目にしましたが、どうもしっくりきませんでした。それまでに経験したプロジェクトは、どれも1年ぐらいのものであり、マスタースケジュールさえ見れば、カットオーバーまでの先行きを概ね見通すことができていたと思います。しかし、3年間に渡るプロジェクトのマスタースケジュールを前にして、先行きがあまりにも不透明だったために、それこそ毎日毎日マスタースケジュールを眺めては、先行きをなんとか想像しようと必死だったのだと思います。

ある日、そんな姿を開発チームのメンバーに見られて、「またマスタースケジュール見てるよ!」「なんで、同じものをあんなに何回も見る必要があるんだろうか?」という感じで陰口がささやかれているのに気付いてしまったのです。その陰口を聞いて、はたと気付いたのです。自分がマスタースケジュールを眺めてプロジェクトの全体像をなんとか見通そうとしている行為は、他の人から見ると少し変わったものに見えるのかもしれない。。。

そうか、自分は「マスタースケジュール・フェチ」だったのか!

その性癖は現在に至るまで変わりがありません。今でも、周りの人から多少変わり者に思われようがお構いなしに、マスタースケジュールに執着を持ち続けています。確かに、マスタースケジュールは、プロジェクトに大きな軌道修正が入らない限り変更は入らず、そんなに毎日変わるようなものではありません。しかし、日々のプロジェクト状況に応じて、マスタースケジュールを通して想像(妄想)されるプロジェクトの将来見通しは、刻一刻と目まぐるしく変わって見えてくるのです!

別な言い方をすると、私にとってのマスタースケジュールは、将来を見通す占い師にとっての水晶玉のようなものです。その時々の状況やステークフォルダーたちの運勢などに応じて、プロジェクトの先行きは目まぐるしく変化しながら映し出されるのです!水晶玉(マスタースケジュール)自体は、シンプルで変わり映えしないものであっても、そこに映し出される将来像は刻一刻と変わっていくので、何度見ても飽きることはありません。とりわけ、今まで「見えていなかった部分」が少しずつ見え始めてきたときには、本当にゾクゾクしてしまいます。。。

 

【 マスタースケジュールはリスク・マネジメントの要(かなめ)である! 】

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当ブログの 【第4回】プロジェクトにおける問題とは何か? を思い出してください。ここでは、プロジェクトにおける問題を発見する物差しとして、プロジェクト計画書が使えるということを考察しました。中でも、プロジェクト計画書の要(かなめ)であるマスタースケジュールは、最も重要な問題発見のための物差しだと言えます。

マスタースケジュールはプロジェクトの全体像を表わしているはずなので、プロジェクト全体の問題・課題、および、将来的にプロジェクト目標に影響を与えるかもしれない不確実性(すなわち、リスク)を識別するためにはもってこいの道具になります。もちろん、プロジェクト目標にマイナスの影響をもたらすリスクだけでなく、プラスの影響をもたらすリスクについても識別することが可能です。

一般的にマスタースケジュールには、プロジェクトの全体像を示すために、次のような情報を盛り込む必要があります。

  1.  リリース日、仕様凍結期限、環境構築完了期限などのプロジェクトの主要マイルストーン
  2.  テスト計画書、移行計画書等の段階的に詳細化される予定の計画類の作成スケジュール
  3.  プロジェクト全体のクリティカルパスとなるタスクを中心とした主要タスクの工程ごとのスケジュール
  4.  ステアリング・コミッティ、品質評価会議、移行判定会議等のプロジェクト全体の意志決定を行うための主要な会議体
  5.  周辺システムや他プロジェクトとの接合ポイント、現行システムの保守凍結時期等、プロジェクトに影響を与える可能性のあるプロジェクトを取り巻く外部イベント
  6.  できれば、マスタースケジュール上の主要タスクごとに、実施責任者や開発規模等の情報

こうしてリストアップすると、ずいぶんたくさんの情報をマスタースケジュールに盛り込む必要があるように感じちゃいますよね。しかし、マスタースケジュールの目的は、プロジェクト全体を俯瞰するためのものであるため、情報量が多すぎると、一見して全体を把握することができず、本来の目的が達成できなくなってしまいます。せいぜいA3用紙1枚程度に収めたいところです。ということは、マスタースケジュールには、プロジェクトの全てのタスク、イベント、情報が盛り込まれるわけではなく、プロジェクト管理上の重要ポイントに絞って記述することになります。

一言で「ポイントを絞る」と書きましたが、プロジェクト管理上の重要なポイントとは何でしょうか?プロジェクトを管理する目的は、プロジェクトを成功に導くことです。プロジェクトの成功とは、プロジェクト目標を達成することで得られます。つまり、プロジェクト目標に影響を与える事象や状態をコントロールすること、つまり、プロジェクト・リスクへの対応がプロジェクト管理の目的になります。したがって、プロジェクト管理上の重要なポイントとは、プロジェクトの中でリスクが内在していそうな部分と考えられるのです。

マスタースケジュールを作成する際には、プロジェクトの全ての情報を網羅的に盛り込むというアプローチではなく、プロジェクト・リスクが内在していそうなポイントを中心にメリハリをつけながら、盛り込むべき情報の取捨選択を行うという感覚を持つと良いと思います。

「マスタースケジュールは、リスクが内在していそうなポイントを中心に作成しよう!」

このことを踏まえて、もう一度マスタースケジュールに盛り込むべき情報のリストを確認してみてください。1~6のいずれも、プロジェクト目標やプロジェクトの進行に何か影響が出そうなポイントが記載されていますよね。つまり、このリストそのものが、一般的にプロジェクト・リスクが内在していそうなポイントだととらえることもできます。もちろん、プロジェクトの独自性に応じて、それぞれのプロジェクトごとにリスクが内在していそうなポイントは異なるため、マスタースケジュールに盛り込むべき情報も、自ずとそれぞれのプロジェクトごとに異なってくると言えるのです。

私は、これからもマスタースケジュールを見て、プロジェクトの将来像を妄想しつづける日々がしばらく続きそうです。そして、できれば自分と同じ性癖を持つ仲間が増えていくことを密かに願っているのです。。。

それでは、次回もお楽しみに!          < 前回 | 目次 | 次回 >

工藤武久

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工藤 武久
■株式会社アイ・ティ・イノベーション  ■コンサルティング本部 - 東日本担当 ■学歴:早稲田大学 - 第一文学部卒業 ■メーカー系のシステム子会社にて、主に官公庁向け大規模システム開発プロジェクトに、SE、PMとして携わる。立ち上げから運用保守フェーズに至るまで、システム開発プロジェクトの幅広い実務経験を重ねた。 ■2007年より株式会社アイ・ティ・イノベーションにおいて、大規模プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメント支援や品質管理支援等のコンサルティングを手がける。 ■PMP、情報処理技術者試験(プロジェクトマネージャ、システム監査技術者他)など。 ■Twitter:https://twitter.com/iti_kudot  ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■ ブログランキングに参加しています! ◆人気ブログランキングにほんブログ村 ↑是非応援(クリック)お願い致します↑ ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ ■主なタグ:統合, スコープ, タイム, コスト, 品質, 人的資源, コミュニケーション, リスク, 調達, ステークフォルダ

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