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基本的な思考法

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1 はじめに

前回の初ブログに色々と激励を頂いた。有難い限りである。まだまだ内容としてはこれからであるため、どのようなコメントでも頂ければ幸いである。(念の為断っておくが、内容はあくまで個人的見解に基づくものであり、当社の公式な見解を述べたものではない。色々と配慮のうえのブログですが、もし至らぬ点があればご意見頂きたく。)

さて、今回は私が考えるStrategyの基本なるものについて述べる。昔の野球マンガで感じたことから、Strategyの基本的な思考法とは何か?に関して語るものである。

2 Strategy無き勝利はない

昔、「キャプテン」という中学野球を舞台にしたマンガがあった。私はこのマンガが大好きであり、小中学生のころ何度も読み返した。今でも、レンタルして読んだり、自分の息子に読ませたりしている。主人公となるキャプテンは学年順に4名登場するが、みな途中で失敗と成功を繰り返し、人として成長していく姿には、今でも考えさせられる場面が多い。

その中でも、2代目キャプテンである丸井が私は一番好きである。丸井は前代キャプテン谷口を崇拝してよく彼を補佐し、また後輩には良き兄貴分として接する。非常に人情味あふれるキャラクターとして描かれている。

その丸井のキャプテン就任後の初戦が印象的である。春の選抜大会の1回戦で、下馬評では圧倒するも、相手チームのことをほとんど調査せずに(キャプテンのポジションも知らなかった)、接戦ののち味方の凡ミスであっけなく1回戦でサヨナラ負けを喫する。

書籍から確認する限り、丸井キャプテンは、相手と自分を比較しそれがどれだけのものか、強いのか、弱点が何かも調べず、それでいて自分たちの弱点も強化することができなかった。強い意思でチームを引っ張ろうとするも、かなりの激情家であるからか、勝つための戦略を考えることが無いに等しかったということである。

これを受けて、普段の仕事でもどうだろう。自組織で、新たに情報システムの企画などを考える場合など、こんな試合のようなことは無いだろうか。

言うまでもなく、情報システムとはその開発を終えればGOALというものではない。その利用の結果としてきちんと価値を生み出せているのか?が重要である。

丸井キャプテンのように、相手は関係ない、自分たちのプレーをする、という姿勢も時には必要であり美しい。しかし、それで負けてしまってはやはり意味が無い。本来的には「○○高校(相手校)に勝つには・・・」「こうすれば勝てるか」をもっと考え、その為の行動をする必要があったのである。

3 Strategyの基本=シンプル

前章(前置き)が長くなったが、この章ではその「こうすれば」をどう考えるか?といった思考法について述べたい(*1)。

まず思考法とはシンプルなものでないといけない、と思う。例えば、二次方程式の解の公式、気体の状態方程式など、そのパターンやメカニズムがシンプルであれば使いやすい。つまりそれは広くよく使われるための必要条件であると言える。現実の世界では気体の状態方程式が完全にあてはまるケースなど皆無だが、それでもまずは思考のスタートとして使ってみるはずであり、それから現実の解を探求するものである。

ということを思いつつ、私のStrategy思考法を図1にて示す。これは私がITストラテジストの試験の準備のために書籍[3]に目を通し、少しアレンジし、覚えたものである。それだけでなく、今でも現在の業務でよく利用している。

簡単にいうと・・・まずは目指すべきVisionが何か?つまり「Vision策定」が前提であり、その次に戦略策定の流れに入る。そして自分たちの強みや弱みは何か、相手はどうなのかの「環境分析」、自分たちはどこで戦うのかの「ドメイン分析」、最後にそれらをまとめて「戦略策定」である。

ただIT戦略などの場合、その企業の事業戦略に準じる必要が往々にしてある。その場合はアレンジして「事業戦略の理解」も前提としておく(図の左下の点線部)。

先述した野球の例だと、Visionは「どんな相手にでも勝てるチームを目指す(=全国優勝)」であろう。そして、①自チームの強みと弱みを明確にし、相手チーム群との差を分析する ②地区大会、全国大会をドメイン(*2)とし ③具体的なスケジュールや特訓メニュー、戦い方を策定する -であろう。そしてあとは実行あるのみである。

まあ、極めてシンプルに述べるとこうなる。日常的にこれに沿って気楽に考えるようにすると、色々と役に立つかもしれない。例えば実際の現場で、自分の属する組織の状態や立ち位置を定期的に分析し、ドメインを見直し、アクションを考え直す。そういう議論をチーム内でたまにでも実行すると面白い。

4 ビジネスの場合

残り字数が少なくなってきたので、最後に言い足りなかったことをまとめておく。

野球の場合だと勝敗基準が明確なので、例としては容易にすぎるというご意見があると思う。それはその通りである。現実のビジネスでは、「明確な相手より1点でも多く取ればいい」などと容易なものではない。例えば「利益増」のための成功のシナリオが事前に完全明確なケースは無いに等しい。

経営戦略とは、包括的には「企業の基本的長期目標・目的の決定、取るべき行動方向の採択、これらの目標遂行に必要な資源の配分を行うこと」(*3)などと表現される。現実には、資源(resource)配分を外部・内部環境の変化に応じて柔軟に変えたり、長期スパンで見て成長か現状維持かを決めたりする必要がある。また事業戦略であれば、「競争優位を構築するためどんな製品をどこの市場に出すか」(*4)などを策定するものである。基本的な思考法は先述したものと変わらないと思うが、スパン長く事前不明瞭が多く、不確実性が高いだけにより難しい。

あと、具体的にどう考えるか?という疑問は残るであろう。つまり、「環境分析」したり「ドメイン設定」したりするためのより具体的な思考ツールや枠組みは無いのか?というご意見もあると考える。それは次回に「フレームワーク」について述べる予定である。あまり期待されずにぼちぼちとお待ち頂きたい。

注記:
(*1) 念の為断っておくが、戦略についての体系的解説書は[3]や[4]のように多く出版されている。きちんとした理論などはそちらをご確認されたい。ただ現場をベースに、個人的見解として述べるものである。
(*2) これはそう言い切っていいのか微妙だなという想いはある。
(*3) [4]p.25参照。なお、[4]は最近の戦略論に関する書籍では非常にわかりやすく興味深い例が多いと思う。
(*4) [4]p.29を参考にした。

以 上

参考文献
※URLの最終アクセス日は何れも2014年5月3日
[1] Wikipedia 「キャプテン(漫画)」 http://ja.wikipedia.org/wiki/キャプテン_(漫画)
[2] ちばあきお、『キャプテン (4)』、集英社文庫コミック版(1995)
[3] 日本総合研究所経営戦略研究会、『この1冊ですべてわかる 経営戦略の基本』、日本実業出版社(2008)
[4] 十川廣國(編集)、『【経営学イノベーション】2 経営戦略論(第2版)』、中央経済社(2013)

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東崇城
2015年2月末で退職いたしました。 本人の了解を得て、ブログはしばらく掲載いたします。 (株式会社アイ・ティ・イノベーション/コンサルタント ■大阪府枚方市出身 ■1997年 京都大学 農学部農林経済学科(現 食料・環境経済学科)卒業 ■アビームコンサルティング、日本IBMにて、主に証券、保険系のシステム開発プロジェクトにて要件定義から設計、開発、テストまで広く多く経験を積む。2008年より当社にて、主に通信系企業の品質管理支援、マネジメント支援、組織活性等のコンサルティングを担当 ■情報処理技術者試験(プロジェクトマネージャ、ITストラテジスト他)、品質管理検定1級。都内の夜間大学院にてMOTを学ぶ ■日本ITストラテジスト協会(JISTA)正会員 ■趣味は水泳、数理プログラミング、サブカル鑑賞 ■目指すは「歌って踊れるPMO」)

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