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CIOの思考(続き)

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1 はじめに

えー前回のブログが8月27日でしたので約3週!間が空いてしまい、前回何を語ったのかの復習からしなければならない状態であります。

9月ももう後半である。先日、実はもう年末年始の飛行機の予約をした。正直、焦っている。この時代の速さに(笑)

さて今回は前回の宿題から片づけなければならない。CIOが経営企画会議に参加すれば、知識移転が進みより確実性の高いIT戦略になるだろうが、CEOがIT戦略に関与するのはよろしくないのでは?という疑問を投げかけて、前回は終了した。今回はこの件について述べていく。

2 CEOのIT理解不足とCIOの・・

前回紹介した海外のジャーナルでは、この原因について、以下のような見解を述べている(*1)。

  • CEOが、ITについての理解が足りないか、もしくはITの重要性に対する気概が足りない
  • CEOに技術的な知識が不足しているがために、問題の決議に不本意なところがある
  • CIOは、ITの手段や方策に対し問われたら、正確な説明ができるべきである(のにできていない)

出典:Grover + Albert(2003)

前の2つはつまりCEOに責があるとする見解、最後のはCIOが原因とする見解である。どちらも外れてはいないし、あり得る話だろう。

ここで考えたいのは、このようなことが何故に起こるか?ということである。CEOのIT技術に関する知識が不足しているのなら、それをカバーするのがCIOであろう。また、CIOが正確に説明できないというのは、その個人の言語化能力の問題もあるかもだが、何かバイアスがある?のかもしれない。

ざっくり言うと、CEOがもし自身の立場を気にして、自身のIT理解不足さておき、IT戦略に関するレビューし意見を言うものであれば、確かに不本意な結果になるかもしれない。また、それを感じながらも、相手がCEOという立場ゆえにフォローも何もできないようなCIOであれば、CEOのコメントは単なる「口出し」であり、効果はない。

そう考えると、CEOのIT知識云々が重要なのではなく、互いの立場への過剰な意識が問題ということが根底にあるのだろうか。

対して、前回述べたようなCIOが経営企画に参画するスタイルであれば、CIOが自分の中で経営戦略を昇華できる。そして、IT戦略の確度も上がる。CEOのIT戦略への関与と比較すると、そちらがやはり有効といえよう。

3 つまりは相互の認識とCIOの強固な想い

前章の通り、結局は立場ゆえの問題ということにこの件は帰着できそうである。ただし、このジャーナルの見解だけでその結論とするのはやや弱い。

更にこの根拠となるような文献などないものかと探してみた。2年前とやや古いが、元ソニーCIOの長谷島氏の見解である(*2)。長谷島氏は「『天の声』がトップから降ってくると期待してしまう」のは誤解と強調している。

CIOはCEOの補佐官であり、IT戦略の立案、実現を通じてCEOの戦略遂行を支援する役割を担う。しかしそれは、「CIOはCEOの指示通りに動けばいい」というわけではない。
(中略)
経営トップがITについての相当の見識を持ち、CIOの役割について理解しているという状況は、好運かつまれなケースではないか。トップに期待し過ぎてはいけない。トップの理解が無くても、本質的に解決しなくてはいけない問題があれば、誰が何と言おうとやらなくてはいけない。やらなくても文句を言われず、やってもすぐには評価されない。こうした課題に信念を持って取り組む勇気がCIOには求められる。

出典:日経情報ストラテジー 2012年9月号

この見解は、前章の考察を概ね支持するものといえる。

日本の企業の場合、トップの一言が「天の声」というケースが確かに多くありそうである。更にいうと、あくまで個人的な見解だが、障害発生時にのみ周囲より関心を示され、営業部門のように目に見えるプラス成果を出しにくいのが、一般的な「情報システム部門」であろう。そういう・・ちょっとした引け目というか、そんなマインドをCIOが持っていると、なおさら社長の声が「天の声」に感じるのもやむなしということだろうか。

CIOには、そういう雰囲気をはねのけるような、情報を扱うトップとしての強固な気概が必要ということか。確かに、そのような気概をもって、CEOとも誰とも、きちんと議論できるようなマインドはCIOとしての必要条件だと理解する。

——
ただ、、長谷島氏はそうは仰るが、障害発生時にだけ目立つような環境下にずっといると自己肯定感が弱まり、実際はなかなか困難なのかなと思う。マインドの向上や維持は容易ではないだろう。

それに、技術の視点でモノゴトを考えざるを得ない環境であるため、利用者視点はなかなか身に着き難いと想像する。それゆえに、役員にITの効果についてうまく説明できないということも、現実的にはあり得るかもしれない。

何かネガティブばかり述べて申し訳ないのだが、そうすると実は、CIOには情報システム部門「非」出身者がむしろ適任では?と考えが進む。

(次回へ続く)

注釈:
(*1) いくつかの見解を述べて、「未来の研究に託す」とある。そのいくつかの見解である。
(*2) 長谷島眞時氏は現在ガートナー ジャパンのエグゼクティブパートナーを務める。

最後まで読んでいただきありがとうございました!!!

参考文献
※URLの最終アクセス日は何れも2014年9月17日
[1] Kearns, Grover S., and Albert L. Lederer. “A Resource‐Based View of Strategic IT Alignment: How Knowledge Sharing Creates Competitive Advantage.”Decision Sciences 34.1 (2003): 1-29.
[2] 長谷島眞時、日経情報ストラテジー 2012年9月号「集中連載 誰も言わないCIOの本音 間違いだらけの4つの『常識』ロールモデル依存の危うさ」、日経BP社

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東崇城
2015年2月末で退職いたしました。 本人の了解を得て、ブログはしばらく掲載いたします。 (株式会社アイ・ティ・イノベーション/コンサルタント ■大阪府枚方市出身 ■1997年 京都大学 農学部農林経済学科(現 食料・環境経済学科)卒業 ■アビームコンサルティング、日本IBMにて、主に証券、保険系のシステム開発プロジェクトにて要件定義から設計、開発、テストまで広く多く経験を積む。2008年より当社にて、主に通信系企業の品質管理支援、マネジメント支援、組織活性等のコンサルティングを担当 ■情報処理技術者試験(プロジェクトマネージャ、ITストラテジスト他)、品質管理検定1級。都内の夜間大学院にてMOTを学ぶ ■日本ITストラテジスト協会(JISTA)正会員 ■趣味は水泳、数理プログラミング、サブカル鑑賞 ■目指すは「歌って踊れるPMO」)

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