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クラウドへの移行

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今回は、EAの階層の中で最も移り変わりが激しいが、最も企業活動へ大きなイノベーションをもたらすTA(Technical Architecture)の層にフオーカスを当てたい。私の経験からTAのパラダイムチェンジは5~6年に1回のサイクルで訪れ、直近では何と言ってもクラウドコンピューティングであろう。

クラウドは2006年、グーグル社CEOエリック・シュミットの発言に端を発し、2008年頃にかけて普及。私がその決定的パラダイムチェンジを実感したのは、2010年ガートナーシンポジウムでのグーグル社デーブ・ジルアードの講演スライドであった(図1を参照)。まさに左の図は鎖国、右は開国を物語っている。またクラウド時代のセキュリティ・ロックはノード毎なのが興味深い。この日を境にクラウドこそユーザ企業の目指すネットワーク・アーキテクチャであると確信を持つようになる。

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クラウドは企業活動に大きな変革をもたらすパワーを秘めており、社内情報システム部門はこれを積極的に取り入れ、自社のROIにぜひとも貢献したいと考える。1990年代にオープン環境にシフトして以来、長年悩まされてきたインフラ管理から手離れできるチャンスであり、相当のコストダウンも見込むことができそうだ。。。がしかし、既に10数年にわたって導入されてきたオープン系サーバは膨大な量に上り、いったいどこからどう手を着けてよいものか。また漠然としたセキュリティ不安も拭えない。またしても現実の壁が立ちはだかる。

でもここで諦めてはいけない。一気に数百台のサーバをクラウドに移行するのは大変だが、ステップbyステップでやり易いものから、その更新タイミングに合わせて実施すれば良い。セキュリティ技術も時代と共に進化こそすれど後退はしないハズ。ここでも段階的モダナイゼーションの考え方が重要となる。その優先順はおおよそ以下のようになる。(注、ここではプライベート・クラウドは対象外)①インタ-ネット共通認証サービスの加入(台数が少ない内は必須ではない) ②オンプレミスにある各種OA系サービス(メール、予定表、ファイルサーバー等) ③営業支援(SFA)系の外勤者の利用するアプリ ④生産管理、原価計算など他システムとのやりとりが比較的少ないアプリ ⑤その他アプリケーション・サーバー といった具合である。

ここでの優先順の決定要因は、他システム・インターフェースの数の少なさである。インターフェースが多いと、サイロ化現象に陥らない為にオンプレミスとの多くのインターフェースを構築する必要があるからだ。セキュリティ・ポリシーも要因の1つにはなるが、確固たる根拠がないものは説得性に欠ける。昨今ではSAPのAWS(Amazon Web Service)版もリリースされており、基幹系アプリも聖域ではない(この事実はデーブ・ジルアードの予測をも上回る)。

cloud2また別の観点として、社外から利用するアプリケーションもクラウドの優先順が高い。そもそも、インターネット環境下にあるPCやスマートデバイスから、厳重にロックされたイントラネット上のサーバにアクセスするのはあまりにも操作性が悪すぎるからだ。では、上記のような段階的モダナイゼーションを実行するにあたって、ネットワーク・アーキテクチャはどのような変更が必要になるのだろうか。ジルアード氏のスライドに立ち戻れば答えは一目瞭然である。アプリ・サーバーがインターネット上に出て行くと同時に社内ユーザも公道(インターネット)に出てゆくことになる。そのためのソリューションは、図2の如く拠点オフィスから公道へ出てゆくルートを作る必要がある(簡易ファイアウオールと共に)。

このような用意周到な計画を持ってすれば、Think big, start small. な緩やかな移行が、最小限のリスクで実行することができる。さらに言えば、計画通りに移行を達成するにはインフラ担当社員のモチベーションにも気を配る必要がある。なぜなら、クラウド化によってインフラ担当社員は自分の職域を失なうのではないかという危惧を抱くからだ。マネジャーは彼らの行き先の大半をアプリ担当へ、少数はクラウド管理へと予め決めておき、一人ずつ十分な説明をしておくべきである。ここでIT川柳を一句。。。。「イノベーション、抵抗勢力、身内にあり。。。。

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中山 嘉之
1982年より協和発酵工業(現、協和発酵キリン)にて、社内システムの構築に携わる。メインフレーム~オープンへとITが変遷する中、DBモデラー兼PMを担い、2013年にエンタープライズ・データHubを中核とする疎結合アーキテクチャの完成に至る。2013年1月よりアイ・ティ・イノベーションにてコンサルタントを務める。【著書】「システム構築の大前提 ― ITアーキテクチャのセオリー」(リックテレコム)

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