DX(デジタルトランスフォーメーション)推進コンサルティング 株式会社アイ・ティ・イノベーション

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【AI / Analytics カンファレンス4】開催レポート2:生活を利便化するAI技術と今後の展望


セミナーレポート[2]

第4回AI / Analytics カンファレンス『間違いだらけのAI導入失敗から生まれる目からウロコのAI活用~AIの使い方次第で、DXの妄想スパイラルから抜け出せる~』

2022年7月27日(水)に、第4回 AI / Analytics カンファレンス『間違いだらけのAI導入 失敗から生まれる目からウロコのAI活用~AIの使い方次第で、DXの妄想スパイラルから抜け出せる~』をWEBセミナー形式で開催し、AIの活用に関心のある多くのお客様にご参加いただきました。
本カンファレンスについて、3回に分けてご報告いたします。2回目は主催者、共催者の講演ダイジェストをお届けします。

セッション1

AI活用によるMaaSの実現~動画像データからの道路レイアウト推定技術の紹介~

株式会社アイ・ティ・イノベーション
高度先端技術 コンサルティングマネージャー 藪 彰文​​​​​

MaaS(Mobility as a Service)とは、出発地から目的地までの移動を1つのサービスとして提供し、最適化する考え方です。観光、飲食、医療など、移動に付随するサービスを追加して価値を高めることも可能です。
本セッションでは、MaaSを実現するためのAI活用の例について解説し、単眼カメラのパースビュー画像からトップビューの道路レイアウトと車両占有率を推定する技術をご紹介します。

MaaS実現のために活用されるAI

日本国内におけるMaaSの事例としては、カーシェア・ライドシェアのような新規移動サービスや、複数の交通機関をまたいで案内・予約・決済を統合するマルチモーダルサービスなどがあります。
MaaSにおいてAIはどのように活用されているのでしょうか。具体例としては、「車両の動きを推定するAI」、「AIオンデマンド交通」、「AI搭載ドローン」、「AI異常検知・予兆検知による車両整備の最適化」、「AI画像認識による事件事故の早期発見」、「需要予測に基づく走行エリア推薦機能」などがあります。

道路レイアウトのトップビュー推定技術に関する最新研究

比較的安価なセンサーを使って、単眼のパースビュー画像からトップビューの道路レイアウトと車両占有率を推定する技術の研究が進められています。シーンレイアウト推定や車両の挙動予測などに利用されるため、MaaS実現のためには非常に重要な技術です。

ITIでは、米・英・中・印の最新研究論文を幅広く調査した中から、実装するうえでの処理負荷を考慮に入れ、アーキテクチャの複雑性、性能、予測速度の点で最も効率的であると判断した「クロスビュー変換による単眼式道路シーンレイアウトの推定」(CVPR2021)によるアーキテクチャモデルをベースとして、道路レイアウトのトップビューを推定するAIを開発。パースビュー画像では隠れて見えていない領域を補完してトップビューに表示することも可能です。さらなる検出率向上のためには、日中/夜間、天候、対向車の有無、車種やカメラの向きなど、さまざまなシーンのデータを用いて学習させる必要があると考えています。


単眼のパースビュー画像からトップビューを推定するAIは、将来的には車両占有率を含むパノラマHDマップの生成や、Googleマップ航空写真との組み合わせによる道路属性予測の改善に活用できると考えられます。さらに、自動運転以外の多分野への展開が想定されています。

【藪 彰文 プロフィール】

1995年日本オラクル株式会社入社。Oracle DB導入のための機能評価や構築支援を行う技術SEとして従事し製造、金融、中央省庁を担当。2002年株式会社東芝(現東芝デジタルソリューションズ株式会社)入社。大規模DB統合を伴う開発プロジェクトのDBチームリーダーのほか、中央省庁及び外郭団体の大規模WEBシステム開発のプロジェクトマネージャーを務める。2019年株式会社アイ・ティ・イノベーション入社。これまで培ったDB/ITスキルをベースにAIシステム導入に向けた高度先端技術を担う。​

セッション2

令和3年度補正予算200億円。デジタル田園都市国家構想から読み解くAI​

Global Walkers株式会社
AIコンサルティングディレクター 髙﨑 裕喜 氏
取締役CTO 樋口 未来 氏

本セッションでは、「デジタル田園都市国家構想」をはじめとする各種の国家構想から、人々の生活に必要なサービスにAIがどのように活用されるべきかを考察します。また、社会課題の解決を目指すAI活用の例として、人流計測、リモートワーク向けAIシステム、サーマルカメラを用いた人・害獣検知の技術をご紹介します。

安全安心な暮らしを支えるデジタル技術とAI活用

政府が主導する「デジタル田園都市国家構想」とは、デジタル技術を活用して地方創生を目指すものです。構想に基づき、スマートシティや都市OSのようなデジタルの社会実装をいかにして進めていくかが課題となっています。大切なのは、住民の生活にとってデジタル技術がどのように寄与するかを考え、安全安心な暮らしを実現することです。
スマートシティ化を進める上では、都市の規模や特徴によって、必要とされる情報やサービスが異なることを理解しなくてはなりません。それぞれの課題に対する解決方法には、必ずしもAIを利用しなくてもいいケースもあるでしょう。その課題がなぜ発生しているのかを「マーケットイン」の目線で分析した上で、AIをどのように活用するかの検証が始まっています。

社会課題の解決を目指すAIの開発例

(1) 人流計測
「人間中心のまちづくり」を推進するためにニーズが高まっているのが、人流がどのように発生しているかのデータです。以前は手作業でのカウントでしたが、AIがカメラの映像を解析して人流を計測できる技術が発展してきました。
人流計測の技術には、「トラッキング」と「同一人物の対応付け」があります。トラッキングは、1つのカメラで異なるフレームに存在する同じ物体(人)に同一のIDを付与すること。同一人物の対応付けは、異なる時間、異なるカメラに写った同じ人に同一のIDを付与することです。トラッキングと同一人物の対応付けを組み合わせることで、街中での人流計測が可能です。

(2) リモートワーク向けAIシステム
パソコンの内蔵カメラにAIを搭載し、業務中の映像をリアルタイムにAIが分析することで、リモートワークにおける「人事制度(勤怠管理、勤怠スコアなど)」や「情報漏えい対策(のぞき見や画面撮影がないかなどのセキュリティチェック)」に利用できるシステムを開発しました。要素技術としては、顔検出、顔向き推定、物体検出などのAIモデルを活用しています。
ところが、プロトタイプまで作成したものの、売り上げにつながらず失敗に終わりました。コールセンターなどはコロナ禍でも出社する方針の会社が多かったことと、利便性よりも煩わしさやプライバシー保護が重視されたことが原因と考えています。

(3) サーマルカメラを用いた人・害獣検知
遠赤外線を検知するサーマルカメラは、人や動物の体温を検知できて、照明のない場所でも使える利点があります。サーマルカメラとAIを組み合わせて、森林の中の害獣を検知・監視するシステムを研究開発中です。

ここまでご説明したように、スマートシティに関する研究開発が進み、すでに一部の技術は製品化されています。ビジネスとして成立させるためには、導入の手間やコストを上回る利便性を提供できることが重要です。今後も継続的に技術開発を行っていく必要があります。

【髙﨑 裕喜 氏 プロフィール】

NEC、大広、電通を経て起業。プラットフォーム開発、都市OS実装、メタバース開発支援など、コミュニケーション×IoTを軸に各種事業のディレクションプロデュースに携わり、Global Walkers株式会社に参画。

【樋口 未来 氏 プロフィール】

株式会社日立製作所日立研究所、カーネギーメロン大学客員研究員にて車載ステレオカメラの研究開発、製品化などに従事。その後、グローバルウォーカーズ株式会社(現Global Walkers株式会社)を創業。専門は、コンピュータビジョン、Deep Learning。

セッション3

技術者が語る、クラウド×ビッグデータ×AIによる防災減災支援システムのアーキテクチャ

株式会社システム情報
DX技術本部 DX技術開発部長 足立 雅春 氏

防災減災支援システムは、災害リスクのリアルタイム可視化や発災後の被害推定、事前予測を行い、ダッシュボードで一元的に可視化する自治体向けWEBサービスです。地図にデータをプロットして、一目で状況を把握できるので、住民の生命や財産を守るための行動につなげられると期待されています。

本セッションでは、防災減災支援システムの構築プロジェクトを例に、全体アーキテクチャ検討のポイントと、失敗しないデータの集め方について解説します。

全体アーキテクチャを検討する上での3つのポイント

(1) クラウドサービスの選び方
システムを構築するためのクラウドサービスを選ぶ際には、サービスの特徴を知り、システムとの相性を考慮することが重要です。場合によっては複数のクラウドサービスを組み合わせて最適な環境を構築し、運用していくことも可能です。

(2) 提供データの選び方
システムとしてどういったデータを提供するか検討する際には、誰に向けたどんなサービスなのかを考慮する必要があります。防災減災支援システムの場合、ユーザーのニーズは「危険な状況を早く知りたい」、「どこが安全なのか知りたい」だと予想されます。それらのニーズに対して、人流・気象・衛星などの定量的データだけでなく、人々のSNS上のつぶやきなど、定性的なデータも提供しています。データを充実させることが精度の向上に直結します。

(3) タイムリーに情報を提供するには
防災減災支援システムには迅速な情報提供が求められます。しかし、全てのデータをリアルタイムに提供するには高い技術力が必要となり、コストもかかります。そこで、データに優先度を付けて、危険性の高い情報を早く届けられるようにしました。

データ集めで失敗しないための3つのポイント

(1) 形式の異なるデータをまとめる
防災減災支援システムでは、定量的データ(地図、表)、定性的データ(画像、テキスト)など、さまざまなデータを扱います。使いやすいシステムにするためには、形式の異なるデータに共通の軸を作り、横断して参照できるようにするのがポイントです。例えば、観測時刻を共通の軸としてデータを抽出すれば、状況を把握しやすくなります。

(2) 多種多様なサービスからデータを集める際のポイント
サービスごとのデータの細かな違いに注意し、ニーズによって使うべきサービスを見極めましょう。複数サービスを組み合わせてデータを統合することで、サービスレベルの向上につながります。

(3) データ選定後の注意点

どのようなサービスを利用する場合でも、正確な仕様をつかむことが重要です。サンプルデータだけを信じて開発するのではなく、実際のデータの中身を事前に確認するべきです。データと仕様が一致しているか、データの提供方式が想定通りかを確認し、リスクを洗い出しておきましょう。

【足立 雅春 氏 プロフィール】

独立系ソフトウェアベンダーを経て、2010年にSEとしてシステム情報に入社。2016年にソリューション部門の立ち上げに参画。​AI・RPA・クラウドを中心に技術部門の責任者として従事。

セッション4

暮らしに溶け込めるAI・溶け込めないAI​

エスディーテック株式会社
取締役副社長 CTO 鈴木 啓高 氏

AI開発を進める上で、開発者が考える「機能品質」と、ユーザーがどれだけ満足するかという「利用時品質」にはギャップがあることが多いのが現状です。最終的な製品の価値に直結する利用時品質は、AI開発において非常に重要なポイントです。本セッションでは、AIの利用時品質を高めるために考慮すべき点と、ギャップを埋めるための具体的なアプローチをご紹介します。

利用時品質の高い「安心」なシステムを開発するためのポイント

利用時品質を高めるためには、人間中心(ユーザー中心)の考え方で設計することが大切です。例えば、AIとユーザーの接点であるインターフェースのデザインを考える上では、見た目だけではなくユーザーとのインタラクションまでデザインする必要があります。その際、高度に発展したAIは、単なるツールではなくコミュニケーションをとる相手としてユーザーに認知されることを意識しましょう。

コミュニケーションは、受け手であるユーザーが成立させるものです。ユーザーが「安心」して使えるシステムは、機能品質を高めて「安全」を確保することに加えて、適切なインタラクションの積み重ねによって「信頼」を獲得することで実現します。

ユーザーとAIの適切なインタラクションを実現するためのアプローチ

では、適切なインタラクションの積み重ねとはどういうことでしょうか。AIの精度を上げるだけでは十分とはいえません。考慮すべきキーワードとして「予測誤差」があります。人間の脳は絶えず予測を繰り返しているので、予測と実際に起こったことのギャップ(予測誤差)が大きいとネガティブな気持ちになるのです。利用時品質の向上には、予測誤差の低減が欠かせません。
適切なインタラクションを実現するためには、2つのポイントがあります。1つ目は、処理がうまくいかなかったときにユーザーに対して他の操作を自然に提示することです。例えば、顔認証が成功しなければパスコードによる認証に切り替えるといった方法です。2つ目は、ユーザーに納得してもらうために、AIがどのように判断しているかを知らせることです。判断の根拠を説明できるAIを「eXplainable AI」と呼びます。例として、自動運転の車では、AIが道路や周囲の物体をどのように認識しているかをモニターに表示しています。eXplainable AIは開発者ではなくユーザーに向けて説明するものなので、データをどのレベルまで単純化して提示するかなど、ユーザーにとって最適な方法を探る必要があります。以上の2つのポイントに配慮して、AI開発を進めていくことが重要です。

【鈴木 啓高 氏 プロフィール】

株式会社エイチアイ取締役、HI Corporation America, Inc. CEO、株式会社U’eyes Design取締役を経て、2015年にエスディーテック株式会社の立ち上げに参画。 現在は「世の中の全ての製品の利用時品質を向上する」ことを目指し、そのためのデザインと技術の研究開発に取り組んでいる。主に自動車の統合コックピットにおけるHMIを対象に、ヒトに対する理解とデザイン・技術を活用し、ヒトとクルマの様々な状況に応じたHMIをよりダイナミックに生成する仕組み作りが主なテーマ。

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