DX(デジタルトランスフォーメーション)推進コンサルティング 株式会社アイ・ティ・イノベーション

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アンチパターン

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今回のブログは現在の大規模企業システムにおける幾つかの代表的アンチパターンについて書いてみたい。なぜ今このような事を書くに至ったかは、仕事柄多くの大企業システムに触れるようになり、既存システムの汚れ具合が、思いのほか企業によって開きがあることが分かってきたからである。本ブログではシステム統治が比較的うまく行っている会社は除外し、あまりうまく行ってなく問題山積のところを対象にしたい。このような会社の企業システムが、せっかく回復基調にあるビジネスの足を引っ張らない為に、「やってはいけない事」に早く気づいていただく事が目的である。

成熟度モデル図1はEAの成熟度モデルである。自社を評価することはあまり気が進まないだろうが、内向きになりがちな社内間接部門にあって、外の世界と比較してみることも時には必要である。今回は図中のBランクに達しないCランクの企業がそのターゲットである。ちなみにA、Bランクは既にアーキテクチャ・マネジメント・サイクルの軌道に乗っていると考えられるので、無意識でもアンチパターンには陥らないと思われる。また最下位のDランクの会社はこれからシステム化してゆく際の参考にしていただければ良い。以下に、「XXXXしてはならない」という標語とともに代表的アンチパターンについてその理由とともに敢えて辛口で記載してみた。

1.「ブラックボックスを“ラッピング”し放置してはならない」

中身が不明のものをラッピング技術により隠ぺいすることは、単に問題を先送りするだけで事態をさらに悪化させる。システム再構築をする際に必ずといってよい程、炎上の種になる。中身(業務)を見える化したものの存在が必須である。

2.「システム開発の全工程を“アウトソース”(丸投げ)してはならない」

部分最適が優先し全体最適の視点が欠落するので不格好なシステムになる。細部はともかく、どのようなシステムにしたいか?を他人に考えてもらう事自体、本末転倒である。作るものが良くわからないベンダーはリスク料を載せて請負契約することになる。

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3.「企業システムを“横展開(COPY&PASTE)“してはならない」

ハードウエア(機械や設備)はともかく、ソフトウエアはコピペした瞬間から亜種が生成されメインテナンスの大幅なツケを背負う。グループ企業に安易にCOPY&PASTEすることなく、いかに1つのソフトを複数個所でシェアーするかを考えなければならない。

4.「ユーザーヒアリングのまんま“UI主導開発”してはならない」

手作業を単にコンピュータに置き換えるだけではイノベーションは生まれない。せっかくの投資も冴えないシステムの山を築くことになる。「顧客に望むものを聞いていたら『もっと早い馬が欲しい』と答えたであろう」(ヘンリーフォード)。要求は開発するもの。

上記はいずれもユーザ企業がアーキテクチャ(システムの構造)を重視しない事からもたらされた現象である。しかしながら、これらはいずれも一見、ITのもたらす恩恵をふんだんに活用しているように思えるところが曲者(くせもの)なのである。ラッピング、コピー&ペースト、アウトソーシング、UI主導開発等いずれもEAにおけるTA(Technical Architecture)の層に位置する“ITがもたらすパワーの源“である。問題はこれを上手く活用するために、その上位に位置するAA、DA、BAとのバランスが取れた全体構造になっているかどうかということである。

本ブログシリーズの第一回「なぜ今アーキテクチャなのか?」に書いたように、企業システムは家電製品のようなコモディティではない。よって未だその構造にこだわらなければならない。今回は読者の皆さんに考えてもらう為に、あえて解決策を述べるのを差し控えたい。少なくとも上記4つのアンチパターンのうち1つでも心当たりのある企業の方は、どうしたらそれを避けることができるかを考えてみていただきたい。ユーザ企業自らが考えるところから、「アーキテクチャ主導の企業情報システム」が、その一歩を踏み出す事になるので。

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中山 嘉之
1982年より協和発酵工業(現、協和発酵キリン)にて、社内システムの構築に携わる。メインフレーム~オープンへとITが変遷する中、DBモデラー兼PMを担い、2013年にエンタープライズ・データHubを中核とする疎結合アーキテクチャの完成に至る。2013年1月よりアイ・ティ・イノベーションにてコンサルタントを務める。【著書】「システム構築の大前提 ― ITアーキテクチャのセオリー」(リックテレコム)

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