DX(デジタルトランスフォーメーション)推進コンサルティング 株式会社アイ・ティ・イノベーション

menuclear


カンファレンス開催レポート:AIの専門家が語る失敗例と対策

Pocket

セミナーレポート[2]

第1回 AI / Analytics カンファレンス『間違いだらけのAI導入 失敗から生まれる目からウロコのAI活用』

2021年2月18日(木)に、第1回AI / Analytics カンファレンス『間違いだらけのAI導入失敗から生まれる目からウロコのAI活用』をWEBセミナー形式で開催し、149名の方にご参加いただきました。本カンファレンスについて、3回に分けてご報告いたします。2回目は主催者、共催者の講演ダイジェストをお届けします。

セッション1

5年後を生き抜く為のDX推進
~製造業出身者が語る、継続的な発展を導くAI人材とは?~

株式会社アイ・ティ・イノベーション
高度先端技術部 アシスタントコンサルタント 伊藤 成顕

5年後のIT業界を考える上で、避けて通れない課題が「2025年の崖」です。この課題を乗り越えるために、多くの企業がDXに取り組んでいます。AIの導入・活用もDXの一つですが、AIプロジェクトは他のDXプロジェクトと比較して特殊性が高いため、要求されるスキルの性質が異なることに注意が必要です。本セッションでは、AI導入・活用のために求められるスキルと、それらのスキル不足によって起こる失敗の例をご紹介し、失敗しないためのアプローチを考察します。


4つのAIスキルと、スキル不足によって起こる失敗例

(1)課題設定力

AIで何ができるか、AI導入後にどうなるかを考慮できるスキルを指します。課題設定力が不足している場合によくあるのは、手段であるはずのAI導入を目的にしてしまうことです。何を導入するかを先に決めてから解決したい課題を探すので、手戻りが発生し、プロジェクトが迷走する原因となります。また、AIに過剰な期待を持ってKPIを設定するために、実現できなくなるプロジェクトも多く見られます。

(2)データマネージメント力

データとモデルとの最適な組み合わせを考えて、データ取得・加工を行えるスキルです。データマネージメント力が不足していると、業界の環境を考慮せずにデータ取得を行ってしまい、重点的に取得すべきだったデータがそろわないという失敗が起こります。

(3)モデル構築力(環境構築力)

最新モデルに関する知識を持ち、モデルのパラメータ調整を行えるスキルです。ディープラーニングなどの最新モデルにこだわりすぎて精度が向上しない失敗例は、モデル構築力が不足しているといえます。AIプロジェクトではモデルとデータの両方に目を向けながら、最適なモデルを選択していくことが重要です。また、検定などの統計的手法に関する知識も必要です。統計的手法を使わず、直感でAIの精度を評価してしまうと判断を誤る可能性があります。

(4)再学習の知見

AIを活用するためには、データや精度を評価して再度学習させる重要性を理解している必要があります。失敗例としては、AIリリース後にモデル更新や継続的な開発投資を行わないため、時間の経過とともにAIの精度が低下していくケースが見られます。

AI導入プロジェクトを失敗させないためには

上記でご説明したような失敗を防ぐためには、4つのAIスキルをバランスよく備えた「AI人材」が必要とされます。しかし、日本国内ではAI人材の需要と供給の差が大きく、人材獲得は難しいのが現状です。今後のアプローチとしては国内人材のみでなく、海外人材の活用も視野に入れるべきだと考えられます。アイ・ティ・イノベーションでは特にインドに注目して、AI人材の利活用についてカンファレンスを通じて情報発信していく予定です。ぜひ次回もご参加いただけますと幸いです。

【伊藤 成顕 プロフィール】

日本製鉄株式会社で電気・計装・計算機のプラントエンジニアとして従事しながら、AI含めた高度なシステム開発・導入も遂行。
2020年にアイ・ティ・イノベーションに入社。現在、海外を利活用したDX推進のコンサルティングを行う。

セッション2

ビジネスで「使えるAI」を実現するためのポイント

グローバルウォーカーズ株式会社
取締役CTO 樋口 未来 氏

グローバルウォーカーズ株式会社は、画像分野で「使えるAI」を開発している会社です。大量の画像処理を得意とするAIは、人や物(車など)の検出や識別、文字の認識、画像の加工やノイズ除去など、多岐にわたって活用されています。本セッションでは、画像分野のAI開発事例をもとに、開発における教師データ作成の重要性と、失敗しないために知っておくべきAIの課題と対策について解説します。

なぜ教師データが重要なのか

AI開発の成功例として圧倒的に多いのは「教師あり学習」を用いたものです。
教師あり学習とは、入力データと正解ラベルをセットにした「教師データ」で学習させる手法です。教師データは基本的には人間の手作業で作成されます。例えば、AIに学習させたい画像に対して、矩形付与や領域分割などの方法で正解ラベルを付与しています。教師データの量とクオリティは、AI開発の成否に関わります。教師データの量が少なすぎたり、不備があったりした場合、「実際にシステムを運用する環境をAIでカバーできない」、「AIの精度が低い」、「AI開発の目的を達成できない」といった失敗が起こるためです。

失敗しないための教師データ作成方法とは?

では、AI開発を成功させるための教師データを作成するには、どうすればよいのでしょうか。
まず、教師データの量に関しては、多い方がAIの精度が高くなります。単純に量だけを増やすのではなく、バリエーションを増やすことも重要です。教師データのクオリティに関しては、実際にシステムが稼働する環境のデータを含む方が適しています。そのため、公開されているデータセットよりも、オリジナルで作ったデータセットを使う(あるいは両方合わせて使う)方がAIの精度が高くなります。正解ラベルを付与する作業においては、担当者によるばらつきが出ないよう、正解の定義を統一しておく必要があります。さらに、認識したい対象に対する付与漏れがないようにすることでクオリティの高い教師データとなります。

教師データ作成における課題と対策

量とクオリティに注意して教師データを作成しても、最初からAIの精度が高くならないことは覚悟しましょう。
最初のデータセットのみでは精度が不十分であり、誤認識・未認識は必ず発生すると考えるべきです。
そこで、精度向上のために、試験運用などブラッシュアップの期間を設定します。認識に失敗した画像も収集して教師データに追加し、再学習を繰り返すことにより、精度を高めていきます。

ビジネスで活用できるAIを実現するためには、深い知識が必要です。高品質で大量の教師データの準備と、継続的な精度向上が重要であることを理解し、AI開発を成功へと導いていってください。

【樋口 未来 氏 プロフィール】

株式会社日立製作所 日立研究所、カーネギーメロン大学客員研究員にて車載ステレオカメラの研究開発、製品化などに従事。
その後、グローバルウォーカーズ株式会社を創業。専門は、コンピュータビジョン、Deep Learning。

セッション3

AI開発の裏側、お話します~PoCの失敗こそ『成功』である~

株式会社システム情報
取締役 ソリューション本部長 増田 航太 氏

株式会社システム情報は、各種業務系/基盤系システムの構築に関するサービスを行っています。本セッションでは、SIベンダーでAI開発の事業を立ち上げた経験をもとに、AIシステム開発のポイントや失敗例を解説します。また、AIシステム開発がPoC(Proof of Concept、概念実証)で終わってしまう場合も多いことから、PoCで終わらせずに成功させるために、何が大切なのかお伝えします。

AIシステムと従来型システムの開発における違い

AIシステム開発は、従来型のシステム開発とは進め方そのものが異なります。従来型のシステム開発では明確な仕様があり、決められたものを作っていました。一方、AI開発は最初の段階で明確な仕様を決められないので、決めながら作っていきます。スピードを重視するため、利用者からのフィードバックをもらって改善するアジャイル型の開発手法が向いています。

AIシステム開発の失敗例と対策

開発を始める前の段階でありがちな失敗例としては、AIなら何でも解決できると過剰に期待してしまうことです。AI以外の手段の方が有効な場合もあるので、AIありきで考えないようにしましょう。また、AI開発者が現場の業務を把握していないと、システムが仕様通りに動いても業務の目的を達成できない結果に陥りかねません。AI導入が本質的な課題解決に有効かどうか、よく検討しておく必要があります。開発を始めてから起こり得るのが、初期段階で高すぎる精度を目指してしまい、実現できないという失敗です。
ビジネス課題を解決するために必要な精度を明確にしておきましょう。さらに、AI開発で求められるスキルは従来型の開発とは異なるので、単純に開発者のリソースを増やすだけでは精度向上できないことに注意が必要です。精度向上のためには、ポイントを絞り込んで対応する方が効果的です。
AIのリリース後は、モデルの精度が徐々に低下していく可能性があることを理解していないと、安定運用ができずに失敗してしまいます。精度低下を見越した費用対効果を考慮しておく必要があります。

AIシステム開発がPoCで終わってしまうケースが多いといわれています。そうならないためには、PoCを開始する前にAIシステムの実現性を検討し、PoCを進める上では方向性が間違っていないか常にチェックを行うことが重要です。前項でご説明したAIシステム開発の失敗例と対策を参考にしていただければ幸いです。最も大切なこととして、PoCはあくまでAIの「検証」であることを忘れないでください。目的とする精度が出ないことも想定して、小規模・試験的に導入しましょう。精度が出なくても、それは「検証」の結果です。原因を分析して、次のステップにつながるノウハウを蓄積すれば成功に結びつきます。PoCの失敗こそ成功の礎となるのです。AI開発・導入は、一度の試みで成功することはめったにないといえます。成功させるためには、多くの試行を重ね、失敗の原因を分析し、解決策を見いだしていくことが重要です。ぜひ、実践なさってみてください。

【増田 航太 氏 プロフィール】

2007年に株式会社システム情報入社。SI事業のプロジェクトマネージャー、SI事業本部長を経て、2014年にソリューション本部を立ち上げ。AI開発やRPA、クラウドなどの新規事業の事業責任者として従事。

| 目次
Pocket

Categoryカテゴリー