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【第2回】人と、組織と、おでん屋さん

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前回、プロジェクトマネジメントがすべての方にとって役立つ考え方であることをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
それだけではまだピンと来ていない方も多いと思いますので、今回はPM力がどのように仕事で効力を発揮するのか、少し具体的に見てみましょう。

PM力で「仕事の成果」がどう変わる?

そもそも「仕事で成果を出す」とは、「仕事の目標を達成する」ことを意味しています。例えば、「ある商品の売り上げ5,000万円以上」といった「ノルマ」や、「今月中に企画書を提出」と言った「納期」が存在する仕事がありますが、これをクリアすれば仕事で成果が出ていることになります。
しかし、このような分かりやすい目標が常に仕事に設定されている訳ではありません。また、分かりやすい目標が示されていても、すべての条件が明確化されていない場合もあります。例えば、上司から「今月中に企画書を出して!」と期限付きの仕事を指示された場合、実は「中身はタタキ台のレベルでも良い」とか、「他の仕事に遅れを出さないよう作成すること」と言った条件が暗黙的に付随しているケースが良くあります。このように目標が曖昧な状態では、達成のための道筋が立たず、結果に対して適切な評価を行うことも出来ません。例え自分では成果が出ていると感じていたとしても、周囲から成果を認めてもらうことも難しくなってしまいます。
そこで、プロジェクトマネジメントの考え方ではまず「活動の目標」を明確化することを求めています。具体的な手法は別の回で紹介しますが、「段取り」の基本動作の中で、明快なゴールを設定し、また、そこに辿り着くための道筋を計画することを非常に重要視しているのです。そのことにより、計画と実績を比較しながら現在ゴールにどこまで近づいているのか「確認」し、そのギャップに速やかに対処しながら目標達成に向けた活動を着実に進めることが出来るのです。
先の企画書の例であれば、まず上司と達成条件をしっかり相談することで「今月中に提出」、「内容はたたき台」、「他の仕事の納期に影響しない時間内で」という3つの目標が明確化され、「来週から他の仕事が忙しくなるので、企画書は今週中に書き終える」と言った戦略的な計画を立てることが出来ます。そして、もし今週に書き終わらない可能性が出てきた場合には、同僚に手伝ってもらうといった対策を早めに考えられますよね。
つまり、プロジェクトマネジメントを適切に行うことで、ゴールやそこに至る道程が明確化され、さらにそのゴールに辿り着ける確率を高めることが可能になるのです。

仕事帰りに一杯飲む活動はプロジェクトではありません、一応

ここまでPM力を高めることが「個人の成果」にどのように繋がるかを見てきましたが、もう少し対象を拡げて次はPM力と「組織の成果」の関係も考えてみましょう。
しかし、そのためにはまず「プロジェクト活動」と「プロジェクトではない活動」について整理しておく必要があります。前回、「始まりと終わりがあり、これまでと異なる新たなチャレンジ要素を持った活動」を「プロジェクト」と呼ぶことを紹介しました。「じゃぁ、プロジェクトではない活動って一体何なの?」となりますが、実はこちらにも呼び方があるのです。
プロジェクトとは逆に、今までと同様の繰り返しであったり、継続的に行われたりする活動は「定常活動(それが仕事の場合は定常業務)」と呼ばれます。会社に通勤したり、経理の伝票を処理したり、仕事帰りにおでん屋で一杯飲んだりといった活動がそれにあたります。一応(ボソッ)。
なぜか歯切れが悪いのには理由があります。実を言うと、明確に「これはプロジェクト」、「こっちは定常活動」と単純に決め付けることが出来ないのです。なぜなら、同じ活動であっても経験値によってその捉え方が変わるハズだからです。例えば、おでん屋で一杯飲む活動も、新しく出来たおでん屋にはじめて行く時はちょっとしたチャレンジになりますよね。「分かり難い場所にあるな」、「高いかも・・」など小さなモヤモヤが出て来ます。あなたはこの活動をプロジェクトとして捉え、「地図を印刷してから行こう」、「念のためお金を下ろしておくか・・」と段取りを考え始めることになります。そして、無事お店に辿り着き、おでんとお酒を存分に楽しむことが出来れば、次回からは定常活動と捉えることが出来るようになるでしょう。
このように、最初はプロジェクトだった活動も、何度か同様の活動を行っていると新たなチャレンジ要素が薄れてどんどん定常活動化します。「その活動に対して不確実性を感じなくなった時」、プロジェクトは定常活動に変わるのです。

ビジネスとは、プロジェクトを定常業務化する過程

では、プロジェクトが定常活動に変わることは「嬉しいこと」なのでしょうか。
答えはシンプルで、「時間やお金を節約出来るようになるのでとっても嬉しい」ことです。プロジェクト活動をマネジメントするためには、不確実性に対応するために相応の手間やコストが掛かります。従って、重要なのは「如何に少ない回数でプロジェクト活動を定常活動に変化させるか」ということであり、そのためにはPM力を高めてプロジェクトの成功確率を上げることがポイントとなります。
これは、おでん屋の開拓だけではなく、ビジネスにも当てはまることです。例えば、顧客からある業務を受託するサービスを提供する場合、最初はプロジェクト活動としてきっちりとマネジメントしなければなりませんが、成功を重ねる中で業務はパターン化・定常化され、最小限のコストで一定品質のサービスを提供出来るようになります。一方、プロジェクトの失敗が多いと成功のパターンが見えず、いつまでも手間が掛かるプロジェクト活動を繰り返すことになります。
つまり、プロジェクトの成功を重ねて定常化される時、それは組織の生産性が向上し、ビジネスの競争力が増す時でもあるのです。不確実性のある事業を定常業務に変えて収益を生み、次のチャレンジにどんどんリソースを振り向けて行くサイクルの速さが企業価値向上を加速させる条件であり、「組織のPM力の総和」がそのキーとなるのです。

PM力の総和を高めるには?

組織のPM力の総和を高めるためには、まず教育等の人材育成策によって所属する各メンバーが自身のPM力を高めることが考えられますが、あわせて組織的な「仕組み、仕掛け」によってPM力を底上げする施策も組み合わせて進めることが非常に有効となります。例えば、プロジェクトマネジメントの基本手順を業務のルールとして組み込む、組織で行われる複数のプロジェクト型活動のマネジメントを横断的にサポートする機能を設置すると言った様々な取り組みが考えられます。
この連載では、プロジェクトマネジメントの考え方や手法と共に、そのような組織的な「仕組み、仕掛け」についても様々な具体的アイデアを随時紹介したいと思っています。
それでは次回より、いよいよプロジェクトマネジメントの基本的な考え方の解説に移ります。
お楽しみに!

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弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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