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『3分でわかる!システム企画一問一答』システム企画の主役はビジネス部門?IT部門?

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システム企画の主役はビジネス部門?IT部門?

数年前に大ヒットした映画「アナと雪の女王*」、通称「アナ雪」。

観に行かれた方も多いと思いますが、当時皆が議論を戦わせたのが「アナとエルサのどちらが主役なのか?」という話題。
タイトルで考えればアナですが、やはりエルサの存在感は大きかったですし、彼女が作中で歌うテーマソングがブームにもなりましたよね。

どうも、3か月ぶり登場の弘中伸典です(ちなみに私はエルサ派・・・)。

これまで様々なお客様のIT化の取り組みをお手伝いしてきましたが、システム企画を進める際に良く議論になるのが「ビジネス(業務)部門とIT部門のどちらが活動をリードすべきか?」というお話。

システム企画一問一答シリーズ、今回のテーマはシステム企画におけるビジネス部門とIT部門の関係についてです!

*「アナと雪の女王」ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ製作、2013年公開(日本公開は2014年)

Qシステム企画の主役はビジネス部門?IT部門?

これ、お話しする相手の方によって結構意見が分かれるところ。

「”システム”を企画するんだからIT部門が主体になるべきだろ~!」とか、「いや、ITはあくまで業務をサポートする手段なのだからビジネス部門が主役にならないと!」といった具合で、企業によってシステム企画時の両者の参画度合いに差異がありしますし、同じ企業内でもプロジェクトにより違うことがあります。

実際、企業や事業の特性、取り組もうとしているプロジェクトの目的などによって一概に正解は決められないのかも知れません。例えば、業務もシステム機能も変えず、保守期限切れが近づいたシステム基盤をバージョンアップするだけのプロジェクトでは、ビジネス部門が企画を主導する必要性は薄いですよね。

しかし、世の中全体としては、これまでビジネス部門の参画度合いが低いことが要因でイマイチなシステムが出来てしまうケースが多かったことから、「システム企画はビジネス部門が主役となってリードすべき!」と言うのが一応“正論”として認識されているところではあります。

具体的には、IT部門中心で進めた場合、ビジネス部門にシステムを渡して主役が交代する段で以下のような問題が起こるからです。

  • 自社の強みや取引先との関係性などへの考慮が不足し、競争力低下に繋がるような業務フローやシステムになっている
  • 現場の業務を十分理解しないままに業務フロー・システムが設計され、業務効率や使い勝手の悪い仕組みになっている
  • ユーザー要望がなんでもかんでも取り入れられ、複雑で運用に大きなコストが掛かるシステムになっている
  • 業務フローやシステムが変わることに対するユーザーからの反対意見を抑えられず、リリースできない

そこで、(1)最初にビジネス部門で”あるべき業務の姿”を検討しキッチリ明文化する→(2)その後IT部門が主体となってあるべき業務にマッチしたシステムを設計する、という段階を踏む方法が取られるようになってきました。ビジネス部門が主役になることで「現場と乖離したシステムが出来上がる」、「無駄の多い業務をそのままシステム化してしまう」といった上記のリスクを低下させることができるのです。

しかし、これにもデメリットがない訳ではありません。

ひとつは、ビジネス部門だけであるべき業務を検討すると、仕事の”プロセス”中心の検討になってしまいがちという問題です。

第4回に書きましたが、業務とは「プロセス(手順)」と「データ(情報)」の相互作用で成り立つものですから、普段から”情報”システムに携わり、情報を収集・蓄積・処理・流通させる観点から業務を見ているIT部門が検討に加わることも重要なのです。

二つ目は、”ITでどこまでできるのか”が分からないため、せっかくビジネスモデルを変革したり業務を根本的に改善したりする可能性を検討しても、「それは無理なんじゃないか?」となり、従来の業務の延長線での検討になってしまいがちという点です。
例えば、「定常的に雇用しているスタッフでフードデリバリーを行っているから、ピーク時以外の固定コストが無駄だな・・・注文単位で委託出来ないものか?」と検討しても、「スマホアプリと位置情報検知の組み合わせで実現できるのでは?」と言ったIT視点がなければ、せっかく事業を飛躍させるようなアイデアをスルーしてしまうことになりますよね。

DXの時代、ITにできることはどんどん拡がり、より柔軟な発想でビジネスのあり方を考えられるようになって来ました。これからのシステム企画では、やはりビジネス部門とIT部門がそれぞれの強みを活かし、相互のアイデアを尊重しながら将来の業務・システムを考えるべき、ということではないでしょうか。

映画に例えてまとめてみるとこんな感じ。

<レベル0>どちらも主役ではない(外部パートナー任せ)
主演不在の映画。
いくら撮影スタッフが頑張っても、企業価値向上に繋がる業務・システムを作り上げることは困難。

<レベル1>IT部門が主役(IT部門→ビジネス部門にバトンタッチ)
助演が頑張るも、主演の演技と噛み合っていない映画。
技術や手段先行となり、ビジネスの目的や現場と乖離した検討になってしまう可能性がある。

<レベル2>ビジネス部門が主役(ビジネス部門→IT部門にバトンタッチ)
主演の安定感あるものの、新しい見どころが少ない映画。
従来の業務や技術的制約に引き摺られがちで、柔軟な発想が難しい場合がある。

<レベル3>コラボレーション(ビジネス部門×IT部門)
アナ雪スタイルのダブル主演、2人の主役の演技が相乗効果をもたらしている映画。
より発想を拡げ、デジタル技術を駆使したビジネスの変革を検討しやすい体制。

最近はレベル3で企画を進めようとしている企業が徐々に増えてきているように思います。

例えば、私が講師を務めるシステム企画の研修でも、同じ企業のビジネス部門・IT部門双方から一緒に参加されるケースが出てきており、そのような回で双方が新しいアイデアを出し合って活発なディスカッションされている場面を目の当たりにすると、これからの企画のあり方を見ているように感じます。

それでは今回の答え。

Aこれまではビジネス部門が主役と言っていましたが・・・これからはIT部門とダブル主演で!

昨今DXブームを表面的に捉えて「AIを使ってなにかウチの会社で新しいことできないの?」といった技術・手段からの発想や、「ウチはすでに完成形の業務・システムを持っているからDXには慎重」といった現状ありきの発想ではなく、経営層やビジネス部門・IT部門双方の上位層が「ビジネス×ITによって自社の競争力を飛躍させるチャンス」と捉え、(一見地味ですが)双方の強みを活かすための戦略策定やシステム企画の検討体制・プロセスを見直してみることも将来のために欠かせない取り組みとなるのではないでしょうか。

それではまた次回!


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弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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