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『3分でわかる!システム企画一問一答』”プライスレス”お金に換算できない価値がある?定性的な効果をどう説明するか

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“プライスレス”お金に換算できない価値がある?定性的な効果をどう説明するか

最近サブスク型のサービスが大流行ですよね。
動画や音楽の配信、書籍の購読、オフィスアプリケーションやセキュリティ対策といったソフトウェア、英会話レッスンなど様々で、私も良く利用しています。

個々のサービスの月額費用は比較的少額ですが、気が付くとつい多くのサービスを契約してしまっており、「サブスクも積もれば山となる」の例え(?)のように、年間トータルで見ると結構な出費になってしまっているもの。
「不要になったらサービスを停止すればいいや」と気軽に契約するのですが、しばらくしてあまり利用しなくなったサービスもズルズル継続してしまいがちですよね。

先日ふと思い立って契約中のサブスクを洗い出して見直してみることにしましたが、これがちょっと悩ましい。
自身にとって費用対効果があるのかを判断しなければならない訳ですが、価値を金額換算することは難しいもの。

割と簡単だったのは、無料では動画の途中で広告が流れる→有料だと広告が表示されなくなる、というパターン。これは時間に換算できる訳で、月当たりの「動画視聴回数×広告再生回数×広告表示時間」を計算して、時間単価(1時間バイトすれば大体1,000円の収入があると考えて)を掛けてサービスの料金と比較すれば良いかと(広告を見ている1時間を節約できるのであれば、1,000円の価値があると考える)。

ただ、あまり利用していないものの特定のお気に入りのコンテンツが存在するサービスは大いに悩みました(結局そのコンテンツを買い取り型で購入してサブスクは切りましたが)。また、コンテンツがやや重複気味のサービスもあったのですが、選択肢が増えることで味わえる「選り取り見取りのプチお大尽気分」にも価値があるような気がして、なかなか踏ん切りがつかない。

途中からはなんだかシステム開発の費用対効果を検討しているみたいな「お仕事モード」みたいになってしまいましたが、結局半日掛かりで見直しを終えたのでした。ふぅ。

どーも、最近ブログの前置きがどんどん長くなりつつある弘中です(汗)。

もう3分過ぎているのではないか説は置いておいて、今回の本題に行きましょう!

Qシステム開発の定性的な効果をどう説明すべきか

システム企画を行う最終的な目的は、「システム開発の費用対効果を説明し、投資すべきか否か判断する」ことです。

一般的な考え方は、費用(初期コスト+ランニングコスト)と、システム化による効果(売上増加や人件費削減など)を比較し、一定年数(企業によって基準が若干異なりますが大体4~5年以内)で費用をペイできるかで判断を行います(この判断方法は専門用語で「回収期間法」と言います)。

そのためには、効果を金額換算する必要があるのですが、例えば以下のように定量化が難しいケースがあります。

  • 従業員満足度(ES)向上
  • ビジネスリスク軽減
  • 社内コミュニケーションの活性化
  • アイデア創発やイノベーションの促進
  • ブランドイメージ向上
  • 意思決定スピードの短縮化

このような効果は定量化せずに、「定性効果」としてシステム企画書に記載し経営層に説明することになりますが、説明された側も数値化されていない効果の判断にはちょっと悩んでしまいますよね。

従って、定性的な効果であっても頑張って数値化すべきではあります。

これには直接的、間接的な数値化の考え方がありますが、例えば、従業員満足度。
直接的には、毎年アンケートを取ってESを数値化し、今回の投資によって何ポイント改善させるのか説明する手法。
間接的には、ESが高まれば顧客へのサービス品質が向上し売上がアップするとか、離職率が下がって採用や育成コストが低下するといった考え方による数値化。

ただ、注意点として組織としてこれらの効果をKPI(重要業績評価指標、Key Performance Indicator)として測定する仕組みが必要になってきます。例えば現在の離職率が何%か分かっていなければなりませんし、またシステム化後に実際に何%改善したのかを測定して「システム企画で目指した離職率低減効果を実現できたのか?」という検証にも必要となってきます。
既存の仕組みがなければ、今回のシステム開発に合わせて特定のKPIを測定できる仕組みを構築しても良いかも知れません。

また、ビジネスリスクの軽減も、「リスク顕在化率×想定損害額」にて数値化が可能で、例えばソフトウェア、ハードウェアのサポート期間切れ(EOSL:End Of Service Life)に伴うシステム再構築の投資では、「サポートを受けられず現行システムを障害から復旧できなくなる可能性×その場合に想定される損失額」にて投資の必要性を説明できないか、検討するべきです(必要性が乏しければ、セキュリティ対策など最低限の措置を講じて延命させる選択肢も考えることになります)。

しかし、数値化にこだわり過ぎて「無理やり感」や「こじつけ感」があると経営層からツッコミが入るだけです。ブランドイメージ向上も顧客へのアンケートや株価を利用して定量化が可能ですが、これらは様々な要因に影響される数値のため説得力に乏しいですよね。

このような場合は素直に定性効果として説明すれば良いのですが、重要なのは自社の戦略と結びついているかどうか。または、戦略としての明示的な関連性がなくとも、自社が置かれているビジネス環境を踏まえた上でしっかりと定性効果を説明できれば納得感が高まりますよね。

それでは今回のアンサー。

A工夫してなるべく定量化、難しい場合は戦略と結びつけて説明しよう

私事ですが最近自宅のディスプレイの調子が悪い・・・
たまに画面がチラついたり音声が出なくなったりするのですが、ポンと叩くと治ったりします(昔のブラウン管テレビじゃあるまいに~)。買い替える費用対効果の判断に悩みながら、今日もポンポンしながらこの原稿を書いております。

こんな小ネタも提供してくれる健気なディスプレイ、”プライスレス”(なのかな?)

それではまた次回!


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弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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