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【第10回】段取り八分、腹八分

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新年明けましておめでとうございます!
本年も、皆さんの仕事に当連載を役立てていただくため、プロジェクトマネジメントの考え方をシンプルで分かりやすく解説できるよう頑張ります。引き続きお付き合いいただきますよう、よろしくお願いします。

やっぱり段取り八分なのです

今回より具体的なプロジェクトマネジメントの手順を見ていく訳ですが、最初は「段取り・確認・振り返り」の「段取り」から考えてみましょう。
段取りとは、すなわち計画を立てて、必要な準備を行うことです。皆さんも「段取り八分」という言葉を聞かれたことがあるのではないでしょうか。段取りをしっかりやっておけば、その仕事の8割は完了したようなものであるという意味で、プロジェクトマネジメントにおいてもこれはやはり非常に大切なものになります。
なぜ段取りが肝心なのでしょうか。もちろんプロジェクトを効率的に進めるため、と言うのが大きな理由ですが、他にも重要な効果を得ることができます。

まず、段取りをきちんと組むことによってプロジェクトの見通しが事前に把握できるようになります。専門的には実現可能性(フィージビリティ)が確認できると言いますが、仕事のために多くの時間やお金を使うからには、「成功するか失敗するかまったく読めませんが、とにかく着手します!」ではOKが出るはずもありません。十分に練られた段取りは、そのまま「この仕事は成功しそうだね!」と言う根拠として示すことができるのです。

また、段取りは人や組織が成長するためのベースになるもの、と考えることもできます。言うまでもなく、成長のためには仕事を通じて様々な教訓を得て、次の改善に繋げていくことが重要です。そして、この教訓を得るためには「予定」に対する「実績」のギャップ、つまり問題点が把握できるようになっていることが不可欠です。ギャップがなぜ生れたか(または、なぜギャップが生じることを防ぐことができたか)を分析し、理由を追求することにより多くの教訓が得られるのです。段取りは、そのために「予定」をハッキリさせておくことためにも必要なものです。いきあたりばったりで進めていると、プロジェクトが上手く進んだとしても、それが「たまたま問題が起こらず成功した」のか、「問題を乗り越えて成功できた」のかが分かりません。これでは十分な教訓を得ることができないのです。

しかし、腹八分でもあるのです

ここまでしつこく段取りの重要性を述べてきましたが、ある疑問を持たれた方がいるかもしれません。

「プロジェクトはこれまでやったことのないチャレンジングな活動だから、事前に完璧な計画を立てること自体が無理じゃなかろうか?」

イヤッご名答!正直に白状すると実はその通りなのです。プロジェクトでは先に進んで見なければ分からないことも多くあります。事前に100%精密な計画を立てることはやっぱり不可能なのです。ではどうすれば良いのでしょうか?方法は「段階的に詳細化する」と「プロジェクトを分割する」と言う2種類あります。

【方法① 段階的に詳細化する】
プロジェクトマネジメントには、「段階的詳細化」という基本的な考え方があります。先に進まなければ分からないのであれば、最初はザックリとした計画を立てておいて、然るべきタイミングで計画を詳細化するというものです。ここで注意しなければならないのは、分からない部分の計画が無い状態で仕事に着手するのではなく、あくまで「大枠の計画は立てておく」という事、そして少なくとも「最初に取り掛かる部分の計画は詳細化しておく」と言うことです。イメージとしては、例えば図1のような方法になります。

図1 段階的詳細化のイメージ
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【方法② プロジェクトを分割する】
プロジェクトを始めるにあたっては、「プロジェクト化する単位」と言う事を考えておかなければなりません。あまりに不明瞭な先のことまで含めて1つのプロジェクトとして考えると、全体の大枠の計画すら立てられず、段取りが組めなくなってしまうケースがあります(無理やり段取りを組んだとしても、途中で段取りを根本から見直さなければならなくなってしまうため、あまり意味がありません)。
このような場合には、プロジェクトを分割することを考えてみましょう。例えば、社内の業務をIT活用によって効率化するという案が出てきたとします。アイデアとしては何となく良さそうですが、実際にどのようにすればどれだけ効率化できるのか、そしてどの程度費用がかかるのかも漠然としており、このままではプロジェクトとしての道筋が見えません。このようなケースでは、まずこの案を「企画」としてしっかり練り込むためのプロジェクトを実行し、妥当性や費用対効果を確認した上で、実際に業務の改善を行う次のプロジェクトを実行するという方法を取ります。つまり、段取りを組んで実現可能性を確認するための独立したプロジェクトを1つ先に実行するという事になります。これは、図2のようなイメージとなります。

図2 プロジェクトを分割して実行するイメージ
hironaka_chart100104b

この例では、まず企画のためのプロジェクト1の中で「どのような業務改善を行うのか」、「どれだけの効果を見込むのか」、「費用や期間はどの程度必要なのか」と言った調査や分析、見積もり等を行い、その結果をプロジェクト2の計画として落とし込む仕事を行っています。プロジェクト1の結果に対してGOサインが出れば、プロジェクト2で実際の業務効率化の仕事に取り掛かる、という進め方になります。
さらに不確実性が高くなる大規模なプロジェクトの場合では、プロジェクト2に【方法①】の考え方を掛け合わせ、プロジェクト2の計画については段階的に詳細化するケースもあります。

いずれにしても、プロジェクトにおいては最初に頭からお尻まで100%詳細化された計画ができていなくとも、「まだ明確化できない部分については、“段取りの組み方自体の段取り”が決められている」状態まで来ていれば、腹八分の段取りで問題ないのです。

次回は、プロジェクトの計画を実際にどのように立てるのかを考えていきます。
乞うご期待!

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弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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