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【第18回】段取りの七:品質目標を設定する

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プロジェクト計画書の作成、今回は“品質目標”について考えてみましょう。

品質目標とは、簡単に言えば「プロジェクトによって生み出す成果物が満たすべき品質の度合い」のことです。
つまり、第12回(https://www.it-innovation.co.jp/2010/06/22-180532/)で定義した成果物について「どの程度の品質で作るのか」を設定するということであり、この品質目標によってプロジェクトで必要なコストや期間が大きく変わってくるため、計画段階で決定しておかなければならないのです。

「なんだか難解そうだな~」と感じられるかも知れませんが、品質目標が設定されていなかったり、曖昧であったり、関係者と合意できていないままプロジェクトをスタートさせると、後でモメることになりかねません。
最初は難しく考える必要はありませんので、まずは「どの程度の品質が求められているのか」関係者と相談し、合意できた内容を計画書に書き込むところから始めてみましょう。

品質目標の設定方法

基本的に、品質目標はその達成度合いが判断できる目標になっていなければなりません(そもそも達成度合いが確認できないのであれば、あまり目標を設定する意味がありませんよね)。
つまり、品質目標を設定するためには、品質を測定するための尺度や具体的な基準を検討しなければならないということです。

ただ、そうは言ってもこれが実に大変です・・・。

例えば、もし「おでん屋台の1年間の故障件数が平均5件以内」といった品質目標を設定することができれば、達成度合いは明確に判断することができます。しかし、この「5件以内」という数値が目標設定として適切なのかどうかは難しいところで、理由もなく「エイヤーッ!」と適当に決める訳にもいきません。

一つの方法としては「成果物を使ってプロジェクト完了後に何をするのか?」という目標とから逆算してくることです。つまり、このケースではプロジェクトで屋台を作った後におでん屋の商売をするハズですから、年間の売上目標が幾らで、その達成のためには屋台の稼働率がどの程度必要なのかを計算して品質目標を設定することです。
他にも、「これまで使っている屋台」が年平均で何回故障しているかといったデータを収集したり、「世間一般的な屋台」がどの程度故障するものなのかを調べたりして、その実績値をベースに目標を設定するやり方もあります。

または、「年間の故障件数」のような直接的な尺度は品質目標とせず、例えばプロジェクトの中で動作試験を行う予定を立てておき、「このチェク項目にすべてパスすること」という目標によって達成を判断する方法や、「アンケートで屋台の使用者の90%以上が満足していると言う回答を得る」という、人間の感覚的な評価を数値化して目標として設定するなどの手法もあります。

このように、達成度合いが判断できるような品質目標の決め方には様々な方法がありますが、プロジェクトの目的や成果物の特性に合った方法を選んで検討してみましょう。

高すぎる品質目標を設定しない

品質目標の設定にあたっての重要なポイントは、「高すぎる品質目標を立ててはならない」ということです。
図1をご覧いただけますでしょうか。これは、成果物の品質の良さと、それを実現するために必要となるコストの関係をグラフで示したものです。

図1 コストと品質の関係
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最初は投じたコストに応じて品質も高まっていきますが、あるところから幾らお金を掛けてもなかなか品質は上がらなくなって来るということがお分かりいただけると思います。
宇宙ロケットや発電所のシステムの開発プロジェクトであれば膨大なコストを投じてでも高い品質目標をクリアしなければなりませんが、多くのプロジェクトではそこまでの品質が求められることはありません。
これは日本人の思考特性なのかもしれませんが、「品質目標は不具合ゼロだ!」と言われているプロジェクトを結構見かけます。もちろん、気持ちの中で完璧な品質を目指すのは構いませんが、本当にそれを実現しようとすると膨大なコストがかかることを理解した上で、「成果物が最低限満たしているべき品質はどの水準なのか」という視点から、現実としての目標を設定することを心掛けてください。

いかがでしたでしょうか?
品質目標の立て方には多くの考え方や手法がありますので、興味を持たれた方は品質管理の専門書籍などでさらに掘り下げてみてください。

それでは、次回もご期待ください!!

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Profileプロフィール

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弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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