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ITの国際分業

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9月24日から10月2日まで9日間、米国へ出張した。
私は、これまでに80年代から20回あまり渡米し、さまざまなソフトウェアベンダー、ユーザー系に企業などを訪問してきた。
今回の出張の目的は、ワシントン州、レドモンドにあるマイクロソフト社での国際的なコンファレンスに出席するためである。マイクロソフト社は、20数年かけて全世界でビジネスを展開して来た。本社機能は、マイクロソフトキャンパスと呼ばれている広大な大学に似た敷地に十数か所のビルディングが、余裕を持って配置されており、敷地内に、バレーボール、サッカー、ラグビーなどができるグランドやジョギングコースがある。また、敷地内を巡回するバスが、運行されている。
創業者であるビルゲイツ氏の思いのひとつが具現化された姿を感じ取ることができた。やはり、実際に足を運んでこそ理解できることをいろいろ学ばせていただいた。

マイクロソフト社やオラクル社を代表とする米国のIT国際企業を10年余り訪問してきた経験から、ここ、レドモンドに来て強く感じたことは、ITの世界で明確に国際分業化が、進行していることだ。
米国は、従来からIT先進国であることには、変わりないが、ここ2−3年で企画とマーケティングと消費(ITの巨大な利用者)が、中心の国になりつつある。この傾向は、さらに進行しつつある。成功しているどのITベンダーも例外なく、マーケティングをより強化している。また、M&Aなども日常的に行われている。
米国での重点は、企画と営業である。このことをしっかりと理解しなければならない。大きな市場を持つ米国でこそ新たなソフトウェアの発想、企画、戦略が生まれる。
最新の発想や企画、マーケティングを学ぶのであれば、米国であるが、ソフトウェア開発方法や実装技術は、米国では学べなくなってきている。なぜならば、国際分業が急速に進んできているからだ。主力は、インドなどのオフショア先に移行しつつある。
一方、インドや中国などのオフショアでのIT開発国には、大規模な市場は、存在しない。インドは、歴史をさかのぼれば10数年かけて大規模なオフショア開発ができる能力を強化してきたといえる。ソフトウェア製品の開発に焦点を当てて考えてみると発想や企画は、米国のものであるが、基盤技術のかなりの部分も開発からアプリケーションの開発、保守、コールセンター業務は、急速にインドへシフトしてきている。
私は、8月にインドを訪問しているが、行って見るとこの分業シフトが、本流として巨大な力でもって進んでいることが感じられる。インドの人々は、生き残りと将来を賭けて進めている。インドの人々は、米国での基盤技術の開発に過去から携わってきたことと、IT技術に関する素質があったから今日があると考えられる。目標、ビジョンと持久力があり、目が輝いている。

さて、日本はどうかといえば、なかなか方向が定まらない。そこそこ豊かで、そこそこ実現してしまっているためだ。素質はあるのにやることが見つからない企業が多い。私の思い・願いを言えば、もっと経営者層に、外国へ出てほしい。そして何か新たな決断をしてほしい。確かに日本は、第二のIT市場であり、一定の開発力を持っている。しかし、私は、このままで良いとは思わない。日本の過去の成長時代を振り返ると日本の人々は、現在のインドや中国に匹敵するビジョンと持久力を持っていたはずだ。品質に厳しくスピードを要求される大きな市場が国内にはあるではないか。米国並みの新たな発想や企画も作れるし、勉強しだいでは、オフショアを利用し国際分業で成功することも可能である。製造業が、成功しているようにソフトウェアの世界でも独自の強みを持った製品やサービスの開発は、十分可能である。いまこそ、国際的な視野でアジア諸国を巻き込むビジョンを見つけて活動すべきであると思う。米国のモデルの良いところを真似て、さらに独自の路線を創るのだ。
日本には、欧米には無い独自の歴史と優秀な文化がある。
ソフトウェア産業は、価値のある文化・伝統の影響を強く受けている。すばらしいものを生み出せるだけの材料は、いくらでもあるはずだ。つまり、長年培った経験と文化からの発想が、価値のあるソフトウェアを生み出す源泉になる。独自の価値は、その国の人々の考えそのものの反映である。これからの日本のソフトウェア開発には、アジアの国々の力は、欠かせない存在になるだろう。文化と文化のシナジーから新たな欧米にはないものが生まれると、私は信じている。

今の日本のIT産業に少し足りないのは、ITの国際的水準での勉強と新しいものに対する少しの勇気だと思う。
私の実現したいことは、

・欧米とは別の次元でアジア発の発想、企画で、インド、中国などアジアの国々とすばらしいソフトウェアを開発すること
・アジア全体を市場に発展させて揺ぎ無い相互の技術流通を実現すること
・アジアから欧米へ製品やサービスを逆流させること
・ソフトウェアを通じて、価値ある文化交流を通してアジア圏をさまざまな形で豊かにすること

である。

経営者や管理者の皆さん、一緒にアジアに出て行かないか!!!

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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