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【第38回】プロジェクトにおけるリーダーシップ

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2012年、最初のテーマは「リーダーシップ」とさせていただきました。
「あれ、プロジェクトにおける“マネジメント”じゃなかったの?正月飲み過ぎて忘れちゃったの?」というツッコミが入りそうですが、いやいや、そうではありません(年末年始の飲み過ぎについては否定できませんが)。

プロジェクトにおけるマネジメントとリーダーシップ。
実は、どちらもプロジェクトの成功のために不可欠な要素なのです。

プロジェクトにおけるリーダーシップの必要性

この連載で度々出てきていますが、プロジェクトとは「新たな価値を創造する活動」を指しています。
従って、プロジェクトの成功とは単純に「作業が計画通り終わる」ということだけではなく、「他とは差別化された価値を持つ成果物やサービスが提供される」ことであり、クリエイティブで挑戦的な意味を持っているはずです。

ところが、この「クリエイティブで挑戦的な部分」には様々な困難が伴うために、プロジェクトはついつい安全な方向に流れてしまいがちです。「本当はこのような機能も入れた方が良いけど、前例がなくて難しそうだからやめておこう」とか、「工夫すれば1週間でできるかも知れないけど、期限が遅れると怒られるから2週間のスケジュールにしておこう」という思考がついつい働いてしまうものです。
その結果、作業は予定通りに終わるものの、多くの時間とコストを掛けたにもかかわらず「これまでと代り映えしないモノ」が出来上がることになってしまいます。

そうかと言って、プロジェクトのオーナー(お金の出し手)やプロジェクトマネジャーなどが高い目標を無理にメンバーに指示して実行させようとしても、上から一方的に押し付けられたムチャなゴールに対してメンバーは責任を持とうとしないでしょう。これでは絶対にうまくいきません。

そこで重要となるのがリーダーシップです。

プロジェクトにおいてリーダーシップが発揮できている状態とは、「リスクを取ってこれまでにない目標にチャレンジする」という意識が浸透し、行動によってそれが実現されていることだと私は考えています。
プロジェクトのメンバーが主体的にチャレンジを重ねることで、初めて期待以上の成果が生み出されることになるのです。

プロジェクトでリーダーシップを発揮するためには

では、そのような状態を作り出すために、プロジェクトで上に立つ人間は何をすべきでしょう。

重要なのは、プロジェクトのゴールを“正しく”設定することです。この時、プロジェクトの方向性をプロジェクトの母体となっている組織(一般的には、プロジェクトに対してお金や人の出し手となっている企業)のビジョンや戦略と結びつけて捉えることがポイントになります。
言い換えれば、単なるプロジェクトの“作業”ではなく、プロジェクトが生みだす“価値”をゴールとして定義するのです。
例えば、二つのプロジェクト計画書があったとして、次のようなプロジェクトの目的を見てどちらがチャレンジする気になるでしょうか。

<A>
・プロジェクトの背景:
町の屋台イベントの主催者から、おでん屋台の作成を依頼された。
・プロジェクトの目的:
おでんを提供する屋台を完成させる。

<B>
・プロジェクトの背景:
過疎化が進む町の活性化のため、屋台のイベントで全国にアピールして町への来訪者を増やすことになった。
・プロジェクトの目的:
日本中の人が毎年食べに来たくなる「やみつきなおでん」を提供する屋台を完成させる。

いかがでしょうか。<B>の方がプロジェクトを実行する意義というものが分かりやすいですね。

その上で、メンバーと十分にコミュニケーションを取ってこのゴールを共有し、全体の方向性のベクトルを合わせるのです。それによって、メンバー同士の一体感が生まれ、各メンバー自身がそれぞれにリーダーシップを発揮し始めることで困難に立ち向かうためのチームワークが生まれます。
もし、<A>で説明した場合には、メンバーの共感は得ることは難しいでしょう。「面倒だけど、とにかく祭りまでにおでん屋台が出来ればいいんでしょ」と「やらされ感」を持ってしまうメンバーもいるかもしれません。「何のためにプロジェクトをやるのか?」をしっかりとチームと“意識”のレベルで共有しておくことが重要なのです。

後は、最後までこの方向性や姿勢を失わず、モチベーションを保ち続けられるようチームに働きかけながら牽引していけば良いのです。

リーダーシップとマネジメントはプロジェクトの両輪

当然ですが、リーダーシップが発揮され高い目標にチャレンジするプロジェクトでは様々な壁にぶち当たりながら進むことになります。
いくらプロジェクトの方向性が共鳴できるものであったとしても、実現可能性が見えなかったり、効率が悪かったりするやはり途中で疑問が生まれ、モチベーションは下がり、最後は頓挫することになってしまいます。

そのために、プロジェクトはマネジメントしなければならないのです。

プロジェクトマネジメントは、「リスクをなくす」ものではありません。プロジェクトマネジャーとして、プロジェクトの実現性に目を向けるあまり、「チャレンジしない」ことを選択してはならないのです(チャレンジしないのであればそもそもプロジェクトではなく、プロジェクトマネジメントも不要なはずです)。

プロジェクトマネジメントは、いわば「リスクとうまく戦う武器」であり、リーダーシップによって示された方向性やゴールに対して実現性と効率性を確保する、言わば両輪の存在と言えるでしょう。

・リーダーシップ不在、チャレンジなきマネジメント→フル装備で近所の丘に登るようなもの
・マネジメント不在、実現性なきリーダーシップ→Tシャツでエベレストに登るようなもの

次回もお楽しみに!

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Profileプロフィール

弘中 伸典
弘中 伸典
1994年、徳山工業高等専門学校情報電子工学科を卒業。 SIベンダーに入社後、数々のシステム開発の現場で活躍。そこで得た多くの経験に感謝しつつも、IT業界における構造的問題に一石を投じるべく株式会社アイ・ティ・イノベーションに参画。問題の原因は、プロジェクトマネジメントの欠如にあると考え、日々のコンサルティング業務を通じてその必要性を訴え続ける。 専門領域は、プロジェクトマネジメントおよびシステム開発プロセスの標準化、PMOの設置と運営、IT投資マネジメントなど。 責任と誠意を持って問題解決に取り組む姿勢を大切にしている。 PMP(Project Management Professional)資格 保有

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