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アリストテレスの「ニコマコス倫理学」に学ぶその3: 徳を積み友愛に繋げる

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~ アリストテレスのいう“徳を積む”とは何か? ~

 私は、前回のブログで、人間は、善につながる生活を積み重ねることによって、徳を積んでいくことが大切であると説明した。今回は、徳を積むということについて、もう少し解説することから話をはじめよう。

 徳を積むとは、言い換えれば、人の力を、生活を通して向上させてゆくこと。では、人の力とは何であろうか。人の力は、判断力、勇気、節制、正義などと定義することが可能である。これらの力を、生活を通して上手に引き出してゆくことが大切である。
 
 幸福は、徳という力を身につけて、長い時間をかけて獲得していくことである。徳のある人には、健全な理性が存在する。つまり、そういう人は、欲望よりも常に理性が支配する状況を自分で作れるように生活していける。

 徳を身につけるには時間がかかるが、以下の表のような観点で行動できるかどうかが、徳を積むカギになる。

勇気 お金 節制
超過 向こう見ず 浪費 放埓(ホウラツ)
中庸ココが大事 勇気がある 気前の良さを持つ 節度ある行動
不足 臆病 ケチ 無感覚

 徳は、勇気、お金、節度、正義などに関わっていて、これらの要素について超過や不足の無い適切な度合い(中庸)の行動が求められるとアリストテレスは説いている。ここで言う「中庸」は、真ん中や普通という意味ではない。自分の力で、積極的に理性で判断する最適な度合いを示す。

 真の「中庸」は難しいが、意識的に行動することで時間をかけて身につけることができるのだ。

~ アリストテレスのいう“友愛”とは何か? ~

 徳を積む生活に欠かせないのが、人と人との関係である。言い換えれば、善は、人間関係の中で実践されるものであり、友人と友愛は、人にとって必要なものであるという。

 アリストテレスは、人の関係を“友愛”と呼び、幸福のために最も大切なものと考えた。
次は、“友愛”について語ろう。

「人柄の良さに基づいた友愛」
「快楽に基づいた友愛」
「有用性に基づいた友愛」 

3種類の友愛があり、どれか一つによって、互いに対して好意を抱き、かつ、互いの善を願い、しかもそうしたことが互いに気付かれていることが、友愛の条件である。いわゆる道徳的な友愛には、人柄の良さに基づいた友愛が大切な軸になるが、他の快楽や有用性に基づく友愛も必要な要素であり、友愛のバランスが大切であるとアリストテレスは述べている。

 最終章では、友愛についてもう少し深掘りし、幸福学的倫理学のまとめとしよう。
(最終章に続く)


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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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