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ITアーキテクトへの道 その1

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ITアーキテクトになるためには、どのような勉強、経験、意識が必要であろうか。
いきなりITアーキテクトを目指すのもひとつの方法であるが、実務での経験が無いと勘が働かない。外科医を例にとって見よう。確かに机上の学習は、必要だ。必要な机上での学習を積んだ上で、様々な実戦経験を積み重ね立派な外科医が誕生する。
さらに、尊敬される外科医は、リーダーとしての考え方も備わっているし同僚や後輩への指導力もあり、改革に対しても積極的だ。

ITアーキテクトになるために必要な条件は、

  • 机上での体系的な理論学習(正しい体系的な方法を学ぶこと)
  • 理論に基づいた実践経験(目的意識を持った実践・改善の経験を積み重ねること)
  • リーダーとしての人格を磨くこと

の3点が重要である。

現状、机上での理論の学習を体系的に実施している企業は、少ない。また、日本の大学でコンピュータサイエンスを教えている学校は、ほとんど無いといえる。
数学や情報理論、制御などの基礎づくりがしっかりとしているのが日本の大学の良い点だが、現場での実戦経験やソフトウェアエンジニアリングを学ぶのは、企業に入ってからである。いわゆる建築で言う一級建築士の勉強をすることなく、OJTという行き当たりばったりのやり方で単なる経験のみを積むことになる。経験を積む場合、理論や目標がないと問題に当たった時に、どこが間違っていたかを知ることができない。
稀に、センスのある人が、その人なりの法則を発見して成功することはあるが、組織的な技術力を高めるには至らない。このやり方は、根本的に見直さなければならない。よほどの問題意識や改革に熱意がある人であっても成長するのは困難だ。

私は、一定の実戦経験を積んだ技術者に、体系的なソフトウェアの方法論を教える必要があると考えている。
私自身は、20年ほど前に英国で体系化されたモデルベース開発のエンジニアリング技術とプロジェクトマネジメント方法論を学ぶ機会があったので、それまでに数年経験したプロジェクトを振り返り、正当なやり方をするためには、どのような工程でどんな成果物を作成すればよいか。また、各工程の目的や様々な分析や設計で必要なテクニックなどをどのように使えばよいかを判断できるようになった。私が、昨年から取り組んでいるインドでのITアーキテクト教育、グローバルPM教育は、私のソフトウェアエンジニアリングを学んだ体験から来ている。
私は、方法論を学んでから再び実践の場で苦労して何をどうすると間違うのか、どの段階で何がポイントかを、判断できるようになった。まさに、方法論のお蔭であるといえる。
再び外科医の話に戻るが、ITアーキテクトと同様に、理論と経験が重要だという点は、一致している。外科医もアーキテクトも結果が全ての評価であることも忘れてはならない。いくら優れた理論があっても結果が、でなければ意味が無い。現実の仕事は、なかなか理論どおりに行かないことは経験すれば分かってくる。どんな仕事でも最善を尽くし、結果を残し、評価し、次に繋げていくのだ。簡単に一流にはなれないと思ったほうが良いし、もしなれるのであれば大した価値は無い。外科医が行う手術もITプロジェクトも結果が全てだという点は共通である。どちらも始めたら逃げられない。

もうひとつ大事な点が残っている。心の問題である。強い改革の心と勇気である。
新たに手術法を開発したとしよう。理論的に正しくても試すのに慎重さと勇気が必要になる。高い志で慎重かつ勇気を持って仕事に取り組むことが、高いレベルを目指す人にとっては、大切である。新たな手術法を生み出すためには、相当な勇気と経験が、必要だろう。
蛇足であるが、私がモデルベース開発の方法論を導入した80年代は、かなり大変だった。少数派として弾圧された時期もあった。私は、正しいと信じていたので問題はなかったが、このままいつ夜明けが来るだろうと思った時期が確かにあった。
今となれば、モデルベース開発は、当たり前になってしまった。いい思い出である。

最後に、ITアーキテクトとして成功するには、良い仲間が必要になる。苦しい時期に応援してくれた人や一緒に苦労した人とは、いまだに親交が続いているし、人生を豊かなものにしてくれる。

同士の皆さん、感謝しています!!!!

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Profileプロフィール

林衛
林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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