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リーダーの本質 ~ブライアン・マーティン 林 衛 コラボレーション・コラム~ 第7回「ゴール設定を避けたがる理由」

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ブライアン・マーティン

ブライアン・マーティン


ブライアン・マーティン
IAS 会長 兼 最高経営責任者

米国の多国籍企業リーバイ・ストラウス社の日本支社長を経て、アジア地域総責任者に。その後ドイツの多国籍企業、トリンプ・インターナショナルの日本支社長。ニュージーランド経営協会会員。
1998年、インターナショナルWho’s Whoのプロフェッショナル部門の名誉メンバーに選出。2001年、21世紀アチーブメント賞受賞。 ニュージーランド・オークランドのマッセイ大学で経営とリーダーシップについての講座も持つ。


ブライアンより一言

前回まで、私はゴールを設定することの重要さについてお話しました。
成功したいなら、もっとよい人生を送りたいなら、さらなる向上を目指すなら、ゴールを決めることは不可欠だとご理解いただけたのではないでしょうか。

それなのに、なぜ多くの人は「ゴール」を設定しようとしないのでしょうか?
もしかしたら、その重要さにまだ気がついていないからかもしれません。「流れにまかせていれば、そのうちなんとかなるさ」という家庭環境で育ち、自分の望みは何かを考えたり話したりする機会がないまま来てしまったら、それもしかたがないでしょう。
もしあなたがそのケースに該当するなら、一つ質問です。「現在のご自分の状態が、達成しうるベストだと思いますか?」
あなたはもっとよくなれるはずですよ。

ゴールを設定するのをためらうもう一つの理由は「恐怖」です。
私たちは他の人からの批判に敏感です。あなたも子どものころ、親御さんから「無理だからやめなさい」といわれてがっかりしたことがありませんか。それでもトライして失敗すれば「ほーら、いった通りだ」と言われます。私たちの心の中には、親の批判を恐れる小さな子どもが住んでいるのです。
批判の怖さを克服するには、自分で自分のゴールを決めることです。あなたがゴールにたどり着くために助力を必要とする人以外には、ゴールを決めたことを知らせる必要はありません。

きっと皆さんが何より恐れているのは「失敗したら笑いものになるのではないのか」ということですね。この恐怖こそ、たくさんの人を凍りつかせ、実際の行動から遠ざけて来ました。
しかし、失敗せずに成功することなどできません。私はよくセミナーの時に、トーマス・エジソンが電球を発明するまでに1万回試行錯誤をくりかえした話をします。
発明家として名を成したエジソンが、あるジャーナリストに「電球を発明するまで1万回も失敗したそうですね」と聞かれて、次のように答えました。
「とんでもない、一度も失敗はしなかったよ。電球を作れない方法を1万通り確認はしたけどね」

「失敗をしなければ、何事も成しえない」
私が子供たちに教え、人生の指針としている言葉です。

林衛よりコメント

日本の場合は、ブライアンの言っているのとはちょっと文化的な背景が異なるかもしれません。ゴールを設定して公表したり、確信を持ってゴールを設定することを避ける最大の理由は「守れなかったらどうしよう」という恐れにあります。
ゴールを設定するということは、守る責任が生じるということです。組織の中では、目標を設定したその人の責任になります。その責任を問われたくない。だからゴールを明確にせず、あいまいにしておきたいのですね。われわれには、目標をあいまいにして責任を回避する、という独特の文化があります。

そのため、ゴールを設定するなら、確実に実現できるところにしておきたいという心理が、どうしても働きがちです。
しかし、最初から絶対達成できない目標を設定するのもよくありませんが、プロジェクトに「絶対達成できる」目標を立てるのはおかしいのです。達成にリスクや困難さを伴わないのはプロジェクトではありませんから。そのバランスが非常に重要です。

また、以前コメントしたように、ゴールを設定するだけでは不十分で、「達成への道筋」も同時に見えて、その道筋に「これならできる」と確信を持てていないと実現には至りません。それがなかなか見出せないというのがゴール設定をためらうもうひとつの理由になっています。

余談ですが、ゴルフに「オネスト」という遊びがあります。プレイの前に自分のスコアを設定し、それよりよい結果ではマイナス点。最も自分の設定に近く、しかも設定スコアを超えないスコアを出した人が勝ちです。要するに、自分の実力よりちょっと上回るところに目標を設定するのがコツなのです。
多くの人は、とても超えられないであろう無謀なゴール設定をします。マイナス点はつきませんが勝てません。そしてわずかな人が、自分に厳しいのか簡単すぎるスコアの見積もりをし、設定スコアを超えて非難されます。
ゴール設定と似ていると思いませんか?

プロジェクト活動は、定量的な目標を共有し、ゴールしたときに目標をどれくらい達成したか、どこが足りず、どこで上回ったかの反省に使います。しかし、プロジェクトの局面においてさえ、伝統的な組織にいる管理者には「目標をあいまいにしておきたい」という力が働きます。それが非常によくない結果をもたらしています。
ゴールを設定し、達成度を反省し、それを次のプロジェクトに生かそうという考え方ができる人は日本においては非常に少ない。それは伝統的に日本の文化が「減点主義」で来たからでしょう。農耕文化においてはみんなの協調が大事でした。誰かの手柄もみんなでやったことにする。それは決して悪いことではないのですが、少なくともプロジェクトにおいては、目立って周りから突出するのを恐れ、横並び、あいまいをよしとする文化はマイナスに働くことを意識する必要があるでしょう。

その状況を打破するには「勇気」がいります。しかし、残念ながら勇気を持ってゴール設定ができるようにするトレーニング方法はあまりないのです。個人の資質と意識にかかっています。無謀はいけませんが、失敗を必要以上に恐れることはありません。エジソンのように「失敗したってそこから得るものがある」くらいの気持ちを持って、「あいまい」に逃げようとする心とのバランスをとることが大切です。

第8回につづく

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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