今回は「人間を考える」(松下幸之助著)に焦点を当てる。
松下幸之助と言えば、偉大な経営者で、日本の成長期を牽引した人であり、数多くの書籍が店頭に並んでいることは、誰でも周知であるが、哲学についても20年以上に渡り研究を重ねた後に「人間を考える」というタイトルで哲学書を残している。人間の本質を追求して「新しい人間観」に到達し、それに基づき、どのような考え方で人として歩むべきかの道を説いている。
「新しい人間観」の出発点は、宇宙の理解をした上で、宇宙と人間の関係を明らかにし、さらには地球という有限の星の中で人間を万物のリーダーとして位置づけを行い、人間の天命とそれを生かす道を説明している。宇宙の原理原則に地球も従う宿命を負っている。そのような世界観(ここでは宇宙を含む世界観だと理解すべき)に基づき、人間の使命を明らかにしている。私は、これが哲学の一つの大切な入口だということを偉人が考えたのだと思うと感動を覚える。
松下幸之助が「調和と繁栄によって平和と幸福を」という考えを伝えるために自ら設立した研究所が、PHP(Peace and Happiness through Proseperity)である。また人間の共同生活の意味は何か、人間はどのような考えで行動することで世の中が発展するのかについて考察を進めている。そのような背景から到達した「真の人間道」というものがあるはずだと説いている。
正しく人間観を得られた後は、どのような考え方で人の道を進む(つまり人間道に沿った行動を行ってゆく)のか、共同生活を通じてどのように人間道を進んでゆけば良いのか、世界にいろいろある宗教との関係はどのように考えれば良いのか。「容認」の必要性(人間同士、天地自然の一切を受け入れること)、いかに処遇(あるがままに容認したものを正しく処置すること)するか、全てを共々に生かしていくことこそが人間道であるとしている。
私は、「人間を考える」を読み進むに従って人類が今後、永続的に発展するための哲学、法則、原理原則を松下幸之助が見出したと確信している。現代社会が遭遇している環境問題、社会問題、ガバナンスなどの、今まさに我々が直面している課題を当の昔に先取りしているのが、松下幸之助の「人間を考える」である。
私は、この「人間を考える」を通して学んだことを、私なりに解釈し、次回以降のブログで解説してゆきたい。まずは、「人間観から人間道」へ至る入口の宇宙について、次号
で語ることにする。