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平鍋 健児さん(3) 永和システムマネジメント 取締役

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平鍋健児さん平鍋 健児さん
永和システムマネジメント 取締役
1989年東京大学工学部卒業後、3次元CAD、リアルタイムシステム、UMLエディタJUDE(現 astah* ) などの開発を経て、現在、株式会社永和システムマネジメントでコンサルタントとしてオブジェクト指向、アジャイル開発を研究・実践。マインドマップとUMLの融合エディタ、JUDE(ジュード 現 astah* )を開発。オブジェクト倶楽部を主宰。
XPに関するメーリングリストXP-jpを運営。酒と映画と福井を愛する。
翻訳書に「アジャイル プロジェクトマネジメント」(日経BP社)「リーンソフトウエア開発」(日経BP社)「XPエクスストリーム・プログラミング 導入編」(ピアソン・エデュケーション)、「マルチパラダイムデザイン」(ピアソン・エデュケーション)などがある。
参考URL: オブジェクト倶楽部  JUDE(現 astah* )

ネットコミュニティ「オブジェクト倶楽部」の誕生

能登原
現在平鍋さんがWeb上で主宰されている
「オブジェクト倶楽部」(http://www.objectclub.jp/)にいたる流れというのは、どういったものだったんですか。

平鍋健児さん

平鍋
経緯を言いますと、永和システムに入社した時、僕は他にもいろいろなフリーのソフトを書いていて、発表の場が欲しかったんです。ですから、会社に了解を得てWebページを作ったんですよ。自分でサイトを作り、それに「オブジェクト倶楽部」という名前をつけて、そこでXP(エクストリーム・プログラミング)の紹介などをしていたんです。それは会社の業務としてではなく、僕が勝手に始めたサイトだったのだけど、「まあ、いいだろう」と、なんとなく認めてもらっていた感じでした。

能登原
理解してくれていたわけですね。

平鍋
はい。そのうち東京に支社を作ることになりました。福井から東京に進出するからには、会社のブランディングをやらなければいけないだろう。それなら、このサイトをブランディングのツールにしてしまおう、と考えた。そういう流れとタイミングだったんです。

能登原
なるほど。そこからは会社の仕事になったというわけですね。

平鍋
はい。ですからオブジェクト倶楽部はけっこう長いんですよ。97年くらいからやっています。でも実際に広報を含めて社外のメンバーを入れて、本格的なブランディングを始めたのは、2001年か2002年ですね。

能登原
それを認めた御社の社長さんも立派ですよね。オブジェクト指向で有名な会社でも、こういうサイトはなかなか持っていないですよ。平鍋さんがそこで展開する方法論の話などは、短期的な視野では、すぐに仕事に結びつくわけではないでしょう。

他のオブジェクト指向の会社のサイトは、やはり「ビジネスのためにはこういう方法論があります」という広告形式なんですけど、オブジェクト倶楽部はそれとはちょっと違って、コミュニティを形成していますね。

平鍋
そうですね。でも、僕が最初に人前に出たのは、2002年にオージス総研さんのObjectDay(オブジェクトデイ)に呼んでもらったのが最初なんです。かねてから尊敬している方たちと交流ができて、どきどきしながら人前で話した記憶があります。僕はその頃から対外的な活動を始めたんです。

能登原
平鍋さんにとっても、ひとつのよいきっかけだったのですね。

平鍋
そうですね。その後まもなくオージスさんのObjectDayがなくなって、オブジェクトの言葉で語れる人が集まれる場がないと寂しいですよね。だからそれをオブジェクト倶楽部でやろうと思ったんです。ですから、オブジェクト倶楽部の対外的な活動は2002年に始まったことになりますね。

能登原
サイトを拝見し、今回もお話を聞いていて思うんですが、平鍋さんはコミュニティ作りが非常に上手いですね。

平鍋
ありがとうございます。ちょっと話が飛びますが、父もコミュニティ作りが好きだったんです。酒を楽しむサークル「好酒連」とか、絵手紙のサークルなどを主宰していました。「絵手紙苦楽部」といいまして、苦楽を共にするという意味で普通の倶楽部ではなくて「苦楽部」なんですよ(笑)。そういうコミュニティを地元でたくさん作っていたんです。

実は、僕は今年の5月に父を亡くしているんですが、父が亡くなったあとに、父が作ったいろいろなコミュニティがみな父を偲ぶ会をしてくれました。それを見て、僕も父のコミュニティ好きの血を引くところがあるのかもしれないなと感じましたね。

能登原
なるほど、それはあるかもしれませんね。企業が運営しているコミュニティというと割と決められた枠の中でやっている感じのところが多い。でも平鍋さんの場合は、自然発生的というか、どこまでがビジネスでどこからがビジネスでないのか、その境界が曖昧なところで、上手にコミュニティを仕切っていると感心します。

平鍋
僕は今好きなことを仕事としてやっていますから、ビジネスかビジネスじゃないかといった区別はしません。もちろん、企業人として相応の年齢を重ねれば、利益を出すということは常に考えなければいけない。ですが、僕自身が正しいと思わないことはやらないんです。正しいと思うことをやりたい。

能登原
平鍋さんがオブジェクト倶楽部などを使って積極的に情報発信をしている背景には、「これはいいことだから、これをやろう!」とみんなに伝えたいという欲求があるんですね。また、情報発信をすることによって、平鍋さんの得るものも非常に大きいと思います。

平鍋
ええ。発信するということは、自分で体系化するということですから。いろいろな人の話を聞いてまとめて話すので勉強になります。

それに、たとえば自分の大学の後輩が「この業界に入りたいんです」と言ってきた場合、「いい業界だ」と自信を持って勧められる状況ではあまりないですよね。情報を発信していくことも含めて、それを何とかしたいと強く思っています。

能登原
それは業界的に大きな悩みです。

出張XP講座&ワークショップの実施

平鍋
コミュニティということで言えば、オブジェクト倶楽部では2003年に「日本全国XPセミナー」、通称XPアンギャ(行脚)というのをやっているんです。これはとても面白かったです。(http://www.objectclub.jp/event/angya/index_html

平鍋健児さん

能登原
アンギャ(行脚)というからには、全国各地を回られるんですか?

平鍋
ええ、地方のホスト企業に呼びかけて、会場のセッティングと飲み会のセッティングだけやって下さいと頼んだんです。それに対応してくれた札幌、仙台、浜松、京都、福岡、福井全国6ヶ所を何ヶ月かかけて回り、最後に東京で開催しました。そこではXPの紹介と簡単なワークショップを実施しました。

XP開発のワークショップでは、ガーデニングを題材にしてみんなで庭園を作っていくということをゲームのような形でやってもらいました。これは、ただのゲームではなく、その中でXP開発の要素を肌で感じてもらうことが目的なんです。

各地のセミナーのリポートには写真もアップしてありますのでご覧ください。

能登原
参加者の皆さんも楽しそうですね。プログラマーなら一度はXPにはまりますし、やはりみんなXPが好きなんですよ。

平鍋
XPが好きな人がいてくれて、こうやって集まってくれるのは嬉しいです。

能登原
ワークショップでは、いわゆる開発の課題がガーデニングなんですか?

平鍋
ええ。開催地によって若干バリエーションをつけてはいますけれども。
例えば、ある庭園の写真を10枚くらい持って行きます。そして参加者には開発チーム役と顧客役に分かれてもらうんです。持って行った庭園の写真は顧客役にしか見せない。それを顧客役は仕様として開発チーム側に伝えます。「私はこういうお庭が欲しいんですが」と。
開発チームは、顧客役の要望を繰り返し聞いて、そのストーリーをタスクに落としこみ、見積もりする。そして写真に近い庭園を作り上げるわけです。

能登原
仕様をきちんと見える形の演習にしているというのは、面白いですね。

平鍋
このゲームを行うことで気づいて欲しいのは、顧客の要望は、果たして仕様書だけ、文字だけで伝わるものですか?ということなんです。顧客役にリリースしてみたら、「ここにこんなものはいりません」と言われ、急遽手直しが必要になったり。一部に凝りすぎて、全体が出来上がらないうちに時間が来てしまったり。

能登原
なるほど。それは本当にXPを肌で感じられますね。

平鍋
顧客へのインタビューを繰り返して、見積りを途中で何回かやります。実際にかかった費用計算をきちんとやって、その見積りがちゃんと合っているかも検証します。もちろん、参加者で飲みに行っていろいろ話をしたり、とても楽しいイベントでした。
XPアンギャはもう終了してしまったんですが、うちの社長がよく許してくれた、と感謝しています。

能登原
御社の社長さんも勿論そうですが、会場と飲み会のセッティングという条件だけで各地域を回る平鍋さんも、地域でイベントを支えてくださったホスト企業もすばらしいですね。

平鍋
やはりXPのメーリングリストをやっているんで、それを通じた人間関係がありますから。僕は、やはりこういうお付き合いができるのが嬉しいんですよ。

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能登原 伸二
■株式会社アイ・ティ・イノベーション 取締役 兼 専務執行役員 ■株式会社ジャパンエナジーの情報システム部門において、長年、情報システムの企画、開発、運用までの幅広い業務に携わり、ITによる業務改革、収益向上を支援してきた。また、その実務を経験する中で、システム開発における開発方法面の必要性を認識し、C/S向け開発方法論の制定、導入を推進。常に顧客と共に考え、行動し、成果を上げることをモットーとしている。

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